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文系エンジニアはなぜ誕生したのか〜日本の現実人月神話の弊害?(1/3 ページ)

「職業はITエンジニアです。大学の専攻は英文学です」「私は文系SEだから、プログラミングは苦手です」――このような「文系エンジニア」が、あなたの周りにもいないだろうか? 日本独自の文系エンジニアは、どのような経緯で誕生し、どのような働き方をしているのか。「文系」「理系」で分類することに意味はあるのか。日米のエンジニアが真剣に解説する。

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 「文系エンジニアは世界では通用しない」という話を聞いたことがあるだろうか? 米国やインドなどでITエンジニアになるためには、プログラミングのバックボーンや理系の学歴が必須、という話だ。

 翻って日本のIT業界を見ると、経済学部や文学部、商学部などの「文系」学部を卒業し、就職してから初めて開発のいろはを研修で学んだというエンジニアが多数存在する。

 文系エンジニアは日本独自の存在なのか。本当に海外では通用しないのか?――日米の実情を前後編でお届けする。前編は、文系エンジニアが誕生した経緯、そもそも文理の違いとは何か、などの日本の現実を、IT企業でエンジニアの採用や生産性向上に携わるエンジニア「きのこる先生」に解説してもらう。


「あの人、エンジニアだけれど文系なんですってよ」「まあ……」

シリコンバレー在住のエンジニアが米国事情を解説する 「文系エンジニアは世界で通用しない」は本当か?〜シリコンバレーの常識


「文系SE」は、どのようにして誕生するのか

 「海外ではいわゆる『文系』がソフトウェアエンジニアとして職を得るのは難しい」という話を、しばらく前にWebサイトで読みました。

 さらによく読んでみると、単に「理系」というだけではなく、「コンピューターサイエンスの学位を持っていること」が海外でエンジニアとして採用される際の大きな条件のようです。ソフトウェア開発の専門家として雇用されるのですから、納得のいく話ではあります。

 いっぽう日本には、「文系SE」というキャリアパスがあります。大学の文系学部を卒業してSIerに就職し、そこで初めてソフトウェア開発に携わるシステムエンジニア(SE)のことです。

 慢性的な人手不足が続くIT業界ですから、コンピューターサイエンスの学位の有無などにこだわっていられない、という事情が採用側にはあるのでしょう。新卒時には、文系理系どころかプログラミングの経験やソフトウェア開発の知識がない人も、「システムエンジニア」として大量に採用されます。

プライムなエンジニアたち

 「プライム」(一次請け、元請けなどとも呼ばれる、顧客から直接案件を受注する)企業の場合、SEは要件定義や設計といった上流工程やプロジェクトマネジメントなどの管理工程を行います。「製造工程」と呼ばれる実際のプログラミングはパートナー(協力会社、要するに下請け)のプログラマー(PG)が行うので、SEの中にはほとんどプログラミンングの経験がない人もいるようです。

 SIerの中には「下流(製造工程)はパートナーがやるもの」「いつまでもPGでいちゃダメだ」という考え方をする会社や人物もまだまだ少なくないようです。

 「SE→プロジェクトリーダー(PL)→プロジェクトマネジャー(PM)という管理職コースを歩むのが正しいキャリアパス」と教えられた文系SEたちは、プログラミングの難しさや楽しさを知ることがないまま、システム開発を続けるのです……。

 しかし、こうした文系エンジニアの中にも、エンジニアリングの楽しさに目覚め、「自分で手を動かして開発していきたい」と考えるようになる人も少なくありません。仕事では開発業務に携われなくても、業務外の活動で開発スキルを磨き、自分の手でソフトウェアを作り出す「エンジニア」としてのキャリアに乗り換える、そういう経緯で誕生する「文系エンジニア」もいます。

パートナーなエンジニアたち

 「パートナー」と呼ばれる企業では、こういう事情に影響された形で文系エンジニアが量産されていきます。こういった企業のビジネスモデルは「人月単価」、つまり「1人のエンジニアが1カ月働くと、幾ら支払われる」という契約を結ぶのが主流です。すなわち会社にとっては「高単価で継続的にアサインされる」のが「良いエンジニア」であり、そこにエンジニアとしての能力は直接関係しないのです。

 こういった事情から、プライム企業と同様に、文系、理系の区別やコンピューターサイエンスの素養にこだわることなく「文系SE」をたくさん採用、育成し、PGやSEとして現場にアサインする、ということがパートナー企業でも多く行われています。

 パートナー企業のエンジニアたちは「製造工程」が主な仕事ですから、技術の差こそあれ、日常的にプログラミングをする場合がほとんどです。パートナー企業のPGとして日々コードを書く「文系エンジニア」が、日本のITシステムを支えているのが実情です。

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