生体情報収集向け無線技術「SmartBAN」、広島市立大学らが実用化技術を発表:無線IoTで信号の同期も確保
広島市立大学、東芝DMEらは、生体情報取得を目的としたSmartBANの実用化に向けた技術の詳細を発表した。SmartBANは複数のIoTセンサーノードで計測したデータを無線でハブに集約する通信技術。体調モニタリングや体調管理、遠隔地での臨床判断支援などに役立つ。
広島市立大学大学院情報科学研究科医用情報通信研究室(広島市立大学)と東芝デベロップメントエンジニアリング(東芝DME)は、次世代のボディエリアネットワーク「SmartBAN」の実用化に向けた共同開発中の技術の詳細を発表した。
2018年7月17〜21日に米ハワイ州ホノルルで開催された「The 40th International Engineering in Medicine and Biology Conference(EMBC)」において、広島市立病院機構広島市立広島市民病院を含めた三者による連名で発表したもの。
SmartBANは、ウェアラブル機器など複数のIoT(Internet of Things)センサーノードで計測したデータを無線でハブに集約する通信技術。主に医療やヘルスケア分野のIoT機器に向けた無線によるデータ収集技術で、2015年4月に欧州電気通信標準化機構(ETSI)で規格化された。
今回の実用化技術の特徴は、時間同期を取りながら複数のウェアラブル機器から無線で生体情報を取得できること。EMBCでは脈波伝搬速度(PWTT)による血圧の変動推定を例に、時間同期を取りながらデータを取得するSmartBANの機能の評価を発表した。
東芝DMEは、今回開発した技術を製品化し、「SmartBAN実験キット」として2018年内に発売する予定。広島市立大学は、SmartBANの活用が期待される領域で、技術の周知や採用などの働きかけを行う。希望事業者には、技術やノウハウの提供、導入や事業化支援なども実施する。
複数人の近接に対応し、緊急信号を優先
SmartBANは、医療やヘルスケア、ウエルネスといった生活に密着した領域で、血圧や脈拍、心電といった各種生体情報を収集するために必要な特徴を備えている。
消費電力が低いことはもちろん、同じチャネルを使用するBAN同士が接近した場合に干渉を回避でき、さまざまな伝送レートや許容遅延、許容誤り率などを持つ生体情報を最適に伝送する機能を備える。さらに医療分野で必要な、緊急信号の迅速発信と最適伝送も可能だ。
広島市立大学によると、SmartBANを活用することで、体調や様態、動作など人体のさまざまな情報を可視化できるようになるという。さらに、日常時や災害時の体調モニタリング、患者や住民の血圧変動などの監視、在宅や介護施設での体調管理、へき地や海洋上など遠隔地での臨床判断支援など、広範な領域での活用が期待できるという。
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