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なぜ「FPGA」が必要なのか? そもそも「FPGA」はITインフラにどんなメリットをもたらすのか?これは「ガラケーからスマホへ」と同じレベルの変革だ

あらゆるモノがネットワークにつながり、データを生成し、それを解析して新たな知見を生み出す「データ中心型社会」が到来している。ITに求められる役割も、既存システムの効率化やコスト削減だけではなく、「新たな事業を創造し、ビジネスを躍進させるため」の役割が期待される。そのカギとなるのが「FPGA」だ。データセンターの革新になぜ「FPGAが必要」なのか。技術者にとって、「そもそもFPGAはどんなメリットをもたらす」のか。キーパーソンに聞いた。

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 PCやスマートフォンはもちろん、自動車や家電、センサー類や工場の機器類、交通・社会システムに至るまで、ありとあらゆるモノがデータを生み出す「データ中心型社会」の時代が到来している。

 そうして生成された莫大な量のデータを解析して得られた知見で「どんな差別化を図れるかどうか」が、今後の企業の生き残りを左右することになる。そんなデータ中心型社会を前に、ITに求められる役割も変化しつつある。それは「ITは既に経営基盤である」ということだ。これまで求められていた既存システムの効率化やコスト削減だけではなく、IT、同時にIT技術者には、明確に「新たな事業を創造し、ビジネスを躍進させるため」の役割が期待される。

 それは私たちの会社だけではない。長年にわたり、サーバやクラウド向けに先端ITを実現するためのハードウェアを提供してきたIT業界大手のインテルも、その1社だ。インテルというと、PCやサーバ向けの「CPU」のイメージが強いかもしれない。だが同社は私たちに先んじて、デバイスからネットワーク、クラウドやデータセンターに至るまで、データに関わる分野の全てをカバーする「データカンパニー」への変革を果たし、来たる「データ中心型社会」を支えようとしている。

 このデータ中心型社会の実現に向けて技術者が押さえるべきキーワードが「FPGA(Field Programmable Gate Array:後からでも回路を書き換えられる集積回路/ロジックデバイス)」だ。

 なぜFPGAなのか。そもそもFPGAとは何か。これまでのITをどう変革させるのか──。これからのITを担う技術者やユーザーに向けて「なぜ、FPGAが必要なのか」の理由、「そもそもFPGAは何で、どんなメリットをもたらしてくれるのか」の基礎をFPGAの変革を推進しているキーパーソンに聞いた。

なぜ、FPGAが必要なのか──インテルが注力するFPGAソリューションの4領域

photo 日本アルテラ(インテル プログラマブル・ソリューションズ事業本部) アクセラレーション&データセンター ビジネスデベロップメント・マネージャーの山崎大輔氏

 FPGAは、ハイパフォーマンスで汎用的だが、それだけに時として冗長な処理を強いられる「CPU(Central Processing Unit:中央演算処理装置)」や、特定の目的に最適化されているが、一度焼き込んだら変更が利かない「ASIC(Application Specific Integrated Circuit:特定用途向けの集積回路)」の課題を補い、変革スピードが激しいデータ中心型社会に求められる「パフォーマンス」と「柔軟性」の双方を実現すると期待されている技術だ。インテルは今、このFPGAをより手軽に、より多くの人が活用できるようにすることで「新たな世界」を切り開こうとしている。

 インテルのグループ企業である日本アルテラ(インテル プログラマブル・ソリューションズ事業本部)でアクセラレーション&データセンター ビジネスデベロップメント・マネージャーを務める山崎大輔氏は、「あらためて強調するまでもないほど、この10年で私たちを取り巻くIT環境は激変しました。クラウドサービスが当たり前のように使われるようになり、スマートデバイスはもちろん、身の回りのさまざまな“モノ”をつないでデータを収集し、そこから抽出した知見を活用して新しいサービスを生み出すといった具合に、ITとデータの力を活用した経営が求められるようになっています」と、FPGAが必要とされるようになる前段階の背景を説明する。

 Cisco Systemsの「Cisco Visual Networking Index Traffic Forecast」によると、2020年には500億ものデバイスがインターネットにつながり、それらが年間2300エクサバイト(1EB≒100万TB)ものデータを生み出すようになると予測されている。そんな変化に対応するには、パフォーマンスはもちろん、市場ニーズの変化に応じて即座に方向性を変えられる柔軟性を、より低いコストで、また低い消費電力で実現するIT基盤が必須。そして、これからの技術者にはそんな基盤を考え、扱う役割が求められる。

photo 2020年には500億ものデバイスがインターネットにつながり、それらが年間2300EBもの量のデータを生み出すようになる

 その需要にぴったりとハマるのがFPGAということになる。

photo インテルはデータカンパニーとして、4つの領域でFPGAソリューションを推進していく

 例えば「データセンター」領域には、サーバに差せば使えるアクセラレーションカードの形でFPGAソリューションを提供する。これらのカードは1:1のCPUアクセラレーターとしてのみならず、プールされたアクセラレーター群として、さまざまなタスクのアクセラレーションを可能にする。

