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「新・6大クラウドの誤解」2016年版2017年に向けて「何」を考えるべきか、マイクロソフトが提言

今や企業にも広く普及しつつあるクラウドだが、「誤解」もまだ多い。マイクロソフトが2016年版の「クラウドの誤解 トップ6」を挙げ、背景や現状を解説した。

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 米マイクロソフトが自社ブログで、「2016年版クラウドの誤解 トップ6」を公開。「ここ数年でクラウドは広く普及し、あらゆる業種でデジタルトランスフォーメーションを支えている。しかし、クラウドに関する誤解もまだ残っている」とし、誤解の背景を解説するとともに、2017年に向けて「今後、何が必要か/どう考えるか」を提言した。以下、内容を抄訳する。

photo Top Cloud Myths of 2016(Microsoft Azureブログ)

誤解 1:企業に必要なクラウドベンダーは、1社だけ

 企業には、アプリケーション、データ分析、開発、管理、セキュリティなど、さまざまなニーズがある。SaaS(Software as a Service)でも、PaaS(Platform as a Service)でも、IaaS(Infrastructure as a Service)でも、1つのクラウドでそうした多様なニーズを全て満たせると考えるのは非現実的だ。現実的には、さまざまな業務部門がそれぞれ多様なニーズを持っており、多くの場合は2つ、時には3つ以上のクラウドサービスを利用している。それぞれに向く/特化された機能を生かすためだ。

 2016年現在では、マルチクラウド管理ソリューションやオープン開発ツール/プラットフォームが提供され、じわじわと普及してきている。これは、ユーザーに懸念されていたベンダーロックインの問題を私たちベンダーが脱却し、IT部門や開発者の更新管理、マルチクラウド全体にわたるセキュリティ監視、そして、自らが選んだプラットフォームとツールで開発したいというユーザーニーズに業界が対処したことを示している。

誤解 2:クラウドセキュリティはオンプレミスよりリスクが高い

 サイバーセキュリティ対策の根本は、ハッカーより何歩も先行し続けることに尽きる。パブリッククラウド事業者は、最先端のセキュリティ技術を持ち、世界的に優秀なサイバーセキュリティ人材を確保する投資リソースも持っている。これらの点では、個別企業のはるかに上を行っている。また、世界の広大な地域にわたって大規模なクラウドを運用していることから、新しい脅威をいち早く検出し、それらがまん延する前に対策を打てる。

 世界/国や地域/業界の各基準に従って認証を獲得し、総じてコンプライアンスを確保するのは、個別の企業にとって大きな負担になる。グローバル規模で展開するクラウド事業者を利用すれば、クラウド事業者が既に達成しているコンプライアンスの恩恵を受けることができる。個別に対応すべき負担は限りなく少なくできる。

 つまり、パブリッククラウドサービスを利用することは、セキュリティとコンプライアンスの両面でメリットが大きい。しかし、クラウド事業者によってセキュリティ/コンプライアンス状況にばらつきはある。この先、クラウドサービスを利用/選定する上では、候補とするクラウド事業者のセキュリティとコンプライアンス状況を正しく比較検討する必要があるといえる。

誤解 3:パブリッククラウドの主なメリットは、イノベーションよりも効率性やコスト

 IaaSのようなパブリッククラウドインフラサービスを利用すれば、オンプレミスと比べてコスト削減やアプリケーションの迅速なデプロイが可能になる他、インフラを実質無限かつ瞬時に用意できる。スケールメリットによる経済性が主要な利点である。一方でIaaSは、従来のITインフラ管理やセキュリティのオーバーヘッドが残る面はある。これがイノベーションのペースを損なう恐れがあると懸念される背景だろう。

 これに対してPaaSは、開発者がアプリケーション開発に集中することを可能にする。(これまで兼務/あるいは片手間でやっていたかもしれない)インフラの調達、管理、保守といった業務は不要になる。つまり、クラウドの利点をフルに引き出すには、クラウドインフラとプラットフォームサービスを組み合わせて利用する必要があるといえる。

