もしも、上司が会議で「いいね!」と言い続けたら:田中淳子の“言葉のチカラ”(34)(1/2 ページ)
会議で部下の発言に全て「いいね!」と言う上司。その結果、会議はどうなった?
人材育成歴30年の田中淳子さんが、人生の先輩たちから頂いた言葉の数々。時に励まし、時に慰め、時に彼女を勇気付けてきた言葉をエンジニアの皆さんにもお裾分けする本連載。
前回は、若手エンジニアが新人のころ先輩や上司にしてもらってうれしかったことを紹介した。今回は、会議で出席者の意見を引き出す話法を伝授する。
無気力の理由
主に顧客システムの開発から運用までを担当しているITエンジニアAさんの話を紹介しよう。
ある日、自分が携わっている業務に関して改善提案をした。しかし、上司とリーダーが同時に「それは無理だ。お金が掛かるし、技術的にもとても手間が掛かる。簡単には実現できない」と反対意見を口にした。一刀両断だった。
その後も会議の場や上司たちとの個別の会話内で幾つかの業務改善提案を試みたものの、毎回「無理だなぁ」「それは予算が取れないなぁ」「効果が分からないなぁ」など、さまざまな理由で否定された。そのうち、上司やリーダーに改善提案すること自体を諦めてしまった。
こういう状態に陥ることを心理学では「学習性無力感」と呼ぶ。心理学者セリグマンが提唱した概念で、「無力であること」を「学習してしまう」と、状況を変えられる場面であっても、自分からはもう変えようとしなくなるというものだ。
上司やリーダーはAさんのことを「やる気がなく指示待ちだ」と思っているようだが、彼がそうなったのには理由があったのだ。
もちろん、上司やリーダーから見れば、Aさんの提案が未熟なのかもしれない。考えが具体的でない、改善の理由が分かりにくい、などの理由もあるのだろう。ならば、Aさんは「提案力」を高めることが必要だ。
しかし、上司やリーダーの「聴き方力」にも再考の余地はある。
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