人工筋肉やVR/AR、仮想ロボット、FoodTech……、先端技術から生まれるプロダクトとは:Microsoft Innovation Award 2017最終選考会(4/5 ページ)
2017年3月22日に人工筋肉やVR/ARなどの先端技術を活用するスタートアップ企業の取り組みを表彰するイベント「Microsoft Innovation Award 2017」の最終選考会が開催された。どのような最新技術でどのようなプロダクトが生まれているのか紹介する。
多国語間コミュニケーションを実現する「FUJITSU Software LiveTalk」
富士通ソーシアルサイエンスラボラトリが開発した「FUJITSU Software LiveTalk」(以降、LiveTalk)は、音声認識と自動翻訳を活用して多国語間のコミュニケーションを実現するダイバーシティーコミュニケーションツールだ。
LiveTalkは、音声認識と自動翻訳を組み合わせて、発話した内容を音声認識し、同時に複数の端末で共有。相手の話も母国語に翻訳して画面に表示する。これにより相手の言語を気にすることなく自分の母国語で話すことが可能だ。
LiveTalkの特徴は、既存の翻訳アプリケーションやサービスと異なり、会話をスムーズに進められるように迅速なスピードで処理を実現していることだ。話し始めると同時に音声認識し、並行して翻訳することで、発話終了のタイミングで翻訳を読み終えて返事をすることができる。
その性能を支えているのがリアルタイム会話共有技術と、富士通ソーシアルサイエンスラボラトリが特許を出願しているリアルタイム自動翻訳技術だ。リアルタイム会話共有技術を使うことで、LiveTalkは発話と同時に文字化して、複数の端末間で遅延なく文字を共有できるという。またリアルタイム自動翻訳技術によって、発話と並行して、端末ごとに発話内容を別々の言語に翻訳する。そのため、発話が終了したタイミングですぐに相手から返事をもらうことが可能だ。
LiveTalkは、クロスプラットフォーム開発ツール「Xamarin」をはじめとするモバイル開発技術を使ってC#によるコードの共通化を図っている。こうした効率的な開発によって、無理のないマルチデバイス対応を実現している。
HTML5ベースのゲーム型広告を簡単に展開できる「ikemu」
ikemu Japanが提供する「ikemu」は、HTML5ベースのゲーム型広告「アドバゲーム」を広告主が簡単にカスタマイズして配信できる「アドバゲームプラットフォーム」だ。
現在、スマートフォンユーザーの中でゲームで遊んでいるユーザーは、48%に上っており、その利用時間は毎日平均60分におよんでいるという。ゲームに集中するユーザーの時間を広告に活用できればその効果は大きい。そこで注目されているのが、広告対象の製品やサービスを疑似体験しながらゲームを楽しむことができるアドバゲームだ。
しかしアドバゲームの制作は簡単ではなく、優れたアイデアと膨大な時間、コストが必要である。ikemuを使えば、そうしたゲーム開発の知識や技術がなくても、豊富なライブラリの中から、自社の広告に合ったゲームを選び、簡単にカスタマイズするだけで、本格的なアドバゲームを制作することができる。
ikemu Japanは、世界中からHTML5のゲームコンテンツを集めて豊富なライブラリを構築している。ゲームを開発したい企業は、ikemuにアクセスしてライブラリの中からゲームテンプレートを選び、画像やロゴをドラッグ&ドロップで変更したり、一括してアップロードしたりすることで、自社のアドバゲームを制作、配信できる。もちろん、エンゲージメント時間やプレイ回数、離脱率などのデータを確認できるようになっている。
実際にアドバゲームによってどのような効果が得られるのだろうか。オウンドメディアに適用した事例では、参照したユーザーの約40%がゲームコンテンツをクリックし、クリックしたユーザーの80%がゲームを最後までプレイした実績がある。また記事内広告の事例では、動画に比べてクリック率が81%も向上した実績もあるという。
今後の取り組みとしてikemu Japanは、Xseed Digitalのリワード広告の広告コンテンツとして配信を予定している他、個人向けのサービス展開も視野に入れている。その手始めとして、Webサイト作成ツールのWIXにikemuの機能を提供している。またikemu Japanは、教育やチャリティーなどの分野、マーケティング向けのコンテンツへの適用を考えている。
マルチコア環境で業務バッチ処理を高速化する「Asakusa on M3BP」
「Asakusa on M 3 BP」は、マルチコア環境の単一サーバで大量のメモリを駆使して小規模バッチ処理を高速化する分散処理エンジンだ。並列・分散処理を手掛けるノーチラス・テクノロジーズと、マルチコア最適化を手掛けるフィックスターズが共同開発した。
従来、バッチ処理を高速化するには、サーバに使用するハードウェアを増強(スケールアップ)するやり方が主流だった。だがApache HadoopやApache Sparkなどの分散処理技術の登場によりハードウェアを追加(スケールアウト)する分散処理のアプローチが模索されるようになった。ノーチラスが提供しているAsakusa Frameworkは、その取り組みの一環として開発されたものだ。
だがHadoopはPB(ペタバイト)クラスの大規模なデータ処理で、Sparkは数百GBからTBクラスのデータ処理で高速化を実現できるものの、それ以下のデータサイズの処理は苦手としており、高速化は難しい。日本の企業は、数十GBから数百GBのデータサイズでバッチ処理をしているところが少なくない。そうした企業は、スケールアウトによってノードを増やすと返ってオーバーヘッドが生まれ、バッチ処理の高速化は望めなくなる。
Asakusa on M 3 BPは、こうした問題の解決に向けて、小規模なデータサイズのバッチ処理を高速化するために開発された分散処理エンジンだ。これまでのように、何台ものノードを使って複雑な並列処理をするのではなく、単一ノードのマルチコアCPUと大容量メモリを使ってオンメモリ処理をする。これにより、ハードウェアの性能を最大限に引き出すとともに、マルチコア対応のフレームワークを使ってバッチ処理の高速化を図っている。今まで何時間もかかっていたバッチ処理を数分レベルにまで短縮できるようになったとしている。
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