Hadoop生みの親が、ゼロックスからアップルに転職した理由:Go AbekawaのGo Global!〜Doug Cutting編(3/3 ページ)
Apache、そしてHadoopを作ったDoug Cutting(ダグ・カッティング)氏が常に目指すゴールとは――。 ※「お子さんがエンジニアになりたいと言ったら、どうアドバイスしますか?」〜カッティング氏の動画付き
ゼロックスからアップルに転職した理由
阿部川 その後、2009年にCloudera(クラウデラ)に移られたわけですね。オープンソースの普及以外に、大切にしていることはありますか?
カッティング氏 多くの人々に実際に使ってもらえるソフトウェアを開発することです。ゼロックスではさまざまな特許を申請しましたが、実は誰もそのソフトウェアを使わなかったということもありました。とても残念で、アップルに移った理由もそこにあります。
アップルではユーザーが使うシステムを開発しましたし、エキサイトでもユーザーが検索エンジンを使っていることが分かりましたので、とても興奮しましたし、「開発して良かった」と思いました。オープンソースもユーザーに使ってもらえるので、「開発してよかった」という実感があります。「実際に使ってもらう」ことは、常に私のゴールです。
多くの人々に使ってもらうことで新しい価値を提供できるようなソフトウェアを開発することが、私の情熱の源です。ですからこうしてHadoopを開発できましたし、多くの人々に使われるようになったのだと思います。「開発のための開発」ではなく、本当に人々が使ってくれるソフトウェアの開発を行い、それによって新しい価値を提供することが大切だと思っています。
阿部川 最後に、日本のエンジニアにアドバイスをいただけますか?
カッティング氏 ソフトウェア開発にとって、オープンソースは非常にすばらしい環境です。多くの人と交流でき、そこで開発された技術も長く利用されるケースが多いので、やりがいも多いと思います。
私はオープンソースを軸にして、多くの人が同時にソフトウェア開発に関わっていくことを強く勧めます。開発の主要言語は英語ですから、日本ではその点が重荷になることは承知していますが、英語もプログラム言語も言ってみれば単なる言語です(笑)。
多くの日本のエンジニアがオープンソースプロジェクトに参加していることに、とても感動しましたし、励まされもしました。ぜひ、やり続けてください。オープンソースが、どんな技術よりも常に優れているとはいいませんが、少なくともオープンソースの環境での開発に携わっていれば、学べることはたくさんあるし、多くの利点も享受できると思いますよ。
Go's think aloud〜インタビューを終えて
背がとても高く、スマートで、身のこなしもしなやかだ。颯爽(さっそう)とインタビューにあらわれた「Hadoopの生みの親」は、しかし人懐こい笑顔で早口に話し出した。
コンピュータが、なかんずくプログラミングが何よりも好きなこと。そして出来上がったソフトウェアは、多くの人々に使ってもらってこそ価値を発揮するものであること。この2つが彼の本質であり、その精度をひたすら研ぎ澄ましてきた道のりが、今の彼を作り上げた。
「コードを書くことは、どんどん少なくなってきているけどね」――そう言ったとき、いかにも残念という表情で頭を掻いた。「エンジニアが世の中に貢献しないといけないことはやまほどある。そしていまがその1番のとき」と目を輝かせて話してくれたとき、大組織のチーフアーキテクトは、夢を追う若きプログラマーに戻った。
阿部川久広(Hisahiro Go Abekawa)
アイティメディア グローバルビジネス担当シニアヴァイスプレジデント兼エグゼクティブプロデューサー、ライター、リポーター
コンサルタントを経て、アップル、ディズニーなどでマーケティングの要職を歴任。大学在学時より通訳、翻訳なども行い、CNNニュースキャスターを2年間務めた。現在は英語やコミュニケーション、プレゼンテーションのトレーナーとして講座、講演を行うほか、作家として執筆、翻訳も行っている。
編集部より
「Go Global!」では、インタビューを受けてくださる方を募集しています。海外に本社を持つ法人のCEOやCTOなどマネジメントの方が来日される際は、ぜひご一報ください。取材の確約はいたしかねますが、インタビュー候補として検討させていただきます。
ご連絡はこちらまで
@IT自分戦略研究所 Facebook/@IT自分戦略研究所 Twitter/電子メール
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- Hadoopの父に聞く、HadoopとClouderaの現在・未来
次世代Hadoopの特徴は、MapReduce 2とGiraph - いまさら聞けないHadoopとテキストマイニング入門
Hadoopとは何かを解説し、実際にHadoopを使って大規模データを対象にしたテキストマイニングを行います。テキストマイニングを行うサンプルプログラムの作成を通じて、Hadoopの使い方や、どのように活用できるのかを解説します - Sparkは“誰”に例えられる?──多様化と進化を続ける「Hadoop」、人気急上昇「Spark」
先日、日本Hadoopユーザー会主催のイベントが開催されました。データベースと関係性が深いデータ分散処理プラットフォームである「Hadoop」と「Spark」の最近事情に迫ります - もし、あなたが「“ビッグデータプロジェクト”を任せる。何とかするように」と言われたら
「ビッグデータプロジェクトを始めることになった」ら、具体的に何をするのか。本連載は、「ビッグデータプロジェクトの“進め方”」を業務視点/ビジネス視点の両面から体系的に理解し、具体的に実践していく方のためのナレッジアーカイブです。第1回目は、「ビッグデータとは何か」の基礎と、「ビッグデータ基盤の概要とメリット」を解説します - Hadoopは「難しい・遅い・使えない」? 越えられない壁がある理由と打開策を整理する
ブームだったHadoop。でも実際にはアーリーアダプター以外には、扱いにくくて普及が進まないのが現状だ。その課題に幾つかの解決策が出てきた。転換期を迎えるHadoopをめぐる状況を整理しよう