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カンボジアは残存率3割弱、離島の男性は全滅――山本一郎氏が聞く、オフショア&ニアショアで働き手を開拓し続けた企業の8年間開発残酷物語(3)(1/3 ページ)

トラブルの原因は何だったのか、どうすれば良かったのか、同じトラブルを起こさないようにどういう手だてを取ったのか。実在する開発会社がリアルに体験した開発失敗事例を基に、より良いプロジェクトの進め方を山本一郎氏が探ります。

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 「オフショアの落とし穴」――察しのいい人であれば、このひと言だけで何を指すか想像できるだろう。「人件費の安さにつられ、もっと大きな損失を出してしまう」というよくある話だ。

 だからといって、国内の地方に拠点を作る「ニアショア」が天国かというと、こちらはこちらでさまざまな課題がある。単価が安いのには理由があり、気楽に手を出すものではない。

 いや、現実はもうちょっと複雑で、もうちょっと“エモい”。机上の計画や理屈だけではないところに、解決の糸口があったりするのだ。

 「開発残酷物語」は、システム開発会社比較検索サービス「発注ナビ」ユーザーのシステム開発会社の方々に過去の失敗事例をお話しいただき、契約で押さえるべきポイントやプロジェクト運営の勘所を読者諸氏と共有し、これから経験するトラブルを未然に防ぐことを目的としている。

 聞き手は、中国へのオフショア&撤退経験のある山本一郎氏。今回、失敗談をお話しいただいたのは、「KBB,I&D」の代表取締役兼、通信インフラ整備事業を行う「関西ブロードバンド」の専務取締役、宮崎耕史氏。そしてKBB,I&D取締役の浦坂周氏だ。

 KBB,I&Dは、Webサイトの制作、システム開発、スマートフォンやタブレットのアプリケーション開発などを行うシステム開発会社だ。神戸本社、東京事業所の他に、カンボジアにラボがあり、現地からのインターンも定期的に受け入れているという。


左から順に、KBB I&D 浦坂氏、宮崎氏、山本氏

真面目にやっているのに――オフショア残酷物語

 「大変だったでしょう」――対談の口火を切ったのは山本氏だった。実は山本氏も、1998年に中国に進出し、2007年に撤退を余儀なくされた経験があるのだ。


KBB I&D 宮崎耕史氏

 異国のパートナーと両手を握り合い、「頑張ってやっていこう」と誓い合う。しかし「握れた」と思っていたものが握れていない、それ以前に「そもそも握りとは何か」という根本的な定義が異なっていた――そんな苦労話を先手、山本氏が披露した。

 後手、宮崎氏の語るカンボジアでのオフショア話も負けていない。

 「訓練されていないカンボジア人には『言わなくても分かるでしょ?』が通じません。日本人が求める『普通』とカンボジアの『普通』は、本当に全く違いました。現場に近づけば近づくほどその傾向はあります」(宮崎氏)

 現場に近い浦坂氏も、「みんな、真面目なんです。でも一部の方はどうしても結果につながらない。表面に現れる部分よりも、何か本質的な部分が違うのではないかと思います」と振り返る。

 山本氏も「その感覚は分かる」と言う。

 開発スタート時に成果物の定義やガイドラインを渡し、それに沿って開発しているはず。それなのにかなりの割合でエラーが発生し、「組み上げてみると動かない」などと言われたことが多発したそうだ。そしてそれは、彼らが「真面目」にやった結果なのだ。

 オフショアならではの注意点もある。それは、現地の人の「プライド」だ。

 「ITエンジニアになるのは、現地の最高学府に通ったエリートで、地頭はいいんです。彼らの成果物は、日本の基準に照らし合わせれば『品質が低い』と言わざるを得ないのですが、彼らのプライドがその事実を理解したがらない。どうしてもそこが折り合わずにラボを退社する人も多く、現状、10人採用して、残ってくれるのは2〜3人というところです」(浦坂氏)

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