不本意な配置もバネにして――営業出身エンジニアが、20代で外資系IT企業のアナリストになれた理由:まだ君は間に合う! 現役エンジニアに聞く、学生のときにやっておくべきこと(9)(2/3 ページ)
現在、アバナードでアナリストとして活躍中の濱口兼行さんは、SNSのようなサービスを作りたいとIT業界に入った。しかし、就職したのは企業向けシステムを開発するSI企業、配属は営業職だった――。
営業職で商品知識を深めてから開発職に
入社後1カ月間の研修では主にコンピュータ概論を学び、具体的なプログラミングについて学ぶチャンスはなかったという。
研修を終え、マイクロソフトのCRM(顧客管理)パッケージソフトウェア「Dynamics CRM」を取り扱う事業部に配属された。
ただし、濱口さんの担当は「営業」だった。
個人向けのサービスではなく企業向けシステム開発メインの会社、希望していた開発職ではなく営業職――就活時に思い描いていたものとはだいぶ異なる社会人生活のスタートだったが、濱口さんは「これもキャリアステップの1つ」と考え、真剣に取り組むことにした。
濱口さんのミッションは、パッケージソフトウェアの新規顧客開拓。
パッケージソフトウェアとは、特定の業務において汎用的に使えるように作られた既製のソフトウェアだ。プログラミングのスキルがなくても、あらかじめ用意されているオプション設定を変更すれば、ある程度のカスタマイズが行えるように設計されている。
濱口さんは、そうした製品の特徴を利用して、顧客ニーズに合わせたカスタマイズを行い「このようなことができるようになる」とデモを見せながら説明し、受注につなげていったのである。
詳しい商品知識が身に付き、顧客提案のコツもつかめてきたころ、濱口さんは開発職へ異動になった。同年12月のことである。
必要なスキルは全て現場で学んだ
念願の開発職だったが、入社後プログラミングを学ぶ機会がなかった濱口さんは、開発スキルを、全て現場で身に付けていったという。
「Excelのマクロや、簡単なバッチコマンドの作成などからスタートし、その後、先輩が開発したカスタマイズ部分のプログラムを手本に、プログラミングを勉強していきました」
Dynamics CRMを本格的にカスタマイズするには、やはりプログラミングが必要で、主にマイクロソフトのプログラミング言語であるC#が使われている。
濱口さんは、先輩たちが作成した既存のプログラムをワンステップずつ実行したり、プログラムの実行を途中で止めたりしながら、どのような処理がなされているのかを学んでいったという。
「その後は自分で設計書を見ながらプログラムを書いたり、先輩エンジニアからレビューを受けたりしながら、プログラミングを学んでいきました」
そうして開発エンジニアとして独り立ちし、2年ほどたったころ、濱口さんは転職を考えるようになっていた。
「もっといろいろなことができるはず」
濱口さんが転職を考えたのは、営業を経験したからこそ見えてきた現実が原因だった。
「Dynamics CRMは、マイクロソフトの製品なので、SharePointなどと組み合わせると、もっと活用の範囲を広げられます。しかし以前の会社では、そのような提案機会があまりありませんでした」
SharePointは、マイクロソフトが提供している文書・情報共有アプリケーションソフトで、複数人のグループで、スケジュールやMicrosoft Office製品群で作成した文書ファイルなどを共有し、共同で編集・管理が行える。Dynamics CRMと組み合わせると、クライアントに対して、いつ、誰が、どのような見積もりや提案書を作成したのかといった関連情報が共有できるようになる。「活用次第で、もっと便利になるのに」という歯がゆい思いが、どんどん募っていった。
いざ転職となると濱口さんに迷いが生まれた。
これまではB2Bのシステムソフトウェアの開発を手掛けてきたので、次は就活時に想像していたIT業界――インターネット上で提供されるSNSや情報検索サービス、地図情報サービスなど、B2Cのサービスの開発を手掛けてみたいと考えていた。
その一方で、これまでに培ってきたDynamics CRMに関するノウハウを生かして、もっといろいろな提案と開発が行える企業で仕事をしたい、という思いもあった。
結果として、濱口さんは後者を選択した。
「既に結婚して家族がいたので、収入を下げたくなかったというのもあります」
経験のないB2Cのサービス開発では、またイチからキャリアを築いていくことになる。もちろん経験の幅は広がるものの、すぐに高収入は望めないだろう。しかし、これまでに築いたキャリアがそのまま生かせる仕事ならば、経験に応じた収入アップも見込めるというわけだ。
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