カブドットコム証券、オープンAPI「kabu.com API」の基盤をAWSで刷新 クラウド化でコスト半減
カブドットコム証券は、これまでオンプレミス環境で運用していた「kabu.com API」の基盤をAWSで刷新。OAuth 2.0の採用でセキュリティを強化した他、ユーザーニーズを生かしたAPIの改良も実施し、より使いやすいオープンAPIサービスを目指す。
カブドットコム証券は2018年8月7日、証券APIの公開サービス「kabu.com API」の基盤をAmazon Web Services(AWS)で刷新したと発表した。これにより、約2倍のコスト削減効果が見込めるという。
三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は2017年3月、金融サービスのオープンイノベーション推進基盤として、銀行サービスなどのAPI公開サービス「MUFG{APIs}」を開始。同グループの一員であるカブドットコム証券もプロジェクトに参画し、API連携によるグループ金融機関とのサービス協業やFinTechスタートアップ金融機関との技術的な連携により、オープンイノベーション推進に取り組んでいる。
MUFG{APIs}の一画として展開するkabu.com APIは、株式/先物/オプション取引に対応したAPI環境として2012年にサービスを開始。これまでオンプレミス環境で運用していたAPI基盤を今回、AWSで刷新してクラウドベースに移行した。
新しいAPI基盤では、OAuth 2.0認証方式を採用してセキュリティを強化。併せて、サービス開始当時からkabu.com APIを活用してツール提供を行っている有力サードパーティー事業者に開発段階から参画してもらい、ユーザーニーズを洗い出して、より活用しやすいAPIへの改良も図ったという。
カブドットコム証券では、今回のシステム刷新で、システム開発、実装、運用の最適化を視野にコスト比較の試算を実施。
AWSなどのクラウド環境では認証/認可やキャッシュシステムなどの機能が部品化され、運用管理された上で提供されることから、実装に伴うコストやサイバーセキュリティリスクへの対応コストが軽減されると試算。ハードウェア調達にかかるメリットも大きく、以前なら1〜3カ月程度必要になるハードウェアの調達、設置が瞬時で完了するため、初期費用が低減する。
ランニングコストについては、従来の自社運用による高いコストメリットを上回ることは難しいものの、社内人員の技量や交渉力に依存する調達が不要になり、迅速なスケーリングを実現する体制が確保されたことで、可視化しにくいメリットを得ることができると判断した。
これまでの刷新プロジェクトの概況は、試算に近い状況で推移しており、試算通りの成果を発揮することが期待されるとしている。今後は、API基盤だけでなく、顧客サービス用のWebサーバやその他システムについてもAWSでの刷新を視野に置いている。
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