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【USB】第3回 USBの充電仕様「USB Battery Charge」とはITの教室(1/2 ページ)

USBの充電仕様には、独自仕様も含め、さまざまなものが提供されている。第3回では、そのうち「USB Battery Charge Rev.1.2」を中心に、充電仕様を解説する。

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「ITの教室」は、ITに関わる規格や仕組みなどを簡潔に紹介するコーナーです。まずはUSBについて、その概要を解説します。


 前回は、USBと充電について基礎から解説したが、引き続きUSBの充電仕様について詳しく解説する。

 USBを使った充電は、「USB Battery Charge Rev.1.2」(2010年12月7日。以下USB-BC1.2)とUSB Type Cコネクターなどを使う電源供給の仕組みである「USB Power Delivery Rev.3.0 Ver.1.1」(2017年1月12日発行)を利用する。

 前者は、USBの5V電源を使ったバッテリーの充電(および電力供給)の仕様であり、後者は、USBコネクターを使った電力供給(5V以外の電圧を利用可能)の仕組みを定義したものだ。

 ここでは、USB-BC1.2と同仕様が成立する前から利用されていて現在まだ市場に製品が残るUSB充電器の仕様、そしてUSB-BC1.2の存在を前提に作られた独自の充電仕様などについて見ていこう。

さまざまなスマートフォンの充電の仕組み

 スマートフォンなどの充電を考えたとき、USBコネクターを使う充電では、以下のような仕組みが市場で使われている。

  • メーカー独自仕様
  • USB-BCに準拠したもの(1.2以前のものを含む)
  • USB Power Deliveryに準拠したもの
  • USB 2.0などの通常電力出力を利用するもの
  • 単にUSBコネクターだけを流用したもの

 ここでは、最初の2つについて解説し、USB Power Deliveryによる電力供給については、別途USB 3.2やUSB Type-Cの解説とともに行う。最後の2つに関しても特に解説しないが、USB-BCは通常のUSBコネクターを使う充電も仕様に含んでいる。

USB-BCとは?

 USB Battery Chargeとは、充電用のUSBポートと充電される機器側の仕様である。電力の供給を受ける側は、この仕様に従うことでUSB-BCのポートかどうかを判別して充電を行うことができる。

USB Battery Chargeの仕組み
USB Battery Chargeの仕組み
USB Battery Charge(USB-BC)は、3種の充電ポートを定義し、ポータブル機器が備えるべき機能を定義している。

 USB-BCでは、「SDP(Standard Downstream Port)」「DCP(Dedicated Charging Port)」「CDP(Charging Downstream Port)」の3つのUSBポートを定義している。これらは、電力を供給する側のUSBポートであり、これらをUSB-BCでは、充電ポート(Charging Port:CP)と総称している。

略称 名称 意味 供給可能電流(最大値)
SDP Standard Downstream Port ホスト側の通常のUSBポート 100mA(500mA)
DCP Dedicated Charging Port 充電のみを目的としたUSBポート 500mA(5000mA)
CDP Charging Downstream Port 充電が可能なダウンストリームポート 1500mA(5000mA)
ACA Accessory Charger Adapter USB接続と充電を可能にする機器 CDP/DCPに準ずる
USB-BCの3種類の充電ポート

 ここで言う「Downstream(ダウンストリーム)」とは、USB 2.0で定義されるもので、ホストからデバイスへの方向を意味していて、ダウンストリームポートとは、ホストやハブのUSBコネクターのことである。

 USB-BCで充電される側の機器はポータブル機器(Portable Device。PD)と呼ばれる。USB-BCはバッテリー充電のための仕様ではあるが、ポータブルデバイスは必ずしもバッテリーを内蔵している必要はなく、USB-BCによる電力の提供で動作することも可能である。

 仕様書では、「SDP」などの略号で表記されているが、このままだと分かりにくいので、本記事では下表のように表記する。なおこれらの用語は、USB-BCで定義されたものであることに留意されたい。また、表記が煩わしくなることもあるため、適宜、日本語、略語のみを使うことがあることにも注意してほしい。

