SQL Serverが一時的にログインできない(処理遅延):SQL Serverトラブルシューティング(68)(2/2 ページ)
本連載では、「Microsoft SQL Server(以下、SQL Server)」で発生するトラブルについて、「なぜ起こったか」の理由とともに具体的な対処方法を紹介していきます。今回は「SQL Serverが一時的にログインできない」場合の解決方法を解説します。
解決方法
max worker threadsの規定値はMicrosoftのドキュメントにまとまっています(*1)。例えば64bitの16コア環境では、上限値は704です。
ここで気を付ければならないのはワーカースレッドの上限です。図1で示したProcess: Thread Countsの値ではありません。Process: Thread Countsの値はワーカースレッド以外のシステムスレッドやWindows OSのサービスと通信するためのスレッドなどが含まれており、ワーカースレッドの上限以上の値になっていることがあります。
スレッド数の超過を監視しようと思っても、本当にSQL Serverの上限に達しているかどうかはパフォーマンスカウンターからは分かりません。
ワーカースレッドの正確な数を把握したい場合は、sys.dm_os_schedulersというDMV(動的管理ビュー)を使って確認できます(図3)。
このDMVでcurrent_workers_count列を確認すれば、スケジューラー(SQL OS内でスレッドやタスク制御を行い、どのCPUコアに割り当てるかなど管理している)ごとのワーカースレッド数が分かります(*2)。
(*2) 表示項目の詳細はMicrosoftのドキュメントを参照。sys.dm_os_schedulers (Transact-SQL)
スケジューラーはSQL Serverが認識しているCPUコア数に応じて作成されますが、システム用のスケジューラーやDAC(管理者専用接続)向けのものなどが存在します。
今回のケースでは上限値を増やすことで現象を回避できました。ただし、メモリサイズには気を付けなければなりません。64bit版のSQL Serverではスレッド1つ当たり、2MB消費します。1000スレッド立ち上がればそれだけで2GB消費します。最大数になったときのメモリ消費量を概算し、現在のメモリに余裕があるかどうか確認してからパラメータを変更しましょう。
この他、過度な並列処理を実行したことによるスレッド増加であれば、遅延しているクエリが存在している可能性が高いといえます。トレースを採取して実行プランを調べ、クエリチューニングを試みてください。
「スレッド枯渇によりクエリ実行やログインができない」場合の解決方法
- SQL Serverでmax worker threadsの値を増やす
- おおよその目安を知るためにパフォーマンスカウンターからスレッド数を監視する
- 遅くなっているクエリを探し、過度な並列実行がボトルネックになっていないか確認する
筆者紹介
内ヶ島 暢之(うちがしま のぶゆき)
ユニアデックス株式会社 NUL System Services Corporation所属。Microsoft MVP for Data Platform(2011〜)。OracleやSQL Serverなど商用データベースの重大障害や大型案件の設計構築、プリセールス、社内外の教育、新技術評価を担当。2016年IoTビジネス開発の担当を経て、現在は米国シリコンバレーにて駐在員として活動中。目標は生きて日本に帰ること。
椎名 武史(しいな たけし)
ユニアデックス株式会社所属。Microsoft MVP for Data Platform(2017〜)。入社以来 SQL Serverの評価/設計/構築/教育などに携わりながらも、主にサポート業務に従事。SQL Serverのトラブル対応で社長賞の表彰を受けた経験も持つ。休日は学生時代の仲間と市民駅伝に参加し、銭湯で汗を流してから飲み会へと流れる。
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