 2つ目の「モノ」「IoT」の領域には、小さなフォームファクターのデバイスに内蔵でき、柔軟に書き換えが可能なFPGAの特徴を生かした製品を用意する。専用のデバイスを都度作り込むのではなく、日々進化するアプリケーションに合わせて拡張していける「新世代のモノ」を実現できる。

 3つ目は、データセンターとモノとをつなぐ「コネクティビティー」「ネットワーク通信」の領域。もともとこの領域では広くFPGAが採用され、ネットワークやセキュリティアプライアンスで活用されてきた経緯がある。しかし2017年9月現在、こうしたアプライアンス型の製品は、汎用のIAサーバと仮想化基盤、ソフトウェアを組み合わせて、トラフィックの増減や内容に応じて柔軟に制御を行う「NFV(Network Functions Virtualization)」に移行しつつある。FPGAは、柔軟かつ高速な処理が求められる新しいネットワーク環境であるNFVのニーズにぴったりとマッチする。

 最後は、得られたデータを解析する「ビッグデータ」「AI」の領域だ。ここでは大量のデータを収集し、並べ替え、解析し、必要なときに的確な結果を引き出す一連の処理を高速に行うことがキモとなる。FPGAは、この需要を「より低消費電力」で実現できる。

 「現在の社会の課題、今後急増するデータの処理や電力の問題をどうするかというところに、インテルのFPGAは“これまでになかった新しいソリューション”を提供します。これからFPGAを使う人には“手軽に使える形”で、既に使っている人には“それを加速する”形で、FPGAによる新たなソリューションやエコシステムを用意する計画です」(山崎氏)

FPGAボードを差せば「サーバが冷える」? FPGAがもたらす“目からウロコ”の利点とは

 あらためて、なぜ「今、FPGAが求められている」のだろうか。FPGAには、従来のCPUやGPU(Graphics Processing Unit)、ASICでは実現が難しかった、明確な特長があるからだ。

 1つ目は「フレキシブルさ」。FPGAはハードウェアでありながら、開発元が提供するさまざまなIP(Intellectual Property)を組み合わせてカスタマイズすることで、ソフトウェアのように回路をどんどん書き変えることができる。例えばFPGAを搭載した同じハードウェアを、あるときにはビッグデータ解析で、あるときにはNFVとしてセキュリティ制御に、またあるときには仮想ストレージとして活用できる。リソースの最適化に大きな効果をもたらすだろう。

 2つ目は、言わずと知れた「パフォーマンスの高さ」だ。今や一般的なサーバでも10GbpsのNICを搭載する時代であり、扱うデータ量はみなさんもご存じの通り、日々爆発的に増えている。それらを集約するデータセンター、それらをつなぐネットワークには、さらに高い帯域と性能が求められるのは想像に難くない。FPGAはこの爆発的に増加するトラフィックの確保にも大きく貢献する。

 「CPUで処理できるのは1ポート当たり10Gbpsくらいのワークロード。それに対してFPGAならば、2017年8月時点でも200Gbps以上の帯域を扱えます」(山崎氏)

 3つ目は「低遅延性」だ。今やサービスの応答速度はユーザー満足度へ、つまり、売上に直結する。また、一般ユーザーへの遅延だけならばまだしも、IoTやマシン同士がつながる環境で予想外の大きな遅延が発生すると、システム停止や故障につながる上、最悪の場合、安全性を損ねる恐れもある。

 この点、FPGAはあらかじめロジックが組み込まれている特性がある。必ず一定/固定の速度で応答が返ってくる。ここが、リソースに余裕があれば速いが、ビジーになるととたんに遅延が生じるCPUとの大きな違いだ。

 「FPGAでは常に一定のスピードで応答が返ってきます。あらかじめ安全性を設計できるのです」(山崎氏)

 4つ目は「低消費電力」。FPGAはこうした性能を格段に低い消費電力で実現する。用途に応じて最適化し、アセンブラー命令を効率的に実行できるよう設計を済ませれば、回路のうち活性化される領域を少なくでき、総じて発熱量も抑えられる。処理サイクル数もCPUやGPUに比べて少なくなるため、その分クロック数も落とせる。結果として、消費電力を低く抑えられる。

 「FPGAボードを差すだけで、サーバは冷えます。これまでCPUで処理していた分をFPGAへオフロードできるので、全体として消費電力を下げられます。また、余裕ができた分を他の用途に活用することもできるようになります」(山崎氏)

 実際、FPGAをAI向けに最適化する「インテル® ディープラーニング・アクセラレーター(DLA)ライブラリー」を活用した実証実験では、CaffeやTensorFlowといったディープラーニング向けフレームワークでの処理が大幅に高速化された一方で、消費電力効率は「平均で5倍」向上したという。

photo FPGAを活用すれば、CaffeやTensorFlowといったディープラーニング向けフレームワークでの処理が大幅に高速化される一方で、消費電力効率は「平均で5倍」も向上する

