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あまっあまのスイーツ社長なんて、大手に利用されて当然よ!コンサルは見た! オープンソースの掟(3)(1/3 ページ)

アンタ、本当に経営者?――大手カーナビベンダーの女性部長から契約打ち切りを告げられたカーナビソフト開発会社社長の三浦は、解決策を相談しに訪問した先でも、気の強そうな女性コンサルタントに頭ごなしに怒鳴られてしまった。

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コンサルは見た!

連載「コンサルは見た!」は、仮想ストーリーを通じて実際にあった事件・事故のポイントを分かりやすく説く『システムを「外注」するときに読む本』(細川義洋著、ダイヤモンド社)の筆者が@IT用に書き下ろした、Web限定オリジナルストーリーです。



登場人物

ジェイソフトウェア

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三浦大樹

システム開発企業「ジェイソフトウェア」代表取締役社長、兼技術トップ。

大手電機メーカーを早期退職して同社を立ち上げ、カーナビゲーション用ソフト「ボカ」を開発した。

A&Dコンサルティング

misaki

江里口美咲

大手コンサルティングファーム「A&Dコンサルティング」のITコンサルタント。ユーザー企業のIT戦略策定支援やベンダーのソフトウェア開発品質改善を行う傍ら、プロジェクト開発にまつわるトラブルの数々も解決に導いている。

前回までのあらすじ

カーナビゲーションソフト「ボカ」の開発元「ジェイソフトウェア」の三浦社長は、ソフトを販売する条件について共同創業者の松井と言い争い、袂を分かつことになった。

数年後、ボカを組み入れたカーナビ「バルサI」を製造する「プレミア電子」の木村システム企画部長は、三浦に契約打ち切りを告げた。当時、松井がプレミアにソースコードごとボカを提供する約束をしたことを悪用し、新型の「バルサII」に載せるソフトは自社内で開発するというのだ。

第1話 ベンチャー企業なんて、取り込んで、利用して、捨ててしまえ!
第2話 大手の下僕として安定の日々を送るなんて、まっぴらゴメンだね!


アンタ、本当に経営者?

misaki

「話を聞く限り、プレミアの言い分におかしいところはないわね。魅力のあるソフトウェアをもらったら、後はベンチャーなんて用なし――道義的にはどうかと思うけど、それがビジネスの世界ってものじゃないかしら?」

 「ジェイソフトウェア」社長の三浦大樹が「A&Dコンサルティング」のITコンサルタント江里口美咲を訪ねたのは、「プレミア電子」に契約の打ち切りを告げられてから1週間後のことだった。

 「プレミア電子」に契約を打ち切られれば、ジェイソフトは日を待たずに潰れてしまう。「何とかプレミアに考えを改めてもらい、バルサIIに載せるアプリケーションの開発も任せてもらえる方策はないか」と、IT紛争に詳しい専門家を探したところ、前職の友人が「良いコンサルタントがいる」と美咲を紹介してくれたのだった。

 しかし美咲は、説明を聞くなりぶっきらぼうな返事を返すのみ。三浦は驚き、多少の憤りも感じたが、今はそんなことを気にしている場合ではない。「やっぱり、従うしかないんでしょうか……」と、再度おずおずと尋ねてみた。

 「それが得策ね。プレミアとは縁を切って、松井さんと一緒にドローンのアプリ開発でもやったら? ベンチャーなんだから、それくらいの気概はあるでしょ?」

 美咲の答えはつれなかった。しかし、三浦は諦めきれなかった。三浦の頭の中には、2年前のある光景が浮かんでいたのだ。

miura

「でも……でも! プレミアの武田社長は、基本契約を結ぶときに『これからも末永くパートナーとして』って言ってくれたんです。あの木村とかいう女じゃなくて、社長と直接話すことさえできたら……」





 「バッカじゃないの! アンタ、本当に経営者?」

 三浦は心底驚いた。美咲の口調は、初対面のしかも年上の人間に対するには、あまりに乱暴だ。しかし、そんな三浦の動揺にはお構いなしに、美咲は機関銃のように言葉を続けた。

 「社交辞令を信じ込んで他の仕事を断るわ、将来の約束など何もしていないヌケヌケの基本契約書にサインするわ、これで社長だなんて空いた口がふさがらないわ。甘いのよ! アンタみたいなあまっあまのスイーツ社長に雇われた社員こそ不幸だわ!」

 「な、何だと!」――あまりの言いように三浦は思わず立ち上がり、両の拳をぎゅっと握りしめた。

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