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業務の自動化は業績の他、職場環境も改善――ロンドン大学などが調査自動化技術と人材の両方に投資すると業績が3割向上

Automation Anywhereは「自動化技術導入は、従業員が人間らしく働ける職場環境を実現する」とのロンドン大学との共同調査結果を発表した。日本では他国並みに自動化技術が導入されているものの、幸福度や生産性の向上にはつながっていないようだ。

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 Automation Anywhereは2018年9月20日、「自動化技術導入は、従業員が人間らしく働ける職場環境を実現する」との調査結果を国内で発表した。ロンドン大学のゴールドスミスカレッジと共同で実施した「人の能力を拡張した企業(The Augmented Human Enterprise)」と題した調査だ。

 人の能力を拡張するとは、RPA(Robotic Process Automation)やAI(人工知能)を導入することで業績を高めることをまず言う。

 調査から分かったことは2つある。第1はRPAやAIといった自動化技術を導入するだけで、業績が高まる上に従業員が満足するような人間らしい職場を実現できることだ。

 同調査では、企業の経営層に対して、従業員の生産性を高めるためにどの程度人間らしく働ける職場作りに力を入れているかを質問した他、自動化技術の導入が人間らしい働き方に与える影響についても検証した。

 その結果、自動化が職場の幸福度につながる主な理由は、従業員を反復作業から解放し、学習や成長、エンゲージメント(適応)を通じてクリエイティブで戦略的な仕事に集中できるようにすることが分かった。

 今回の調査結果では、AIを使用している職場の80%と、RPAを使用している職場の78%で、従業員が反復作業から解放されたという回答を得た。AIやRPAを導入している職場では、そうでない職場と比べて、従業員の仕事に対するエンゲージメント率が38%高かった。

 第2に分かったことは、自動化技術への投資と同時に、人材にも投資して人間らしい職場を作ることで、その効果が飛躍的に向上することだ。従業員の能力向上や働き方の補完を目的として自動化を導入すると効果が高い。

 調査によれば、業務の自動化技術と同時に人材へも投資することで、RPAとAIによる業績が26%向上するという。さらに業務実績全体が28%、財務業績が31%、それぞれ改善した。

 調査では、技術と人材の両方に投資している企業のみが、財務とイノベーション、企業文化の3点にわたって業績を改善できていると結論付けた。

日本は自動化の果実を十分に得ていない

 日本企業の回答からは、興味深い事実が2つ分かった。一つは自動化について投資に積極的で利用範囲が広いこと。もう一つは職場環境の改善が芳しくないことだ。


日本企業の回答から一部を抜粋(出典:The Augmented Human Enterprise

 まずRPAに投資している企業の割合は、他国と同等レベルに達している。今後12カ月以内にRPAへの投資を検討していると回答した割合は、調査対象の4カ国で最も高かった。

 具体的には、現在RPAに投資している日本企業は全体の46%、今後12カ月以内に投資を検討している企業は51%。現在AIに投資している日本企業は55%、今後12カ月以内に投資を検討している企業は41%だった。

 さらに日本企業の80%は、業務全体の40%以上で何らかのRPAやAIを利用している。回答者の88%は、今後40%以上の業務で自動化が進むと期待している。

 職場環境の改善課題とは、職場での幸福度やワークライフバランス、生産性の向上に関する3つの数値が、日本は4カ国中、最も低いことだ。

 RPAやAIを活用している従業員の方が、より高い効果や効率、幸福度を達成していると実感している割合が、日本では46%と少ない。新しいアイデアを追究できる職場は36%と少なかった。社員がワークライフバランスについて満足していると回答した割合は62%。自動化で作業時間が減り、生産性が向上したと回答した割合は59%だった。

 今回の調査は、ロンドン大学が主体となって進めた。調査は3種類に分かれる。第一に日本、英国、米国、インドの従業員1000人以上の企業に在籍する400人の上級管理職を対象に、オンラインと電話によるアンケートを実施した。対象となった業種は製造、保険、金融。第二に学術論文と調査結果を包括的に検証した。第三に技術者やCEO、科学者やエンジニアなど、自動化とAIの専門家に聞き取り調査を実施した。

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