Office 2016の新機能が見当たらない? ライセンスと更新チャネルの話:その知識、ホントに正しい? Windowsにまつわる都市伝説(84)(3/3 ページ)
最新のMicrosoft Officeのデスクトップアプリには、新機能がちょくちょく追加されます。2016年12月に追加された新機能「アイコンの挿入」を使おうとしたら見当たらない……。これに関連するOffice 2016のライセンスと更新チャネルの話で、煙に巻かれないようにご注意を。
Office 365 ProPlusの更新チャネルを変更するには?
Deferred Channelは、企業向けのOffice 365サブスクリプションのプランで提供されるOffice 365 ProPlusの既定の更新ブランチです。Office 365 Businessの既定はCurrent Channelです。それ以外のOffice 2016製品も、Current Channelであると考えてください。
Office 365のテナントの管理者は、管理者向けのポータル「Admin Center」というを使用して、ユーザーが「Office 365ポータル」からOffice 2016を取得して、インストールする際の、更新ブランチを構成することができます。
管理者は、「Admin Center」の「設定」→「サービスとアドイン」→「Officeソフトウェアのダウンロード設定」で、「毎月(期間内チャネル)」または「4カ月ごと(延期チャネル)」(既定)のいずれかを選択して、組織内の更新チャネルをCurrent ChannelまたはDeferred Channelに設定します(画面7)。
画面7 Office 365の管理ポータル(Admin Center)では、新規インストール用の更新チャネルとしてCurrent ChannelとDeferred Channelのいずれかを構成できる
以前のポータルである「Office 365管理センター」を使用する場合は、「サービス設定」→「更新」の「新機能と更新プログラム」で設定するのですが、Current Channelを構成することはできません。既定の「標準」はDeferred Channelのことであり、もう1つの「先行リリース」はFirst Release for Deferred Channelを組織全体またはユーザーごとに構成するオプションになります(画面8)。名称に統一感がないのは、Office 2016の更新チャネルの名称が変更されたことや、日本語訳の影響もあると思います。
画面8 Office 365の以前のポータル(管理センター)では、新規インストール用の更新チャネルとしてDeferred ChannelとFirst Release for Deferred Channelのいずれかを構成できる
「Office 2016 Deployment Tool」を使用すると、企業内の配布ポイントにOffice 2016のインストールソースを配置して、クライアントPCにOffice 2016を配布したり、更新バージョンを配布したりできます。
Office 2016 Deployment Toolの構成ファイル(Configuration.xml)の中で、Current Channel、Deferred Channel、First Release for Deferred Channelのいずれかの更新チャネルを指定することが可能です。Office 365 ProPlus以外のOffice 2016(永続ライセンスを含む)もこの方法で更新チャネルの構成が可能です。
どの更新チャネルでインストールされた場合でも、インストール後にOffice 2016管理用テンプレートを使用して、「グループポリシー」または「ローカルコンピューターポリシー」で更新チャネルを変更することができます。Office 365 ProPlus以外のOffice 2016(永続ライセンスを含む)もこの方法で更新チャネルの切り替えが可能です。
Office 365 ProPlusで、既定のDeferred ChannelからCurrent Channelに切り替える別の方法としては、以下のサポート技術情報に説明されている、「Easy Fit」の実行またはレジストリの編集で行う方法があります。
【重要】2017年秋、Office 365の更新チャネルの名称とタイミングが変わります
Office 2016のDeferred ChannelおよびFirst Release for Deferred Channelはこれまで、おおむね4カ月ごとのサイクルで新バージョンが提供されてきました。これが、2017年9月から、半年ごとのサイクルに変更されます。
先日、これまで年に複数回(実績は年に2回)とされていたWindows 10の機能更新のリリースを、次のWindows 10 Fall Creators Updateから年に2回のサイクルに固定化し、Current Branch向けには3月と9月にリリースされることが発表されました。この変更には、Windows 10とOffice 365 ProPlusの更新サイクルをそろえることも含まれます。
2017年9月からは、Office 2016のCurrent Channel、Deferred Channel、First Release for Deferred Channelの名称が、それぞれ「Monthly Channel」「Semi-annual Channel(Broad)」「Semi-annual Channel(Pilot)」に変更されることも発表されました。
3月と9月にリリースされるのはSemi-annual Channel(Pilot)、現在のFirst Release for Deferred Channel)向けです。Semi-annual Channel(Broad)、現在のDeferred Channel向けには、その4カ月後の同年7月と翌年1月にリリースされます。Office 2016に関しては2度目の更新チャネルの名称変更に加え、見慣れない英単語に戸惑う人も多いでしょう。筆者の解釈が正しいかどうか自身はありませんが、以下の図1のようにWindows 10とOffice 2016の更新チャネルがそろえられるようです。
マイクロソフトはこの変更の理由をユーザーからのフィードバックに答え、更新プロセスの簡素化を図るためと説明していますが、どうなのでしょうか。少なくとも、英語が苦手な人には、更新チャネルの名称だけ見ても頭が痛くなりそうです。
