検索
連載

IoT時代のログ管理は「面倒くさがり屋」が仕切る特集:IoT時代のセキュリティログ活用(4)(2/2 ページ)

セキュリティ企業のゲヒルン 代表取締役 石森大貴氏に、IoT時代の「ログ活用」の姿について聞いた。

Share
Tweet
LINE
Hatena
前のページへ |       

求められる自動化と「エンジニアの新たなスキル」 とは

 IoT時代のログ管理について幾つかの着眼点を示した上で、石森氏はログの「爆発的な増加」について、ある程度の「自動化」を行い、“人間が確認できる量”まで問題を絞った上で抽出されたログを確認することが当たり前になると読む。

 「現在のシステムにおいては、生ログを目で見て異常値を見つける“目grep”ができるようなエンジニアもいますが、星の数ほどに機器が増加したときに、全てのデータを人間が見るのは不可能です。メトリクス情報から注目すべき値をピックアップする部分や、あるしきい値を超えたものをピックアップする部分については、自動化していくことになるでしょう」

 石森氏はこの仕組みを、初期の「迷惑メール対策」に例える。迷惑メール対策においては初め、「POPFile」のようなソフトウェアを使って対処していたことを覚えているエンジニアも多いはずだ(関連記事)。これはベイズ理論を使い、文字の出現頻度から迷惑メールかそうでないかをシステムに「学習」させ、迷惑メールの判別を人の手を借りながら機械的に学習していくツールだった。

 石森氏は、IoT時代の大量のログ判別においても、最初のうちはこのような人手を借りた学習を、各組織などが行う必要があると考えている。そして次のフェーズでは、こうした学習を組織の枠を越えて“世界規模で”行っていき、さらに標準化を進めていくことになるという。これはまさに、迷惑メールが“個別対応”の時代から、やがてGmailのようにクラウド上に蓄えられた知見を利用者全てが共有する時代へとシフトしてきた歴史と同じだ。

 「IoTに限らず、ログ管理の作業は属人化しがちです。どこかで『定義』『ポリシー』『フロー』などの仕様を決める作業を行う必要があります。逆に言うと、それさえ決められれば“自動化”が可能だということです。自動化ができれば、スケーラビリティを確保でき、IoT時代のログ爆発にも対応できるはずです」

IoT時代はもう始まっている――求められる“旗振り役”

 IoT時代はすぐそこに来ている。いや、既に来ているのかもしれない。現に、コマツの「KOMTRAX」というシステムでは、レンタル重機に通信モジュールを着け、燃料の残量やエンジンのパラメータ、GPS情報を収集している。「KOMTRAXの場合は、異常値が発見されたとき、レンタル中の重機の近くにエンジニアを派遣し、壊れる前にメンテナンスを施すことができるようになっています。セキュリティ的なログ管理のイメージというよりは、ビジネスを安定的に回して顧客満足度を高めるためのIoTログ管理といえるかもしれません」。

参考リンク:KOMTRAX(コマツ建機販売)

 こうした戦略的なログ管理を普及させるためには、その“勘所”を、どこかのタイミングで誰かが「標準化」しなくてはならない。IoT黎明期の現在は、エンジニアが自分のセンスに頼ってログを出力し、解析している状況だ。従って、今求められているのは、新時代の旗振り役をするスターエンジニアなのかもしれない。

 これについて石森氏に、「どのような人が旗振り役に向いていると思うか」と尋ねてみたところ、同氏は「働きたくない人、何ごともめんどくさいと思うようなエンジニアこそ向いているかもしれません。エンジニアは自動化が大好きですからね」と笑った。「われこそは」と思うエンジニアは、早速準備に取り掛かってみてはいかがだろうか?

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

前のページへ |       

Security & Trust 記事ランキング

  1. 「Appleの暗号化アルゴリズム」を盗用し、2カ月以上検出されなかったステルス型マルウェアの正体とは
  2. “ゼロトラスト”とトラスト(信頼性)ゼロを分かつものとは――情報セキュリティ啓発アニメ「こうしす!」監督が中小企業目線で語る
  3. 「SMSは認証に使わないで」 米CISA、モバイル通信を保護する8つのベストプラクティスを公開
  4. 終わらせましょう。複雑過ぎるKubernetes/クラウドネイティブが生む心理的安全性の低下を――無料でクラウドセキュリティの勘所が分かる130ページの電子書籍
  5. 2025年、LLMの脆弱性が明確になるなど、セキュリティとクラウドに関する8つの変化
  6. 2025年に押さえるべきセキュリティの重要論点をガートナーが発表 新しいリスク、脅威、環境の変化、法規制などの動きを把握する指標に使える
  7. Google Cloud、2025年のサイバーセキュリティ予測を発表 AIがサイバー攻撃にもたらす影響とは?
  8. 経営層の約7割が「セキュリティ対策は十分」一方で6割以上がインシデントを経験、1位の要因は?
  9. よく聞く「複雑化するサイバー攻撃」は具体的にどう複雑なのか? 一例を医療系企業のランサム事例とともに解説
  10. 増える標的型ランサムウェア被害、現場支援から見えてきた実態と、脆弱性対応が「限界」の理由
ページトップに戻る