ヴイエムウェアのガイジン社長が考える、エンジニアが果たすべき「責任」とは:Go AbekawaのGo Global!〜Jon T. Robertson編(3/3 ページ)
カナダ生まれカナダ育ち、金髪碧眼の外資系IT企業社長の社会人生活は「種子島」でスタートした。以来25年、日本のビジネスマンとしてIT業界を疾走してきた「ガイジン」が、日本のエンジニアにしてもらいたいこととは――。
エンジニアはもっと「責任」を果たすべきだ
阿部川 日本のエンジニアにアドバイスをお願いします。
ロバートソン氏 良いキャリアを築くためのポイントは3つあります。どれもとてもシンプルです。
第1は、尊敬できる上司と一緒に仕事をすることです。
会社の知名度ではなく、マネジャーがどのような人かで会社を選ぶべきです。優れた情報や知識を持ち、尊敬できる人は、あなたが学習し、成長していく手助けをしてくれます。
第2は、英語か中国語、それらでなくとも何らかの第二外国語を習得することです。
テクノロジーによって世界はどんどん小さくなりました。日本の企業が成功するには、国内市場だけではなく、グローバルな市場を相手にすることが必須です。
また、インドやオーストラリア、米国の同僚たちとより多くのコミュニケーションをとれるようになれば、より多くのチャンスが訪れるし、学べる情報やトレンドも膨大になります。
第3は、「当社はここを変えなければいけない」とか「この技術は素晴らしいから採用した方がいい」などの意見を上司やマネジメント層にアピールすることです。
わが社では優秀なエンジニアは、直接私に話してくれます。頭が良くて、能力があって、バイリンガルなエンジニアなら、さまざまなアイデアを持っているでしょう。ですから、会社のビジネスや経営全体に対してアドバイスすることは、あなたたちエンジニアの「責任」でもあります。
多くのエンジニアはそうではないかも知れません。私の仕事はこの領域だから、この中のことをやると。しかしそれではいけないと思います。「ボス、私にはこんなアイデアがあるのです」と話すべきだと思います。
エンジニアこそ、企業組織の頭脳として社内外で積極的に発言し、他国にいる同僚と大いにコミュケーションとる、そういったことが必要です。
@IT編集部 若手社員が今やるべきこと、どう仕事に取り組めばいいのか、アドバイスいただけますか?
ロバートソン氏 上のことはあまり気にしないで、ストレートに意見を言うといいと思います。若い人は新しい目でいろいろ見ていますから、私たちが慣れてしまっていることに対して「何で、これはこうやっているのですか?」「これをやればいいんじゃないですか?」と言っていいと思います。
そして、尊敬できる先輩と付き合った方がいい。自分の部署だけではなくて、隣の部署でも、普段そんなに付き合わない人でも、会社の全体的な勉強するためにはいろいろな人と付き合った方がいい。1時間くらい時間を作ってもらって、どういう仕事をやっているのか説明してもらうとか、そういう勉強がいいと思います。
言われていることをやるだけではなく、自分の勉強をいろいろやるといいと思います。
Go's think aloud〜インタビューを終えて
純正カナダ人のロバートソンさんは、「英語でインタビューを受けるのは、社長になってから初めてですよ」と英語で話しだした。23歳で種子島に来てから25年、その日本語能力は、お世辞抜きで日本語ネイティブをも超えるため、普段はほぼ日本語で取材を受けるそうだ。
さらにスゴいのは、長期的な信頼関係の構築や、他者への配慮や謙遜、折り目正しい礼節や尊厳、約束の重さなど、日本文化、なかんずく日本のビジネス文化が世界に誇る要素を、しっかり身に付けてきたことだ。
日本的なビジネスのノウハウを実践し、グローバルな表現と文脈でコミュニケーションし、米国本社との交渉ではケンカもいとわない。そのタフさと日本への愛が、今のヴィエムウェアの成功を導いたといっても、決して褒めすぎではないだろう。
こんな外人社長、ちょっといないよね。
阿部川久広(Hisahiro Go Abekawa)
アイティメディア グローバルビジネス担当シニアヴァイスプレジデント兼エグゼクティブプロデューサー、キャスター・リポーター
コンサルタントを経て、アップル、ディズニーなどでマーケティングの要職を歴任。大学在学時より通訳、翻訳なども行い、CNNニュースキャスターを2年間務めた。現在は英語トレーナー、コミュニケーションに関する執筆、講座、講演も行っている。
編集部より
「Go Global!」では、インタビューを受けてくださる方を募集しています。海外に本社を持つ法人のCEOやCTOなどマネジメントの方が来日される際は、ぜひご一報ください。取材の確約はいたしかねますが、インタビュー候補として検討させていただきます。
ご連絡はこちらまで
@IT自分戦略研究所 Facebook/@IT自分戦略研究所 Twitter/電子メール
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 「日本企業の世界的な成功が、ハイブリッドの価値」
ヴイエムウェアの日本法人は2015年3月3日、三木泰雄氏に代わって、副社長だったジョン・ロバートソン氏が代表取締役社長に就任したと発表した。ロバートソン氏は同氏の考えるハイブリッドクラウドの価値について語った - ヴイエムウェアネットワークのトップに独占インタビュー:「私が朝起きる理由は、ネットワークの世界を変えること」
ヴイエムウェアは、同社のネットワーク仮想化製品「VMware NSX」で、狭義のSDNを超える世界を目指している。マーティン・カサド氏を含む同社のネットワーク事業のキーマンへのインタビュー内容の一部をお届けする - ヴイエムウェアは、ハイパーコンバージドインフラで失敗しているのか
米ヴイエムウェアは2014年以降、ハイパーコンバージドインフラへの取り組みを強化してきた。だが、「EVO:RAIL」プログラムは、事実上終了している。今後はどうなっていくのだろうか - VMware NSXのカサド氏が、ネットワーク仮想化について「間違えていた」2つのこと
ヴイエムウェアのネットワーク仮想化製品であるVMware NSXの導入は広がっているというが、どういう用途で使われているのだろうか。新機能は、用途を今後どのように広げていくのか。米ヴイエムウェア ネットワーキング&セキュリティ事業部門(NSBU) ゼネラルマネジャー、マーティン・カサド氏に聞いた - カサドさん、ヴイエムウェアは現在議論されているSDNをどう超えていきますか?
ヴイエムウェアは、現在のSDNを超える世界を目指している。この新しい世界では、何ができるようになるのか。8月最終週に行った、米ヴイエムウェア ネットワークCTO、マーティン・カサド氏へのインタビューの前編をお届けする