汎用ボードと共通化されたフレームワークで、FPGAを「プラットフォーム化」することで得られるメリット

 2015年末にアルテラ・コーポレーションがインテルの一事業部となって以来、優れた設計柔軟性と高い性能を低消費電力で提供するFPGAを、インテルの資産であるCPUやメモリといった他の事業と組み合わせて、より使いやすい形で提供すべく取り組んできた。

 それを具体化した新製品が登場する。サーバ向けドーターボード「インテル® プログラマブル・アクセラレーション・カード(インテル® PAC) インテル® Arria® 10 GX FPGA搭載版(以下、インテル® PAC)」だ。

 ハードウェアとしては、このインテル® PACをサーバに追加するだけで、FPGAがもたらす柔軟性、パフォーマンス、低遅延性、低消費電力のメリットを手軽に享受できるようになる。具体的には、NFVに代表される仮想ネットワークの処理やビッグデータ解析、AIといったデータ社会を支えるアプリケーションを、より高速に、低電力で活用できるようになる。「サーバに差すだけ」がキモだ。

photo サーバ向けのFPGAボード「インテル® プログラマブル・アクセラレーション・カード(インテル® PAC) インテル® Arria® 10 GX FPGA搭載版」

 インテル® PACには、技術者のFPGA利用のハードルを下げるだけでなく「FPGAを活用したエコシステムを広げる」という重要な役割もある。

 これまで、FPGAの量産向けボードはサードパーティーが独自に担うことが多かった。このために、例えば「PCI Expressのどのピンをどの信号に割り当てるか」といった設計仕様は、パートナーによって、また、使うプロジェクトによって異なるものだった。

 これに対してインテル® PACでは、中の設計はもちろん、I/Oとアクセラレーターをつなぐ部分まで全て規格化した「汎用カード」として提供していく。これにより、誰が作ったIPでも、上位のアプリケーション・ソフトウェアとの間で同じように通信できるようになる。そのためのドライバーやライブラリーも提供される。

 「フレームワーク全体を共通化することがポイントです。ユーザーは“実現したいこと”だけに注力できるようになります」(山崎氏)

 これはあらためてどういうことか。山崎氏は「理解しやすいように」独自の例えでこう表現した。

 「携帯電話で例えると、これまでの従来型携帯電話(ガラケー)から“スマホに進化した”ようなイメージです。これまではFPGAはデバイス単位でご検討いただくことが多かったのですが、今回、インテル® PACという汎用的なプラットフォームが用意されたことで、ボードを通じてさまざまなIPを開発し、選べるようになりました。FPGAにとって、大きな変革です」(山崎氏)

 これまでは、あるプロジェクト向けに開発したFPGAソリューションを、別のプロジェクトでも使用するためには、搭載するボードに合わせたカスタマイズが必要だった。しかしFPGAとフレームワークが共通化されていれば、開発したIPは共通ソリューションとして世界中のどの顧客に対しても提供できる。

 「これは開発者にとって大きなメリットです。一方のユーザーもインテル® PACがあればビッグデータ用、AI用、NFV用といった具合に自由にIPを選び、ダウンロードするだけで使えるようになります」(山崎氏)

photo 汎用的なFPGAカードの上で、インテルやサードパーティー、さらにはユーザー自身が開発したさまざまなIPをダウンロードし、柔軟に活用できる世界が実現する

 しかも、これまでアルテラが「OpenCL*」で蓄積してきたFPGA開発のノウハウに、インテルが強みとしてきたオーケストレーションや中間ライブラリの領域の知見を組み合わせることで、FPGAからOpenCL*を介し、API、ユーザーのアプリケーションまでをつなぎ、ハードウェアに強いエンジニア、ソフトウェアに強いエンジニア、それぞれの強みを生かした開発が可能になる。

あらゆる技術者が得られる成功の鍵の1つが「FPGA」である

 もう訪れる「データ中心型社会」時代では、いかに多くのデータを、いかに素早く、いかに低コストかつ低消費電力で処理できるかが企業の将来を左右する。

 インテルが進めるFPGA戦略は、フレームワークを共通化することでユーザーの利便性を上げつつ、FPGAソリューションを提供するパートナーにも大きなビジネスチャンスをもたらすものとなっている。そのどちらの立場の技術者であっても、アプリケーションを高速かつ低消費電力で処理し、日々の需要に合わせて柔軟に書き換えていけるというFPGAの特長をうまく生かすことで、これまでにない価値を作り出すことができる。それらが、あらゆる技術者、あらゆる企業が今後押さえるべき成功の鍵の1つが「FPGAにある」と提言できる理由だ。

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提供:インテル株式会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2017年11月10日

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