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仕事より大事なものがあるの?――忘れられない上司の言葉田中淳子の“言葉のチカラ”(36)(2/2 ページ)

PCを操作しながら目も合わせずに、休日出勤を命じた上司の言葉に、部下たちはどう反応したのか――?

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忘れられない上司の言葉パート2

 私事だが、昨年親の介護問題に直面し、しばらく大変な状態だった。ちょうど仕事が忙しいシーズンに突入する時期でもあり、私は軽くパニックに陥った。

 今思えば、軽く「介護うつ状態」だったのだろう。ある日、上司とのミーティングで何を言われているのか理解できない状態になってしまった。黙っていても問題は解決しないと思い、正直に状況を伝えた。

 「今指示されている仕事の内容が頭に入ってきません。自分で取り組めるという自信も持てません。自分が少しおかしいと思うのですが、とにかく、できる気がしないのです」と。

 すると、介護の件を知っていた上司はこう言ってくれたのだ。

淳子さんの親御さんの問題は、ボクたちは何もしてあげることができません。でも、仕事なんて何とでもなります。

いざというときは誰かが替わるなり、仕事自体を見直すなり、何とでも手が打てます。まずはご家族のことをきちんとして、それから仕事についてできる範囲でやってください。それでだめそうなときは、早めに言ってくれれば私たち皆で何とかします。

安心してください。

 その言葉を聞いて、「どうしよう? どうしよう?」とぐるぐる思い悩み、力んでこわばっていた身体から力が抜けた。とてもありがたかった。

 「仕事なんて何とでもなる」と言ってくれた上司の言葉に救われた。

 その後、介護問題はいろいろなサポートを得て何とかなり、私の精神状態も復調し、仕事ができる状態になった。

 若いエンジニアの中には、子育て中の人がたくさんいるだろう。介護と子育てのダブルケアや、自身の体調不良に悩まされている人もいるだろう。仕事に集中したくてもできない状況に置かれることは、誰にでも起こり得る。こんなとき、上司がどう声を掛けるかはとても大切だ。

 「仕事より大事なものがあるの?」と詰め寄る上司、「仕事なんて何とでもなる」と言ってくれる上司、あなたはどちらの上司の下で働きたいだろうか。

筆者プロフィール 田中淳子

 田中淳子

グローバルナレッジネットワーク株式会社 人材教育コンサルタント/産業カウンセラー

1986年 上智大学文学部教育学科卒。日本ディジタル イクイップメントを経て、96年より現職。IT業界をはじめさまざまな業界の新入社員から管理職層まで、延べ3万人以上の人材育成に携わり28年。2003年からは特に企業のOJT制度支援に注力している。

日経BP社「日経ITプロフェッショナル」「日経SYSTEMS」「日経コンピュータ」「ITpro」などで、若手育成やコミュニケーションに関するコラムを約10年間連載。

著書:「ITエンジニアとして生き残るための「対人力」の高め方」(日経BP社)「ITマネジャーのための現場で実践! 若手を育てる47のテクニック」(日経BP社)「速効!SEのためのコミュニケーション実践塾」(日経BP社)など多数。

電子書籍「『「上司はツラいよ』なんて言わせない」(ITmediaのebook)、「田中淳子の人間関係に効く“サプリ”――職場で役立つ30のコミュニケーション術」(ITmediaのebook)

ブログ:田中淳子の“大人の学び”支援隊!


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