ユーザーの「無知」は罪なのか?:「訴えてやる!」の前に読む IT訴訟 徹底解説(53)(1/3 ページ)
不整合データを提供しておきながら、システムが動作しないとベンダーを訴えたユーザー企業。彼らに勝ち目はあるのか?――IT訴訟事例を例にとり、システム開発にまつわるトラブルの予防と対策法を解説する人気連載。今回は「ユーザーの協力義務違反」を考える。
IT導入における「ユーザーの協力義務」とは
本連載で何度か取り上げてきたように、IT導入プロジェクトのユーザーには「協力義務」が発生する。
ユーザーはITを開発するベンダーやクラウドサービスの業者などに、「欲しい機能をしかるべき時期までに明確に示さなければならない」し、「IT導入対象となる業務や新しいシステムが接続することになる既存のインタフェースなどの情報を、同じくしかるべき時期までにベンダーに提供しなければならない」。「受け入れテストの実施」はもちろん、必要があれば「それに使用するテストデータをユーザーが準備しなければならない」場合もある。
ユーザーがこれらの協力を行わなかったがためにIT導入プロジェクトが失敗したら、「ユーザーの協力義務違反」となり、発生した損失をユーザー自身が被らなければならないこともある。
IT導入プロジェクトで、ユーザーは単なる「お客さま」ではなくベンダーと共に作業を行う「パートナー」であるといわれるのは、こうしたことによる。
しかし「これらの協力義務の遂行は多くのユーザーにとって荷が重い」というのも事実である。
「システムの要件を示せ」といわれても、「そもそも要件とはどういうもの」で、「どのように書けば要望を正しく反映したシステムを実現できるのか」、素人であるユーザーには分かりにくい。各種の情報提供やテストについても、ITを本業としていないユーザーは分からないことが多いだろう。
世のIT紛争の中には、ユーザーが「協力義務違反」を問われて裁判に負ける例がたくさんある。しかしそれは、どのような状況においても当てはまるものなのだろうか。
いついかなるときもユーザーの「無知は罪」であり、ベンダーは何の落ち度もないのだろうか。
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