名称 本連載での表記
Standard Downstream Port 標準USBポート(SDP)
Dedicated Charging Port 充電専用ポート(DCP)
Charging Downstream Port 充電USBポート(CDP)
Accessory Charger Adapter 充電USBアダプター(ACA)
Charging Port 充電ポート(CP)
Portable Device ポータブル機器(PD)
仕様書の表記と本連載での表記

 USB-BCでは、充電ポート(CP)を区別する方法を3種類定義している。具体的には、データ通信のための「D+」と「D-」信号線を使い、電気的に検出している。これは純粋にハードウェアとして行われ、相手側とUSBによる通信が始まる前に行われる。このため、簡易なポータブル機器(PD)であっても、正しく接続している充電ポートを認識できる。

 ただし、通常のUSBデバイスになっていれば、この検出が終了した後、相手が標準USBポート(SDP)や充電USBポート(CDP)であれば、通常のUSBと同じく、デバイスの認識などが行われる。

 また、USB-BCでは、アクセサリー充電アダプター(Accessory Charging Adaptor。ACA)と呼ばれる「アダプター」を定義している。これは、ポータブル機器側への電力供給と、ポータブル機器とのUSB接続を同時に行うためのアダプターである。また、このアクセサリー充電アダプター(ACA)の変形として、ドッキングステーション(ACAドック)を想定している。

 アクセサリー充電アダプターは、充電を行いつつ、USBデバイスの接続やホストとの接続を可能にする。「第2回 仕様と独自が混在する複雑なUSBの『充電』」で解説したようにモバイルデバイスに関しては、ホスト側にも、デバイス側にもなることができるOTGという仕様が存在する。

 スマートフォンは、PCと通常USBケーブルで接続すればデバイスとして動作し、ホストケーブルを使ってUSBデバイスを制御できる。アクセサリー充電アダプターは、仕様上は、このOTGに対応してホストとの接続も、デバイスとの接続も可能にしている。

充電ポートと充電USBアダプターを整理する

 充電ポート(CP)と充電USBアダプター(ACA)のそれぞれを簡単に説明しよう。

 USB-BCでは、充電に関して、通常のUSBケーブルを使うことを想定している。このケーブルは、電力の供給側は、USB標準Aプラグ、ポータブル機器(PD)側はマイクロUSB Aプラグのものを利用する。このため、充電器などのコネクターは、USB標準Aレセプタクルであり、スマートフォンなどのコネクターは、マイクロUSB Aレセプタクルとなる。なお、USB-BCは、USB 3.xでも有効で、USB Type-Cコネクターを利用することができるが、こちらについてはUSB 3.xやUSB Type-Cの解説のときに別途行う。

USB-BCの充電形態
USB-BCの充電形態
USB-BCでは大きく3つの形態を想定している。1つは、充電ポートと通常のUSBケーブルを使ってポータブル機器(PD)を充電するもの。もう1つは、いわゆる充電器による充電である。最後の1つは、アクセサリー充電アダプター(ACA)による、充電とUSBデバイスの同時接続である。

 いわゆる「充電専用ケーブル」はUSB-BCでは規定されていない。ただし、充電アダプターなどから直接ケーブルを出す「キャプティブケーブル」(俗にピッグテールなどと呼ばれる構造)は、充電専用ポートでは利用可能だ。これはケーブル自体にVBUS(+5V)とGNDだけのものを利用可能にするためだ。このとき、充電専用ポート(DCP)検出用の配線は出力先であるマイクロUSBプラグ内で行われる。

 また、ACAでは、マイクロUSBコネクターが持つID信号線を利用するため、汎用のUSBケーブル(ID信号線は含まれない)を利用できない。キャプティブケーブルやケーブルを使わず、直接ポータブル機器と接続するドッキングステーションのような構造も想定されている。

 量販店や100円ショップなどで「充電専用ケーブル」と名付けられたUSBケーブルが売られているが、実際には、単に電力供給の妨げにならないように太い線を使ったものだったり、あるいはVBUSとGNDしか接続していないものだったりする。USB-BCの仕様からすると、充電時間は、ポータブル機器(PD)がどの充電ポートに接続しているのかの判断で決まり、ケーブルの太さなどで決まることはない。

 次ページでは、充電ポートと充電USBアダプターの詳細を説明する。

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