IBM、商用汎用量子コンピュータ「IBM Q」のロードマップを発表:開発者向けSDKを2017年上半期に公開
米IBMが、商用に利用可能な汎用量子コンピュータ「IBM Q」のロードマップを発表。開発者向けに「IBM Quantum Experience」用APIやSDKも提供する。
米IBMは2017年3月6日(米国時間)、商用に利用可能な汎用量子コンピュータ「IBM Q」のロードマップを示した。今後数年をめどに最大50量子ビットのIBM Qシステムを構築するとし、パートナー企業とも協力して量子コンピューティングの性能を生かすアプリケーションの開発やエコシステムの構築を目指す。
同社は汎用量子コンピュータについて、「Watsonのような現在稼働する従来型コンピュータは、膨大な量の既存のデータに埋もれているパターンや洞察の発見に役立つ。一方の量子コンピュータは、データが存在しないためにパターンが見えなかったり、解を得るために検討すべき可能性が桁外れに多いために従来型コンピュータでは処理しきれない重要な問題に対する解決策を提供する。量子コンピュータは、さまざまな業界における変革につながる可能性を持つ、Watsonやブロックチェーンに続く、次の主要な技術と考えている」と開発意図を述べている。
量子コンピュータにより、従来型コンピュータでは困難だった以下の課題を解決できる可能性があるという。
- 新薬や新材料の発見につながる分子や化学反応の解明
- 繁忙期での配達業務の最適化など、効率のよい物流やサプライチェーンに向けた最適順路の発見
- 金融データをモデル化する新しい方法の発見と、より良い投資を実現する主要なグローバルリスクの特定
- 画像や動画のような、膨大な量のデータに対する機械学習
- 量子物理学の法則を活用したクラウドシステムのセキュリティ管理
併せて、同社が2016年5月にIBM Cloud上で提供を始めた量子コンピューティングプラットフォーム「IBM Quantum Experience」向けのAPI(Application Programming Interface)や、IBM Quantum Experienceシミュレーターのアップグレード版を用意することも発表した。
同APIにより、開発者やプログラマーは、量子物理学の深い知識がなくても5量子ビットによるクラウドベースの量子コンピュータと従来型コンピュータを結ぶインタフェースを構築できるようになる。一方のアップグレード版シミュレーターは、IBM Qで想定される最大20量子ビットの回路をモデル化できるという。この他、IBM Quantum ExperienceのSDK(Software Development Kit:ソフトウェア開発キット)も2017年上半期の公開が予定されている。
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