 例えば、IaaSに加えて、マネージドサービスやサーバレスコンピューティング技術を利用すれば、イノベーションの促進とともに、開発者およびIT部門の生産性向上にもつながる。機械学習、コグニティブサービス、IoT(Internet of Things)、モバイルアプリ開発、マイクロサービス、イベントドリブン機能などのサービスは、新しいイノベーションやビジネス変革の原動力となる。

誤解 4:ハイブリッドクラウドは、パブリッククラウドとプライベートクラウド/オンプレミスを接続したもの

 ハイブリッドクラウドは、パブリッククラウドとプライベートクラウド/オンプレミスを単にネットワークでつなぐだけでなく、全体にわたって一貫したエンドユーザーエクスペリエンス、IT管理およびセキュリティ、アプリケーション開発の在り方を実現できる方法である。

 こうした「ハイブリッドクラウドの一貫性」は、ネットワーク接続の確保や仮想マシン(VM)を容易に移動/管理できるといった機能性に加えて、アプリケーションやリソースがどこにあるとしても、IT担当者、開発者、エンドユーザーのコンピューティング環境が変わらないことにつながる。具体的には、統一的な開発、統合的なDevOps、一元的なアイデンティティーやセキュリティ、既存アプリケーションやインフラのクラウドへのシームレスな拡張などを可能にする。

 ハイブリッドクラウドの取り組みにおいてこうした一貫性の視点が欠けていると、複数の異なる環境を長期的に運用していくだけになってしまう。

誤解 5:パブリッククラウドはベンダーロックインにつながる

 クラウドインフラとそのアプリケーション開発機能は今や、基本的に全てのプラットフォームと開発言語をサポートするようになっている。従来はクラウドごとに制限はあったが、オープンソースを広くサポートし、自社技術をオープンソース化するクラウドベンダーも多くなったことから、任意のクラウド、言語、OSに対応した開発を行うことも容易になってきている。

 つまり開発者にとっては、「使いたい言語で開発し、あらゆるプラットフォームにデプロイする」という理想的な状態に近づきつつある。さらに、クラウドサービスで広くサポートされているコンテナ技術によって、アプリケーションのポータビリティ性に関する課題も解消されている。

誤解6:オープンクラウド開発はイノベーションや知的財産をリスクにさらす

 クラウドの大きなメリットは、アイデアを素早く試し、形にする環境を得られることにある。多くの企業がクラウドでアジャイル開発を進めており、適切なツールやコードを自由に選択できることを必要としている。そうしたコードとして重みを増しているのがオープンソースコードだ。オープンソースコードは活発に開発、提供されており、IT担当者は、会社からそれらの利用を許可されることを望んでいる。

 また、特定のプロジェクトをオープンソース化することは、開発者とその顧客から信頼と尊敬を得る第一歩になる。クラウド事業者は、自社の開発サイクルと顧客の技術インフラの重要な要素として、オープンソースに対応していく必要があるといえる。

 それを実現するには、オープンソースコミュニティーと協力して、開発/保守できる技術を探すことも必要になる。ベンダーは、オープンソースコミュニティーとの協力をオープンに進め、コミュニティープロジェクトへの寄贈を積極的に行わなければならないだろう。併せて、GitHubプロジェクトへの活発な参加や、標準化への協力、フォーラムでのコミュニティーとの交流なども求められる。

2017年に向けて考えるべきこと

 2017年は、ボット、ゲノミクス、AIアプリケーションなど、より高度で先進的なクラウド技術が商用段階に入ることが予想される。

 クラウドおよび企業の将来を担うクラウド事業者は、「真にグローバルな信頼できるハイブリッドプラットフォームを、オープン開発ツールと最先端のプラットフォームサービスとともに提供する実績を積み重ねた事業者」となるだろう。

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