ヴイエムウェアのガイジン社長が考える、エンジニアが果たすべき「責任」とは:Go AbekawaのGo Global!〜Jon T. Robertson編(2/3 ページ)
カナダ生まれカナダ育ち、金髪碧眼の外資系IT企業社長の社会人生活は「種子島」でスタートした。以来25年、日本のビジネスマンとしてIT業界を疾走してきた「ガイジン」が、日本のエンジニアにしてもらいたいこととは――。
ジョブローテーションで初めて日本国“外”に赴任する
阿部川 ジョブローテーションは、ロバートソンさんも経験したのですか?
ロバートソン氏 もちろんです。私は営業部長として2007年に入社し、2012年ごろ営業本部長に昇進しました。仕事は順調でしたが、少し退屈にもなっていました。
そんなとき「シンガポールオフィスに責任者として行ってみないか」という話があり、それに乗ったのです。シンガポールでは、営業、経理、マーケティング、総務など、全ての業務の統括と、社長としての業務を経験できました。
私が10年以上この会社にいる理由の1つは、このようなジョブローテーションの機会が頻繁にあることだと思います。
私は、会社が私にしてくれたことを、従業員にもしてあげたいと思っています。ですから、日本の従業員をパロアルトの米国本社やシンガポールに派遣して、2〜3年働いてもらうこともあります。それは人材教育という観点で非常にポジティブに作用します。
彼らは、多くの人的ネットワークを作り、仕事の内容も質も高め、英語も格段にうまくなって日本に帰ってきます。私はできるだけ多くの従業員が海外で働くチャンスを作ってあげたいのです。
ラッキーやハッピーの多くは「バー」で築いた
阿部川 ロバートソンさんは、生まれも育ちもカナダのカナダ人ですよね。どのようなきっかけで、日本にいらっしゃったのですか?
ロバートソン氏 それほどドラマチックな話ではありませんよ(笑)。
私はカナダのマギル大学で政治学と経済学を専攻しました。大学を卒業するころ、日本に行けるプログラムがあると聞き、大学に鹿児島出身の友人がいたので「よし、日本に行こう」と決めました。
JET(※)に応募して、面接で「鹿児島に行きたい!」と話したら、「種子島はどうですか」と(笑)。ですから私が日本で最初に住んだのは種子島でした。
それから日本がとても好きになり、言葉も勉強し、友達も増え……。2年ほど種子島に住んでから鹿児島に引越し、東京に来たのは1994年でした。
東京では最初に「M3i」というカナダのIT企業に就職し、警視庁とのプロジェクトを行う部署に配属されました。しかし2年後、カナダ大手のエレクトロニクス企業がM3iを買収したためプロジェクトチームが解散し、私も御役御免になってしまいました。
高田馬場のバーで「これからどうしようか」とカナダビールを飲んでいたときのことです。非常に体格のいいドイツ人が私の隣に座りました。
私が日本語でバーテンダーと話しているのを聞いて、彼の方から私に話しかけてきました。「おー、日本語うまいじゃないか。仕事は何をやっているんだ?」と。「カナダのソフト会社に勤めていたけれど、会社が買収されて失業中さ」と答えたら、「じゃあ、うちの会社で働いてみないか」と言うので「あんた、誰?」と聞いたら、「SAPという会社で、CFO(最高財務責任者)をやってる」って(!)。
1週間後に営業部長との面接がセットされて、SAPに入社しました。
阿部川 バーは大切ですね(笑)。
ロバートソン氏 人とのネットワークやラッキーなことの多くは、バーで築きました(笑)。たくさんの人に出会えたり、興味深い話を聞けたりするのは、バーの利点ですね。
僕は「飲みニケーション」も好きですよ。
日本人、特に若手は、思っていることをなかなか外に出さないんです。でも飲み会だったら、会社で普段会わない人たちと会ったり、その人たちが話しかけてくれたり、いろいろな意見を聞けたりします。
昨日も、社内のあるチームと飲みに行ったら、それまで会ったことのないエンジニアが僕のところにきて、「ジョンさん、僕はこう思います!」と意見を言ってくれたんです。飲み会って日本の特別な文化ですけれど、僕は好きですよ、本当に。楽しいですよね。
仕事に必要なことは全て現場で学んだ
阿部川 IT業界の第一線で20年間活躍されていますが、技術やエンジニアリングを学ぶために、どのような勉強をされてきましたか?
ロバートソン氏 私は「OJT」(※)が1番の勉強法だと思います。自分も全て仕事しながら学びました。もう20年以上前から、なるべく現場に行って、作業も手伝ってみるようにしています。
今でも2週間に1度ぐらい、社内のエンジニアのところに行って、「最近どんなことがエンジニアの中で話題になっているのか」「何か新しくて面白い技術はないか」など、気軽に聞くようにしています。そう聞くと、エンジニアたちは喜んで私に教育を施してくれます。
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