Microsoft、「Microsoft Quantum Network」を立ち上げ 量子コンピューティング関連の協業を推進:スタートアップ、提携組織、学術機関、開発者との連携を推進
Microsoftは、量子コンピューティング分野で先進的なパートナー企業、大学、顧客、開発者と進めてきた提携の取り組みを、今後は「Microsoft Quantum Network」と銘打って展開していく。
Microsoftは2019年2月28日(米国時間)、量子コンピューティングに関する優れたイノベーターとの知識共有やコラボレーションを目的に、ここ数年進めてきたパートナー企業、大学、顧客、開発者との提携の取り組みを、今後は「Microsoft Quantum Network」と銘打って展開することを第1回スタートアップサミットで発表した。
Microsoftと個人および組織のグローバルコミュニティーは直接協力し、量子コンピューティングの進化、実用的なアプリケーションの開発、量子コンピューティングの将来を担う人材の育成に取り組む。
MicrosoftのAzureハードウェアシステムグループでコーポレートバイスプレジデントを務めるトッド・ホームダール氏は「われわれはMicrosoft Quantum Networkを通じて、量子コンピューティングを担う人材の育成や量子エコノミーの発展に必要なパートナーシップの構築に力を注いでいく。この2つは、世界で最も困難な部類に入る問題の解決に不可欠だと、われわれは考えている」と述べた。
新たに2社をパートナー企業に
Microsoftは、「われわれは量子ソフトウェアおよびアルゴリズム開発で世界をリードするスタートアップ(新興企業)と組んできた」と述べ、新たに以下の2社をパートナーに迎えたことを明らかにした。
- HQS Quantum Simulations
化学業界や製薬業界向けに分子特性を予測するための量子アルゴリズムを開発している。
- Rahko
量子機械学習を手掛け、近い将来の量子コンピュータなどのためのスケーラブルな量子化学ソリューションを開発している。
HQS Quantum SimulationsとRahkoは、Microsoft Quantum Networkのメンバーである他の量子コンピューティングスタートアップとともにMicrosoftと密接に連携し、実用的なアプリケーションの開発や量子コンピューティングの普及促進に取り組んでいく。また、こうしたスタートアップはMicrosoftとのパートナーシップにより、ビジネスの育成、革新的ソリューションの開発、貴重なリソースへのアクセスといった点で恩恵を受ける。
Microsoft Quantum Networkは、スタートアップに加えて以下のような組織で構成されている。
- 提携組織:Microsoftと協力し、量子コンピューティングのノウハウの高度化や、自組織と産業に恩恵をもたらすソリューションの共同開発を進めている。こうした組織の例には米国のケースウェスタンリザーブ大学、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイ電力・水道局(DEWA)、米国エネルギー省傘下のパシフィックノースウェスト国立研究所(PNNL)などがある。
- 研究、開発、高等教育機関:Microsoftとのパートナーシップにより、量子コンピューティングの進化を追求している。こうした機関には米国のパーデュー大学、カリフォルニア大学サンタバーバラ校、デンマークのコペンハーゲン大学、オランダのデルフト工科大学、オーストラリアのシドニー大学などがある。
- 開発者や開発者組織:Microsoftが提供している無料リソース(「Microsoft Quantum Development Kit」、チュートリアル、Q#ライブラリ、サンプル、ワークショップなど)を利用して、量子アルゴリズムやアプリケーションを開発している。Quantum Development Kitのダウンロード回数は10万回を超えている。
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