Mastodon(マストドン):Tech Basics/Keyword
いまネット上で話題の「Mastodon」について解説する。次世代Twitterとも称されるMastodonとはどのようなものなのか、特徴や問題点などを見ていこう。
ネット上に突然のように現れた「Mastodon(マストドン)」というワードに「これは何だろう?」と思った方も多いのではないだろうか。
「Mastodon(マストドン)」とは、Eugen Rochko(オイゲン・ロッコ)氏が開発した、Twitterに代表されるミニブログサービスの一種である。ただTwitterと異なり、複数のサーバ(Mastodonでは「インスタンス」と呼ぶ)に分散しているのが特徴だ。
なおMastodonという名前は、中新世から更新世にかけて生息していた、象やマンモスに似た大型の哺乳類の総称である。Rochko氏は、「同名のプログレッシブメタルバンドがあり、それからその動物のファンになりました。かなりクールな名前/動物だと思います(There's a progressive metal band with the same name that I'm a fan of that brought the animal to my attention. I thought it's a pretty cool name/animal.)」とGitHubのFAQページで述べている。
Mastodonのトップページ(本家のインスタンス)に「Mastodonは自由でオープンソースなソーシャルネットワークです。商用プラットフォームの代替となる分散型を採用し、あなたのやりとりが一つの会社によって独占されるのを防ぎます。」と書かれていることでも分かるように、Twitterのように1つの会社がコントロールするものではなく、その代わりとなるような機能を、誰でもが構築可能とし、分散管理できるものとするというのがMastodonの開発コンセプトだ。
Twitterは、ミニブログサービスの代表ではあるものの、最近、広告ツイートが増えており、ユーザーの不満が溜まっていること、2016年10月〜12月期決算で純損益が1億6705万ドル(約190億円)の赤字と、商業的に成功しているとは言い難く倒産の可能性も否定できないことなども開発背景にあるのではないかと想像する。
実際にMastodonを見てみよう
Mastodonサーバ(インスタンス)を構築するためのプログラムは、オープンソースでGitHubで公開されており、誰でも立ち上げることができる。すでに、インスタンスは1340ほどもあり(4月25日現在)、毎日50インスタンス以上のペースでその数が増えている(最新の状況は「Mastodon instances」参照のこと)。個人が実験目的で立ち上げた非公開のインスタンスなども含めると、その数はさらに多くなりそうだ。
インスタンスの一覧
Mastodonは複数のインスタンスが相互に連携して動作している。インスタンスの一覧は「Mastodon instances」ページで確認できる。ユーザーは最初にいずれかのインスタンス上にアカウントを作成してログインする。
Mastodonは、OStatus platformという分散型ミニブログのオープン標準に沿って作られており、このプロトコルを使って、各インスタンス間で通信しつつタイムラインを構成する仕組みとなっている。
ユーザーは、特定のMastodonサーバ(インスタンス)にアカウントを作成し(メールアドレスとパスワードを設定する)、そこにログインする。話題を限定しないインスタンスの他、仕事や趣味、地域など特定の話題に限定したインスタンスも作成されている。特定の話題のインスタンスにアカウントを作成すると、興味のある話題が見つけやすいというメリットがある。開発者向けやサッカーのような趣味の集まりなど、すでにいくつも話題を特定したインスタンスが立ち上がっている。
Twitterと異なり、Mastodonは分散型を採用しているため、タイムラインも「ローカル(Local)」と「連合(Federated。インスタンスによっては連邦)」の2種類があり、そのインスタンス上の投稿が「ローカル」に、現在ログインしているインスタンス上の他のユーザーがフォローしている、別インスタンス上の投稿が「連合」に表示されるようになっている。
PC版のMastodon(Pawoo.net)の画面
Webブラウザで、Mastodonインスタンスを開いたところ。
(1)投稿は、ここに500文字まで入力できる。
(2)[トゥート!]ボタンをクリックすると、投稿が行われる。
(3)フォローしたアカウントの投稿が表示される。
(4)他のアカウントからフォローされたなどの通知が表示される。
(5)「ローカルタイムライン」をクリックすると、このカラムにそのインスタンスに流れる投稿が表示される。→[A]へ
(6)「連合タイムライン」をクリックすると、このカラムにこのインスタンスとつながりのあるインスタンス上の投稿が表示される。
[A]
ローカルライムラインを表示させた画面
