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Windows 10のデスクトップ環境をDaaSのVDIで利用可能にMicrosoft Azure最新機能フォローアップ(29)

Azure Marketplaceで「Citrix XenDesktop Essentials」と「Citrix XenApp Essentials」が利用可能になりました。XenDesktop Essentialsに合わせて、マイクロソフトはサービスプロバイダーがパブリッククラウド上でDaaSを実現できるように、Windows 10 Enterpriseについて制限を緩和する予定です。また、XenApp Essentialsは、2017年8月にサービスが完全に終了するAzure RemoteAppの後継と位置付けられるサービスです。

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Windows 10の真のDaaS、Citrix XenDesktop Essentials

 2017年3月31日(米国時間)、Microsoft AzureのAzure Marketplaceでシトリックス・システムズ(以下、シトリックス)の「Citrix XenDesktop Essentials」と「Citrix XenApp Essentials」が利用可能になりました。

 この2つサービスは、どちらもMicrosoft Azureのサービスおよびシトリックスのクラウドサービス「Citrix Cloud」に基づく、仮想デスクトップインフラストラクチャ(Virtual Desktop Infrastructure:VDI)ソリューションですが、両者は全く異なるものです(画面1)。

画面1
画面1 Azure Marketplaceで利用可能になった「Citrix XenDesktop Essentials」と「Citrix XenApp Essentials」

 XenDesktop Essentialsは、Microsoft Azureのクラウド基盤で実行されるWindows 10 EnterpriseのCurrent Branch(最新バージョン)の仮想デスクトップへのアクセスを、さまざまな種類のデバイスに向けて提供します。

 これまでもWindowsのフルデスクトップ環境をDaaS(Desktop as a Service:サービスとしてのデスクトップ)として提供するサービスは幾つか存在しましたが、どれもWindows Serverの「リモートデスクトップサービス(RDS)」に基づく“WindowsサーバOSのマルチデスクトップ環境”で実現されていました。

 WindowsデスクトップOSは、MSDN(Microsoft Developer Network)向けに提供される開発、テストを目的としたAzure仮想マシンを除き、いかなるパブリッククラウド(Azureも含む)上でも、ライセンス上、実行を許可されていませんでした。そのため、これまでWindowsデスクトップOSのVDI環境を実装するには、オンプレミスに構築するか、占有可能なホスティングサービスを利用する必要がありました。

 マイクロソフトはシトリックスのXenDesktopのサービス提供に合わせ、サービスプロバイダーがパブリッククラウド上でDaaSを実現できるように、Windows 10 Enterpriseについて特定の条件下でこの制限を緩和する予定です。筆者が確認した限り、マイクロソフトの最新(2017年4月1日版)の製品条項(PT)、Azure仮想マシンやWindows 10のよくある質問(FAQ)には、まだこの変更は反映されていないようです。ライセンスに関しては明確になっていない点もありますが、現状、XenDesktop Essentialsが、パブリッククラウド上でDaaSを実現する、唯一のサービスのようです。

 XenDesktop Essentialsの利用料金を含むよくある質問(FAQ)は、以下のシトリックスのWebサイトで確認することができます。

 XenDesktop Essentialsサービスは、最小25ユーザーから購入可能で、1ユーザーにつき12ドル/月で提供されます。さらに、Azure上のWindows 10 EnterpriseのCurrent Branchの仮想デスクトップを展開するためには、XenDesktop Essentialsの利用料金の他、マイクロソフトのEnterprise Agreement(EA)契約を通じてサブスクリプション購入できる「Windows 10 Enterprise E3 Per User」(旧称、Windows Software Assurance(SA)per User)、「Windows 10 Enterprise E5 Per User」、または「Windows Virtual Desktop Access(VDA)Per User」のライセンスが必要です。EA契約がない場合、AzureポータルでXenDesktop Essentialsのサービスを作成することはできません(画面2)。

画面2
画面2 XenDesktop Essentialsのサービスを作成するには、Enterprise Agreement契約でWindows 10 Enterprise E3/E5ライセンスの購入も必要

Azure RemoteAppの後継、Citrix XenApp Essentials

 もう1つのXenApp Essentials(旧称、XenApp "express")は、RemoteApp環境のマネージドサービスである「Azure RemoteApp」の後継として位置付けられたサービスであり、Windows Server 2012 R2またはWindows Server 2016のリモートデスクトップサービス(RDS)がベースになります。いずれかのWindowsサーバOS上にアプリケーションを展開し、集中的に管理して、さまざまなデバイスにアプリケーションへのアクセスを提供します。

 マイクロソフトは2016年8月に、Azure RemoteAppサービスの新規受付を終了し、既にサービスを利用している顧客に対しては1年間の猶予期間を設けました。Azure RemoteAppサービスは、2017年8月31日に完全に終了する予定です。マイクロソフトとシトリックスは今後、Azure RemoteAppからXenApp Essentialsへの移行ツールを開発し、提供する予定です。

 XenApp Essentialsの利用料金を含むよくある質問(FAQ)は、以下のシトリックスのWebサイトで確認することができます。

 XenApp Essentialsサービスもまた最小25ユーザーから購入でき、1ユーザーにつき月額12ドルで提供されます。これには、Citrix Cloudの「NetScaler Gateway」へのアクセスと、ユーザーごとに1GB/月までのデータ転送料金が含まれます。さらに、アプリケーションにアクセスするために、別途、アクセス元のユーザーまたはデバイスごとにRDS CALを準備するか、Azureポータルを通じて1ユーザー当たり月額6.26ドルのMicrosoftリモートアクセス料金を購入する必要があります(画面3)。

画面3
画面3 XenApp EssentialsはAzure RemoteAppの後継サービス。Citrix Cloudの利用料金の他に、RDS CALライセンスまたはMicrosoftリモートアクセス料金が必要

Citrix XenApp TrialとXenApp Essentialsは別もの

 なお、XenDesktop EssentialsとXenApp Essentialsはどちらも、シトリックスが提供するサービスであり、Azureサブスクリプションのクレジット枠(1カ月無料評価版のクレジット枠やMSDNサブスクリプションの特典など)から支払うことはできないことに注意してください。また、現時点でこれらのサービスの無料評価版(無料評価期間)は提供されていません(XenDesktop Essentialsについては、シトリックスの営業担当者に問い合わせることで可能な場合があります)。

 また、Azure Marketplaceでは「Citrix XenApp Trial」(前出の画面1の「Citrix XenApp 7.1.3 Trial」)が利用可能ですが、これはXenApp Essentialsの無料評価版ではないことに注意してください。これはオンプレミス向けのXenApp製品を、AzureのIaaS(Infrastructure as a Service)環境にデプロイして評価するための仮想マシンテンプレートです。

筆者紹介

山市 良(やまいち りょう)

岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(Oct 2008 - Sep 2016)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。マイクロソフト製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。


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