ヴイエムウェアのガイジン社長が考える、エンジニアが果たすべき「責任」とは:Go AbekawaのGo Global!〜Jon T. Robertson編(1/3 ページ)
カナダ生まれカナダ育ち、金髪碧眼の外資系IT企業社長の社会人生活は「種子島」でスタートした。以来25年、日本のビジネスマンとしてIT業界を疾走してきた「ガイジン」が、日本のエンジニアにしてもらいたいこととは――。
アップルやディズニーなどの外資系企業でマーケティングを担当し、グローバルでのビジネス展開に深い知見を持つ阿部川“Go”久広が、グローバルを股に掛けたキャリアを築いてきたIT業界の先輩にお話を伺うインタビューシリーズ。第11回は「VMware(ヴイエムウェア)」の日本法人代表 Jon T. Robertson氏にご登場いただく。
日本語が堪能で、日本の文化や商習慣にも詳しいロバートソン氏は、なぜ「エンジニアはもっと意見を言うべきだ」と考えるのか――日本の心と欧米のビジネススタイルのハイブリッドな氏のキャリアと考え方は、現在、そして将来、海外で働くエンジニアたちの参考になるだろう。
Jon T. Robertson(ジョン T. ロバートソン) ヴイエムウェア 代表取締役社長
カナダ・モントリオール マギル大学卒業。EMC、SAP、M3iなどの日本法人やASEAN担当を経て、2007年ヴイエムウェア(日本法人)入社。2012年から2年間、VMware ASEAN統括の後、2014年に日本法人に副社長として復帰。2015年より現職。趣味はサーフィンとスノーボード。
従業員が辞めない3つの理由
阿部川“Go”久広(以降、阿部川) Hi Jon, long time no see! Let's get started the interview.
Jon T. Robertson(ジョン T. ロバートソン:以降、ロバートソン氏) 本当に英語でやるの? That's great!
阿部川 本当ですよ。まずは、ヴイエムウェアの事業を簡単にご説明ください。
ロバートソン氏 ヴイエムウェアは約18年前に、デスクトップとx86サーバの仮想化のパイオニアとしてスタートしました。その後、ストレージやネットワーク、クラウド、そしてデータセンターにまで、仮想化を広げました。
さらに、サービスプロバイダーに対する仮想化サービスとして、パブリッククラウドを提供している多くの日本の企業に技術を提供しています。また、デスクトップ、モバイルなどデバイスに特化した仮想化も行っています。全部で約400種類の製品を扱っています。
阿部川 先日の事業戦略説明会の発表によると、ビジネス規模が順調に拡大し、それに伴って社員数が15%も増加したそうですね。しかも離職率が10%以下とのことですが、人材定着の秘訣(ひけつ)はどこにあるのでしょうか?
ロバートソン氏 3つの要素が絡み合った結果だと思います。
1つ目は、「ヴイエムウェアのビジョンに情熱を持って取り組んでくれるか」を採用の基準にしていることです。IT技術やIT業界の革新という壮大な目的を持って入社し、日々の業務でその達成を感じられることが、従業員が会社と共に歩んでくれる理由の1つだと思います。
とはいえ、どんなに高尚な意識を持って業務に取り組んでも、同じ仕事を5年以上続けていれば、マンネリ化は否めないでしょう。そこでわが社は、社内での「ジョブローテーション」を大切にしています。これが2つ目の要素です。
「同一の部署で、2年以上同一の仕事をしている人のうち20%を、毎年必ず異動させる」というルールを決めています。SEだった人はプロフェッショナルサービスの部署へ、営業だった人は経理へ、オペレーション担当は、顧客満足担当へ、などさまざまです。
内部昇格もあります。マネジメントチームの8割は、社内から登用しました。人材開発には、特に力を入れており、従業員が常に新鮮な気持ちで、楽しく仕事に取り組めるように努力しています。
最後は、やはり業績がいいことでしょう。業界に活気はあるし、新しい技術を備えた新製品は登場するし、2〜3年ごとに新しい業務やチャレンジが待っていて新たな自分の可能性を発掘できる――そうなれば、従業員は自然に「ここで仕事をし続けたい」と思ってくれるのではないでしょうか。
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