そのインスタンスに流れている投稿は、ローカルタイムライン((1))として表示される。Twitterと違って、フォローしていなくても、ローカルのインスタンス上の全ての投稿が自動的に(スクロールしながら)表示される。ユーザーの多いインスタンスだと、各投稿をじっくり読むのは困難だ。
また、「ホーム(Home)」には、自分がフォローしたユーザーの投稿(「トゥート」という。Twitterのツイートに相当)」や「ブースト(リツイートに相当)」が表示される。
1つの投稿は500文字までで、GIFV(画像共有サイト「Imgur」にアップロードした際に付けられる動画ファイルの拡張子)などの動画にも対応している。また、投稿ごとに「公開(Public)」「未収載(Unlisted)」「非公開(Private)」「ダイレクト(Direct)」という4種類の公開範囲を設定できる。
公開範囲 | ローカル | 連合 | 誰でも | フォロワー | 指定したアカウント |
---|---|---|---|---|---|
公開 | ○ | ○ | ○ | ○ | − |
未収録 | × | × | ○ | ○ | − |
非公開 | × | × | × | ○ | − |
ダイレクト | × | × | × | × | ○ |
投稿範囲の指定 ダイレクトで投稿する場合、送信相手がローカルのインスタンス上のユーザーなら「@user0001」のように指定するが(これはTwitterと同じ)、他のインスタンス上のユーザーなら「@user0002@mastodon.jp」のようにドメイン名も付加する。 |
ユーザーの閲覧環境や嗜好の違いに配慮する仕様もある。「CW(Contents Warning)」機能は、投稿に「内容注意メッセージ(例えば『ネタバレ』)」といった警告のみを表示し、隣の[もっと読む]ボタンをクリックして初めてメッセージが全て表示されるといったものだ。
同様に画像に関しても、「NSFW(Not Safe For Work)」機能がある。画像を投稿する際、[NSFW]ボタンをオンにして投稿すると、画像部分に「不適切なコンテンツ クリックして表示」という表示が行われ、クリックするまで画像が表示されない。
さらに各インスタンスは、管理者のポリシーに合わない投稿が行われるインスタンスとの通信を遮断できる機能も提供されている。例えば、pixivが運営するPawoo.netで流れている画像には欧米で許容されないものが含まれていたため、欧米のインスタンスで問題となっていた。これに対して、ドメインブロックを設定することで、Pawoo.netの投稿が他のインスタンスに流れないようにしたようだ。
Mastodonの問題点
国によっては法律で規制の対象になるような投稿や、慣習として不快となる投稿が流れてしまう可能性もある。前述のようにそうした投稿を行うインスタンスをブロックする機能(ドメインブロック)や、特定のアカウントの投稿をブロックする機能も提供されている。しかしMastodonの利用規約は、インスタンスごとに作成することになっており、全てのインスタンスに共通した禁止事項などが決まっているわけではない。そのため、どのインスタンスに参加するかによって、ルールが異なるので注意が必要だ。
また現時点のMastodonには、アカウントの削除機能がない。自由にインスタンスを立ち上げることができるため、アカウントを詐取する目的の悪意のあるインスタンスが含まれている可能性も否定できない。Mastodon専用のメールアドレスを作って登録するのがよいだろう。
さらに「非公開」「ダイレクト」の投稿でも、ハッシュタグを付けていると誰でも検索で表示されてしまうという問題も指摘されていた。すでに修正済みだが、まだこのバグ修正を反映していないサーバも多いようだ(このようにバグを修正してもサーバに反映されないという点もMastodonの問題の1つでもある)。Mastodonでは、「非公開」「ダイレクト」に設定して投稿しても、公開されてしまう可能性も考えた方がいいだろう。
Mastodonのインスタンスを立ち上げる
前述のようにMastodonはオープンソースで提供されており、誰でもインスタンスを立ち上げることができる。Ruby on Railsフレームワークを使って構築されており、RubyやpostgreSQLなどがあれば比較的簡単にインスタンスを立ち上げられるようだ。
また、Dockerを使ってMastodonサーバを立ち上げる方法など、すでに多くの人が自身で立ち上げた過程などを報告しているので、それらを参考にするとよい。
外部に公開しないクローズドなインスタンスも作成できるので、社内のコミュニケーション用にイントラ内に立ち上げてみてもよいだろう。
Mastodonは、インターネットや開発者のコミュニティに盛り上がりを見せていることもあり、スマートフォン用のアプリが次々と提供されるなどの多くの動きがある。それらの動向は、ITmedia NEWSなどでも報告されているので、「ITmediaのMatodonに関する記事」を参照してほしい。
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