人間の記憶の仕組みを模したAI-Samuraiが海を渡る:板橋のサムライ、アメリカに行く
脳の記憶の仕組みを応用したAIエンジンを搭載したAI-Samuraiが「SXSW 2016」を皮切りに世界行脚する。
東京・板橋に本社を置くNextremerは、同社が開発するマルチモーダル*対話システム搭載ロボット「AI-Samurai」が経済産業省の「グローバル起業家等育成事業米国派遣プログラム」に採択されたと発表した。2016年3月に米テキサス州で開催されるアートとテクノロジーのイベント「SXSW(サウスバイサウスウェスト) 2016」に参加する(この米国派遣プログラムには、SXSWへの参加の他、サンフランシスコやニューヨークで海外進出に必要な情報収集や商談が行えるコースもある)。
* マルチモーダル 複数のセンサーからの信号をリアルタイムかつ同時に処理して、システムと対話する形式。
もともと、AI-Samuraiは、世界各国で開催されるイベントで来場者に会場案内やゲームナビゲーション、レコメンドなどを行う目的で製作したものだという。2015年10月30日に開催された「第6回対話システムシンポジウム(第75回 人工知能学会 言語・音声理解と対話処理研究会(SIG-SLUD))」のセッションでも披露されている。
AI-Samuraiでは、顔認識にオープンソースの画像認識ライブラリ「OpenCV」、音声認識に「Google ASR」、言語処理に英語テキストの自然言語処理ライブラリ「Stanford CoreNLP」を利用している。会話履歴や取得した画像データも学習に利用することで、話者に適した会話になるように最適化していく仕組みになっているという。
AI-samuraiには、「A.I.Galleria」という複数の人工知能技術から成るエンジンが搭載されいる。A.I.Galleriaは脳の情報伝達の仕組みを応用して、情報を「短期記憶」「長期記憶」に分けて処理することで、「人との対話をより効率的に進める」ことができるという。記憶時間の違いは「記憶時間の違うデータストレージをシステム化」して実現しているという。
こうした実装を持つことで、「理論的に構築されたA.I.ではなく、ロボットが実際の体験から学ぶA.I.を作り上げること」を目指しているという。AI-Samuraiは、SXSW 2016を皮切りに、世界各地を行脚する予定だ。Nextremerでは、今後、インタフェースのオープン化も視野にいれた研究開発・実証実験を進めるとしている。
ちなみに、Nextremerには高知オフィスもある。
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