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ランサムウェア「Wanna Cryptor」に対し、異例のセキュリティパッチをWindows XPに提供する意味山市良のうぃんどうず日記(94:緊急特別編)

世界的に猛威を振るっているランサムウェア「Wanna Cryptor」に対し、マイクロソフトはサポートが既に終了しているWindows XP、Windows Server 2003、Windows 8(8.1ではない)向けに緊急のセキュリティ更新プログラムの提供を開始しました。

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サポートが終了したOSに異例のセキュリティパッチを提供

 2017年5月12日(米国時間)に世界的に感染を広げ、日本でも感染例が報告されたというランサムウェア「Wanna Cryptor」(WannaCry、WanaCryptなどとも呼ばれます)は、Windowsのファイル共有プロトコル「SMB(Server Message Block)」の古いバージョンである“SMB v1(SMB 1.0/CIFS)の脆弱(ぜいじゃく)性”を悪用して感染を広げます。

 このSMB v1の脆弱性は既知のものであり、2017年3月に提供されたセキュリティ更新プログラムで既に修正されています。本連載第83回の最後に追記した「MS17-010」の脆弱性問題です。サポート期間中のWindowsであれば、適切に更新されている限り、影響を受けることはありません。

 マイクロソフトは今回、既にサポートが終了したWindows XP(2014年4月にサポート終了)、Windows Server 2003/2003 R2(2015年7月にサポート終了)、Windows 8(2016年1月にサポート終了)についても、「MS17-010」の脆弱性を修正するセキュリティ更新プログラム「KB4012598」の提供に踏み切りました。

 Windows XP、Windows Server 2003、Windows 8向けのセキュリティ更新プログラム「KB4012598」は、以下の「Microsoft Update Catalog」から入手できます(画面1)。

  • IEからの場合は、下記URLにアクセスし「KB4012598」を検索

https://catalog.update.microsoft.com/

  • IE以外からの場合は、下記URLにアクセスし「KB4012598」を検索

http://www.catalog.update.microsoft.com/

 サポート終了OS向けのダウンロードリンクは、こちらにもあります。

  • Customer Guidance for WannaCrypt attacks

https://docs.microsoft.com/en-us/msrc/customer-guidance-for-wannacrypt-attacks

画面1
画面1 サポートが終了したWindows XP、Windows Server 2003/2003 R2、Windows 8向けに、セキュリティ更新プログラム「KB4012598」を特例で提供

 Windows UpdateやMicrosoft Updateでは配布されていないようなので、手動でダウンロードして、インストールする必要があります。なお、2017年4月にサポートが終了したばかりのWindows Vistaについては、2017年3月のセキュリティ更新プログラムで既に対策済みです(画面2)。

画面2
画面2 2017年4月にサポートが終了したWindows Vistaは、前月の3月の更新で対策済み

 なお、Microsoft Update Catalogは古いバージョンのOSや「Internet Explorer(IE)」からの利用は想定していないようで、Windows XPやWindows Server 2003/2003 R2からアクセスしても、うまくダウンロードできないかもしれません。サポート期間中のWindowsを実行する健全な(最新状態に更新済みの)コンピュータを利用できるなら、そちらを使用してファイルをダウンロードし、問題のコンピュータにコピーしてインストールするのが確実です(画面3画面4)。

対応OS セキュリティ更新プログラム名
Windows XP Home/Professional SP3向け Windows XP SP3 用セキュリティ更新プログラム(KB4012598)カスタムサポート
Windows XP Professional x64 SP2向け Windows XP SP2 for x64-Based Systems用セキュリティ更新プログラム(KB4012598)カスタムサポート
Windows Server 2003/2003 R2 x86向け Windows Server 2003用セキュリティ更新プログラム(KB4012598)カスタムサポート
Windows Server 2003/2003 R2 x64向け Windows Server 2003 for x64-Based Systems用セキュリティ更新プログラム(KB4012598)カスタムサポート
Windows 8 x86向け Windows 8用セキュリティ更新プログラム(KB4012598)
Windows 8 x64向け Windows 8 for x64-Based Systems用セキュリティ更新プログラム(KB4012598)
画面3
画面3 Windows XPにMicrosoft Update Catalogからダウンロードしたセキュリティ更新プログラム「KB4012598」をインストールする
画面4
画面4 Windows Server 2003 R2にMicrosoft Update Catalogからダウンロードしたセキュリティ更新プログラム「KB4012598」をインストールする

