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Windows 10にアップグレードする前の事前評価企業ユーザーに贈るWindows 10への乗り換え案内(3)(2/2 ページ)

本連載では、これからWindows 10への移行を本格的に進めようとしている企業/IT管理者向けに、移行計画、展開、管理、企業向けの注目の機能について解説していきます。今回は、Windows 10へのアップグレード前の事前評価に利用できる「Windows Analyticsサービス」を紹介します。

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旧バージョンからの移行の場合は、事前評価が重要

 Windows 10のアップグレードプロセスは簡素化されましたが、ハードウェアやアプリケーションの互換性問題など、アップグレードによる影響については事前に評価することが重要です。

 Windows 10のあるバージョンから次のバージョンにアップグレードする場合とは異なり、Windows 7 SP1やWindows 8.1からのアップグレードでは、特定のハードウェアの存在がアップグレードを阻害したり、アップグレードによって特定のアプリケーションが利用できなくなったりする可能性があります。

 さらに、Windows 10で削除されるOSの機能についても考慮する必要があります。業務が特定のOSの機能に依存している場合、Windows 10へのアップグレードでその機能がサポートされなくなると、業務に直ちに影響してしまいます。事前評価は、Windows 10にアップグレードしないと判断するためにも重要です。

 Microsoftは企業におけるWindows 7 SP1およびWindows 8.1からWindows 10へのアップグレードを支援するため、「Windows Analytics」というクラウドベースのサービスを無償提供しています。このサービスは、Windows 10 Anniversary Updateに合わせ、プレビュー提供が開始されたものです(当時の名称は「Windows Upgrade Analytics」でした)。

 Windows Analyticsは「Upgrade Readiness」と「Update Compliance」の2つのサービスで構成され、Upgrade Readinessは2017年3月から正式版となりました。Upgrade Complianceは現在、パブリックプレビューとして提供中です。

 Upgrade Readinessは、アップグレード対象のWindowsから収集したテレメトリーデータを分析し、アップグレードの準備状態に関するレポートと問題の報告、推奨情報を提供します(画面2)。Windows 10にアップグレード後は、Upgrade Complianceを使用して、Windows 10の品質更新や機能更新の状況を追跡することができます。

画面2
画面2 Windows AnalyticsのUpgrade Readinessを使用すると、OMSワークスペース上でWindows 10へのアップグレード準備状況を事前評価できる

 なお、Upgrade Readinessを利用するには、「Microsoft Operations Management Suite(OMS)」にサインアップする必要があります。OMSは、Windows ServerやLinuxにエージェントを展開してログを収集し、可用性やパフォーマンスを監視、分析する「Log Analytics」を中心に、プロセスの自動化やバックアップ、災害復旧対策、セキュリティ監視などの機能を備えており、単一のOMSワークスペースを用いたオンプレミスとクラウドの集中的な管理を可能にするクラウドサービスです。OMSには無料(Free)プランが用意されており、Windows Analyticsは無料プランで利用することができます(画面3)。

画面3
画面3 OMSにサインアップ(無料プランあり)して、新規または既存のOMSワークスペースにWindows Analyticsサービスを追加する。Windows Analyticsサービスの利用は無料

 Upgrade Readinessを利用するには、アップグレード対象とするWindows 10のバージョンを指定し(画面4)、ダウンロードしたUpgrade ReadinessスクリプトをクライアントPC上で実行するだけです(画面5)。

画面4
画面4 アップグレード先のWindows 10のバージョンを選択する。現時点の推奨はCurrent Branch for Business(CBB)で最新のWindows 10 バージョン1607
画面5
画面5 Windowsから広範囲のテレメトリーデータを収集するために、Upgrade Readinessスクリプトを実行する。グループポリシーを利用可能して自動実行させることも可能

 テレメトリーデータはクラウドにアップロードされ、その分析結果は24時間以内にOMSワークスペースにレポートされます。Upgrade Readinessスクリプトを少数のクライアントPCに手動で実行し、問題がなければグループポリシーなどを利用して、社内のクライアントPC全体に展開します。

オンプレミスの管理サーバが不要になる、システム管理のクラウド化

 これまで、Microsoftはシステム管理ツールとして「System Center」製品群を提供してきました。企業におけるクラウド利用が進むのに合わせて、System Center製品にはパブリッククラウドサービスの「Microsoft Azure」を中心に、オンプレミスだけでなく、クラウド上のインスタンスやアプリケーションを管理する機能が追加されました。

 一方、Microsoftはオンプレミスのシステム管理基盤を必要としない、クラウドベースの管理サービスの提供も始めています。OMS(無料と有料プランあり)や「Microsoft Intune」(有料)」といったサービスです。Windows Analyticsのように、Microsoft Operating Management Suiteには新しい管理機能が次々に追加されます。

 企業のクラウド利用は進んでいますが、クラウドに向かないもの(例えば、専用ハードウェアが必要、クラウドの方がコスト高、法規制の関係など)は確かに存在します。システム管理系については、クラウドをうまく活用することで、オンプレミスの基盤を身軽にできるでしょう。オンプレミスの既存のSystem Center基盤がある場合は、OMSやMicrosoft Intuneで機能を拡張することもできます。

筆者紹介

山市 良(やまいち りょう)

岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(Oct 2008 - Sep 2016)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows Server 2016テクノロジ入門−完全版』(日経BP社)。


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