2017年のエンタープライズインフラ市場、6346億円に成長するも、上位ベンダー6社に明暗――IDC調べ
IDC Japanによると、2017年の国内エンタープライズインフラ市場は、前年比1.7%増の6346億円に成長。ベンダー別シェアでは、前年比0.8%増でシェア23.2%を獲得して富士通が1位に。システムタイプ別シェアでは、「SoR(Systems of Record)」が全体の42.4%を占めた。
IDC Japan(以下、IDC)は2018年7月19日、国内エンタープライズインフラ市場シェアについて発表した。
なお、IDCでは、サーバとエンタープライズストレージシステム(ExternalおよびStorage Expansionのみ)を合算した市場を、エンタープライズインフラ市場としている。
市場は前年比1.7%増で成長、ベンダー別シェアのトップ3は日立、IBM、デル
発表によると、2017年の国内エンタープライズインフラ市場は、前年比1.7%増の6346億円だった。
富士通が前年比0.8%増でシェア23.2%を獲得して1位となり、次いでNEC、日本ヒューレット・パッカード(以下、HPE)、日立製作所、IBM、デルと続いた。
これら上位ベンダー6社のうち、前年比プラス成長を達成したのは、富士通、HPE、IBMの3社。NEC、日立製作所、デルの3社はマイナス成長となった。
IDCによると、上位ベンダー6社の明暗を分けたのは、主にメインフレーム関連ビジネスにおける更新案件の変動によるところが大きいという。富士通とIBMはメインフレーム関連ビジネスが好調だったが、NECと日立製作所は低迷。メインフレーム関連ビジネスは更新案件が大半を占め、更新需要には山と谷があるうえ、更新需要の山と谷のサイクルはベンダーごとに異なるといった特徴が現れたと分析する。
また、HPEとデルの明暗を分けたのは、主にx86サーバビジネスにおける市場カバレージの差にあると見ている。主要ディストリビューターにおける両ベンダーの競合状況は、ディストリビューターにおけるインナーシェアの増減といった観点からはデルに勢いがあったものの、システムインテグレーターなどを通した市場カバレージはHPEの方が広いと分析。HPEは、x86ブレードサーバやIA64サーバのミッションクリティカル領域における実績を通して大企業でのペネトレーション(浸透率)が高いためとしている。
システムタイプ別はSoR、SoE/SoIなどが前年比増、ベンダーには戦略課題も
国内エンタープライズインフラ市場をシステムタイプ別に見ると、「SoR(Systems of Record)」が全体の42.4%、「SoE(Systems of Engagement)/SoI(Systems of Insight)」が11.4%、「Other(その他)」が46.2%を占めた。前年比成長率は、SoRが3.1%増、SoE/SoIが1.4%増、Otherが0.6%増だった。
過去3年間のシステムタイプ別売上額を見ると、SoR、SoE/SoI、Otherのカテゴリー構成比に大きな変動はなかった。ただし、同市場の売上額は2017年にプラス成長となったものの、2015年との比較では10%以上縮小しているという。
さらに、SoR向けエンタープラズインフラビジネスでは、顧客カバレージといった観点からシステムベンダーのすみ分けが進んでおり、他社競合から顧客を奪うハードルは高くなっていることに加え、SoE/SoI向けやOtherのシステムタイプ向けエンタープライズインフラビジネスでは、サーバなどをODM(Original Design Manufacturer)から直接調達する「ODM Direct」の存在感も徐々に増してきていると分析する。
こうした状況を受け、IDCでは、サーバベンダーやストレージベンダーが留意すべきこととして、「サーバやストレージ関連製品の開発コストの捻出方法」と「外付型エンタープライズストレージシステム(External)の採用機会の減少」の2点を挙げる。システムベンダーは、これらの2点に対する中長期的な戦略として、事業構造の転換を図るための具体的かつ実現可能なプランを持ち、遂行していくことが求められていると指摘する。
なお、IDCではシステムタイプを、SoRはサービス提供活動の記録や処理を行うシステム、SoEは顧客エンゲージメントに関わるシステム、SoIは収集したデータの分析を通して洞察を得るためのシステム、Otherはいわゆる「システム基盤プラットフォーム(SIP:System Infrastructure Platform)」と「機器/装置制御システム(A/DCS:Apparatus/Device Control Systems)」を合算したものと定義している。
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