 なお、Windows XP向けのセキュリティ更新プログラムについては、Windows XP Embedded向けのものと混同しないように注意してください。Windows XP Embedded向けの更新プログラムをWindows XP HomeやWindows XP Professionalにインストールしようとしても、「インストールされているWindowsのバージョンは、インストールしようとしている更新に一致しません」というエラーで失敗します(画面5)。

画面5
画面5 Windows XP Embedded向けとWindows XP向けの更新プログラムは違うので、間違わないように

 「マイクロソフトも本当に大変なときは対応してくれるんじゃない」とは思わない方がよいでしょう。今回の対応は極めて異例なものであり、Windows XP/Server 2003などの古いOSを使用しているユーザーを保護するというよりもむしろ、“古いOSを介した感染拡大を防ぐ”ことを重視しての決定だと思います(筆者の個人的な感想です)。

 今回、MS17-010の脆弱性が特別措置で解消されたといっても、サポートが終了したOSに他にも存在するであろう多数の脆弱性(通常、公表されることはありません)は放置され続けるため、使用の継続は今回のようなセキュリティリスクと隣り合わせです。つい最近、サポートが終了したWindows VistaやWindows 10初期リリース(Windows 10 Enterprise 2015 LTSBを除くビルド10240)も、今後、時間の経過とともにリスクが高まります。

 なお、マイクロソフトのマルウェア対策製品(Windows 8以降に標準で組み込まれている「Windows Defender」を含む)では、2017年5月12日(米国時間)に提供された定義ファイル「1.243.302.0」以降で、このランサムウェアを「Ransom:Win32/WannaCrypt」として検出、駆除できるようになっています。他社のマルウェア対策製品についても、既に対応しているはずです。

 今回のランサムウェアとは関係ありませんが、マイクロソフトのマルウェア対策製品については2017年5月に重要な脆弱性問題のセキュリティアドバイザリと修正が出ています。それは、Windows Defenderや「Microsoft Security Essentials」「System Center Endpoint Protection」など、マイクロソフトのマルウェア対策エンジンに悪意のあるファイルをスキャンさせることで、リモートでコードを実行させることができるという問題です。

 マイクロソフトのマルウェア対策製品が最新の状態に更新されていれば、脆弱性は解消しています。エンジンのバージョンが「1.1.13704.0」以降であれば、脆弱性はありません(画面6)。別々の脆弱性問題に関係するエンジンのバージョンと定義ファイルのバージョン、念のため確認しておくことをお勧めします。

画面6
画面6 マイクロソフトのマルウェア対策製品を使用している場合は、エンジンのバージョンが「1.1.13704.0」以降であること(別の脆弱性問題の対策版)、ウイルス対策の定義が「1.243.302.0」以降(今回のランサムウェア対応版)であることを確認

 Windows 8以降にはWindows Defenderを標準搭載されていますが、他のマルウェア対策製品を使用している場合は影響しないので問題が解消されているかどうかを心配する必要はありません。Windows Defenderが無効になっている場合、エンジンや定義の更新プログラムは提供されません。

最新情報(2017年6月14日追記)

 サポートが終了したWindows向けに、2017年6月に新たに多数のセキュリティ更新プログラムが提供されています。Windows Updateで自動配布されることはなく、1つずつ手動でダウンロードして、インストールする必要があります。


筆者紹介

山市 良(やまいち りょう)

岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(Oct 2008 - Sep 2016)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。マイクロソフト製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows Server 2016テクノロジ入門−完全版』(日経BP社)。


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