【トレースフラグ 1117】──ファイルグループ内の全データファイルを同時に拡張する:SQL Serverトレースフラグレファレンス(18)
「Microsoft SQL Server」が稼働するデータベースシステムを運用する管理者に向け、「トレースフラグ」の活用を軸にしたトラブル対策のためのノウハウを紹介していきます。今回は「トレースフラグ1117の詳細と使い方」を解説します。
本連載では、「Microsoft SQL Server(以下、SQL Server)」で発生するトラブル対策を踏まえた「SQL Serverのトレースフラグ」の使いこなしTipsを紹介していきます。
今回は「トレースフラグ1117」の詳細と使い方を解説します。
トレースフラグ1117は、ファイルグループ内の全データファイルを同時に拡張する設定です。SQL Server 2014までのバージョンに対応します。
SQL Serverでは、「ファイルグループ」単位に、テーブルなどのオブジェクトやデータファイルを関連付けます。既定値では「プライマリファイルグループ」というファイルグループに、データファイルが1つだけ存在しています。プライマリファイルグループに新しくデータファイルを追加することも、ファイルグループを新しく作成することもできます。
ファイルグループにデータを挿入する動作は次のようになります。まずは空き容量のあるデータファイルに格納し、ファイルグループ内で全てのデータファイルの空き容量がなくなるとデータファイルの拡張が発生します。
既定のファイル拡張では1つのデータファイルだけを拡張します。このため、その後の全てのデータ挿入を拡張したデータファイルに格納した場合、負荷が1つのファイルに集中してしまいます。
トレースフラグ1117を有効にすると、ファイル拡張時にファイルグループ内の全てのデータファイルを同時に拡張するため、その後のデータ挿入が全てのデータファイルに分散します。
SQL Server 2016からはトレースフラグではなく、ALTER DATABASEコマンドのAUTOGROW_ALL_FILESを使用して拡張を制御するように変更されました。SQL Server 2016ではトレースフラグ1117の効果はありません。
設定可能なスコープ
ファイル拡張が発生したタイミングで効果を発揮するため、スタートアップか、グローバルスコープで設定することを推奨します。
設定方法 | 可/不可 | 要/不要 |
---|---|---|
スタートアップ | ○ | − |
グローバルスコープ | ○ | − |
セッションスコープ | ○ | − |
クエリスコープ | × | − |
トレースフラグ 3604/3605 | − | 不要 |
動作例
同じサイズのデータファイルを2つ用意してデータを挿入します(tempdb.mdf、tempdb2.ndf)。トレースフラグ1117を有効にしていない状況では、データファイルの空き容量がなくなると、tempdb.mdfだけが1024から1128へと拡張しました。この状態で新しいデータが追加挿入されると、tempdb2.ndfには空き容量がないため、全てtempdb.mdfにデータが挿入されて負荷が偏ってしまいます(図1)。
トレースフラグ1117を有効にすると、空き容量がなくなったタイミングで、tempdb.mdfとtempdb2.ndfの両ファイルとも拡張されました。どちらのファイルにも空き容量が存在し、以降のデータは分散して挿入されます(図2)。
筆者紹介
内ヶ島 暢之(うちがしま のぶゆき)
ユニアデックス株式会社 NUL System Services Corporation所属。Microsoft MVP for Data Platform(2011〜)。OracleやSQL Serverなど商用データベースの重大障害や大型案件の設計構築、プリセールス、社内外の教育、新技術評価を担当。2016年IoTビジネス開発の担当を経て、現在は米国シリコンバレーにて駐在員として活動中。目標は生きて日本に帰ること。
椎名 武史(しいな たけし)
ユニアデックス株式会社所属。Microsoft MVP for Data Platform(2017〜)。入社以来 SQL Serverの評価/設計/構築/教育などに携わりながらも、主にサポート業務に従事。SQL Serverのトラブル対応で社長賞の表彰を受けた経験も持つ。休日は学生時代の仲間と市民駅伝に参加し、銭湯で汗を流してから飲み会へと流れる。
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