マッシュアップもIoTへ――「下手な芸人より面白い」「狂気を感じる」「絶句した」な12作品が集まった #MA11 決勝戦まとめ:MAは開発者のM-1になったのか(1/3 ページ)
全国の開発者が、自らの技術力と、世の中に公開されているさまざまなAPI、ハードウエア、センサーなどを「マッシュアップ」して、新たな作品を作り出すコンテスト「Mashup Awards」(MA)が今年も開催。同コンテストの最優秀作を決定する最終プレゼンテーション「ファイナルステージ」と、各賞の発表が、11月18日に東京の渋谷ヒカリエで行われた。
2006年にスタートした「Mashup Awards」も、回を重ねて今回で11回目。ビジネスモデルやスケーラビリティは二の次に、「アイデア」「完成度」「デザイン」の3点におけるインパクトを競うコンテストの基本姿勢は今回も継承されている一方、今回は特に、何らかのセンサーやハードウエアを取り入れたものが、ファイナルステージ進出作品に数多く見受けられたのが印象深かった。
「Mashup Awards 11」には、2015年8月20日から10月19日までの作品応募期間中に、合計431作品の応募が寄せられたという。ファイナルステージでは、ここまでの審査を勝ち抜いた12作品(部門賞受賞作を含む)によるプレゼンテーションが行われ、最優秀賞、優秀賞が決定された。
ファイナルステージの審査員は、次の7人である。
- 松山太河氏(East Ventures パートナー)
- 藤川真一(えふしん)氏(BASE 取締役 CTO)
- 砂金信一郎氏(日本マイクロソフト オーディエンステクニカルエバンジェリズム部 部長 エバンジェリスト)
- 久下玄氏(Coiney プロダクトストラテジスト)
- 山本大策氏(レレレ 代表取締役)
- 栗栖義臣氏(はてな 代表取締役 社長)
- 麻生要一氏(Mashup Awards 運営委員長)
では、ファイナルステージに進出した12作品の概要と、審査結果を紹介しよう。
「感動」から「絶句」までバラエティに富んだ12のファイナルステージ進出作
ビビビコントローラー
某大御所女性歌手が初対面の異性と出会った瞬間恋に落ち、結婚に至ったときの会見を受けて「ビビビ婚」という言葉が流行したのは、もう15年以上昔のこと。この「ビビビコントローラー」(略して「ビビビコン」)は、この「ビビビ」を文字通り電気的に発生させて「運命の出会いを恣意的に創り出す」ことを目指したデバイスである。
運命の出会いを求めるならば、まずこの「ビビビコン」を手にして街に出よう。街中で、偶然にも好みのタイプの異性を発見したあなた。「もしや、これは運命の出会いでは……?」そう直感したあなたの心拍数は急上昇するはずだ。手にしたビビビコンには、心拍センサーが内蔵されており、あなたの身体に起こっている変化を察知して、強力な電気刺激を「ビビビ」と発生。持っている人に強制的に声を上げさせる。「あ゛あ゛っっ!!」……「どうしたんですか? 大丈夫ですか?」……ビビビコンがなければ、ただすれ違うだけだったはずの2人。あなたの声に気付いて、あの人が振り向いた瞬間から、2人の関係は新たな世界線へと移行する……。
――どこから突っ込むべきかというか、もはや突っ込む気力さえも失わせる強烈なファンタジー満載のプレゼンビデオが流れると、会場は爆笑の渦に包まれた。ちなみに、審査員からの「開発で一番苦労した点は?」との質問には、「デバッグです」と即答。さもありなん。
PoiPet
大量生産、大量消費社会における「ゴミのポイ捨て、分別」問題に対し、「ゴミ箱をインタラクティブにする」というアプローチで解決を図った作品が「PoiPet」だ。「学生部門賞」を受賞している。
PoiPetにおいて、中心的なユーザーインターフェースとなるのは、人感センサーやタッチディスプレーが取り付けられた「ゴミ箱」だ。人がゴミ箱に近づくと、センサーがそれを察知し、ゴミを捨てることや、分別を促すメッセージを出す。今回のデモでは、特に「ペットボトル」にフォーカスした場合のアクションが紹介され、ゴミを捨てた瞬間にゴミ箱表面にゴミをのみ込むアニメーションが表示されたり、ボトルとキャップを分別して捨てた場合に、画面上のキャラクターが喜んだりといった様子が示された。
天気APIや音声合成APIとのマッシュアップによって、キャラクターが「世間話」をしてくるところもポイントだ。キャラクターによるリアクションがあることで、「ゴミ箱にゴミを捨てる」「分別して捨てる」といった行動への動機付けが強まることを狙っている。
また、PoiPetにはFelica Readerも搭載されてより、スマートフォンとの連携も可能。例えば、捨てたゴミの量を記録として蓄積したり、きちんと分別してゴミを捨てた人に、何らかのポイントを付与したりといったことも可能だという。
千葉市お祭りデータセンター by Code for Chiba
「CIVICTECH部門賞」の受賞作品であり、千葉市の抱える課題をコードで解決していくチーム「Code for Chiba」による作品が「千葉市お祭りデータセンター」である。「外出したら、偶然、近所でお祭りをやっているようなのだけれど、何のお祭りか分からない」「今週末にお祭りに行きたいけれど、いつ、どこでやっているかを知りたい」「行く予定にしているお祭りの内容を事前に知りたい」といったニーズに応えるためのWebデータベースサービスである。
フロントエンドでは、地域別、開催日別にお祭りを検索できる他、カレンダー形式での表示、地図情報への開催場所のプロットなど、さまざまな形式でデータを閲覧できる。同時に開催時の天気予報や、その周辺での別のお祭りの概要なども確認でき、ユーザーがお祭りの現場で撮影した写真も投稿できるようになっている。
千葉市内で開催されるお祭りの情報については、千葉市職員の協力も得て、町内会開催のものまでフォローしているという。また、神社仏閣主催のものについては、実際に現地に足を運んで情報を収集し、データベース化したという。
なりきり2.0
「手を掲げ、念じるだけで光をともす」「遠くから触れることなくものを動かす」「手からビームを出して敵を倒す」――子どものころに男子が夢見た「能力者」としての妄想を、ウェアラブルセンサーとモーション認識技術、さらにはAPIとのマッシュアップで現実にしてしまおうというコンセプトが楽しい作品が「なりきり2.0」だ。
会場では、利用例として手首にセンサーを装着し、手の動きでエアコンや照明を操作するといった使い道が紹介された他、ゲームコントローラーの代わりに両手足にセンサーを付けた2名のプレーヤーが、対戦格闘ゲームで戦う様子が実際にデモされた。プレーヤーが必殺技である「波動拳」のポーズを取ると、ゲーム内のキャラクターに必殺技の入力信号が送られ、波動拳を繰り出す。センサーの取得する動きのデータを機械学習で判別し、コントローラーの入力信号として出力しているという。
開発に当たっては、機械学習による動作の判別と、入力が行われるまでの適切なタイミングのバランスをとるのに苦労したという。また、現在はプレーヤーが「画面を見ながら」ゲームを行うが、将来的には軽量なゴーグルデバイスなどを使って、実際に自分が出している必殺技を目で見られるような環境の実現を構想しているそうだ。
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