そして、更新チャネル名の日本語は、いったいどうなるのでしょうか。これまでの更新チャネルの日本語の名称もどうかしていましたが、新しい名称の日本語訳はどうなるのでしょう。ちょっと怖くもあり、楽しみでもあります。「毎月」「半年ごと(パイロット)」「半年ごと(組織全体)」のようになるのでしょうか。
また、これまでWindows 10の既定はCurrent Branchで、HomeとLTSB(Long Term Servicing Branch)を除く、Pro/Enterprise/EducationはCurrent Branch for Businessに変更可能という考えも改めた方がよいかもしれません。
まず、Windows 10 HomeとWindows 10 Pro/Enterprise/Educationは分けて考えるべきです。Windows 10 Anniversary Update(バージョン1611)以降、Windows Update for Businessを使用して、Current BranchとCurrent Branch for Businessを細かく制御(更新の延期や一時停止)できるようになっています。
Windows 10 Homeは常に最新ビルドを実行するCurrent Branchですが、Windows 10バージョン1611以降はWindows Update for Businessにより、Current Branchで複数のビルドをサポートすることができるのです。
筆者が書いたものを含め、「サービスとしてのWindows(Windows as a Service)」やOffice 2016の更新に関する記事やドキュメントは、書かれた時期を意識してください。その知識、もう古すぎて役に立たないかもしれません。
注意
この記事を2017年後半や2018年以降に読んでいる方へ。この記事はもう古すぎてあなたの役には立たないかもしれません。
最新情報(2017年7月28日追記)
2017年7月27日(米国時間)、Windows 10 バージョン1703のCBB向けリリースが発表されました。リリース情報としては、今回のリリースから「Semi-Annual Channel」という表記と概念に変更になっています。
新しい概念ではCBが「Semi-Annual Channel(Targeted)」(以前の発表時には(Pilot)でしたが変更されました)、CBBが「Semi-Annual Channel」(以前の発表時にあった(Broad)という表記は削除されました)。
なお、Windows 10のUIやグループポリシー設定は以前のCB/CBB表記のままです。また、Windows 10 バージョン1703のSemi-Annual Channel向けリリースの発表と同時に、Windows 10 バージョン1511のサポートが「2017年10月10日」に終了することが発表されています。
- Windows as a service: Simplified and Aligned[英語](Microsoft Windows for IT Pros)
- Overview of Windows as a service[英語](Microsoft Windows IT Center)
最新情報(2017年8月28日追記)
2017年8月23日にリリースされたWindows 10 Insider Previewのビルド「16273.1000」のポリシー設定において、従来のCB/CBB表記から「半期チャネル(ターゲット)」「半期チャネル」(英語版では「Semi-Annual Channel(Targeted)」「Semi-Annual Channel」)の表記に変更されていることを確認しました。ただし、これはWindows 10 Fall Creators Updateに向けた開発中のプレビュービルドであり、さらに変更される可能性もあります。
筆者紹介
山市 良(やまいち りょう)
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(Oct 2008 - Sep 2016)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。マイクロソフト製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows Server 2016テクノロジ入門−完全版』(日経BP社)。
関連記事
- Windowsで起動時に自動実行される不要なプログラムを「見つける」方法
アプリケーションのインストールなどを繰り返していると、いつのまにかWindowsの起動時に自動実行されるプログラムが増殖する。これらを確認するには、Windows 2000なら[コンピュータの管理]を、Windows XPなら[システム情報]を使う。またWindows XPでは[システム構成ユーティリティ]で削除指定ができる。 - Windowsのsvchost.exeプロセスとは? ―sc.exeでサービスをコマンドラインから制御する―
リッスンしているネットワーク・ポートを調べていると、svchost.exeというプロセスが所有者となっていることがよくある。svchost.exeは、ネットワーク関連の基本的なサービスを起動するための親となるプロセスであり、いくつかのグループに分けてサービスを起動している。scコマンドを使うと、サービスをコマンド・プロンプトから制御することができる。 - Windows 10のWindows Updateサービスを停止しようと考えている方へ
Windows 10のWindows Updateは、以前のWindowsから大きく変わりました。Windows 10になってからも変更は続いています。半ば強制的なWindows Updateに対抗する最終手段は「Windows Updateサービス」の無効化ですが、どうしてもというなら、影響を知った上で一時的に無効化するのがよいでしょう。 - Windows 10初期リリース(1507)のサービス終了のお知らせ
マイクロソフトは2017年4月12日(日本時間、以下同)、当初の予定通り、Windows Vista(Service Pack 2)に対する全ての製品サポートを終了しました。次にサポートが終了するのはWindows 7ですが、まだ3年もあると思っていませんか。それよりも前に、セキュリティ更新提供が終了するWindows 10があります。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.