ガンホーが明かす「ラグナロクオンライン」AWS移行後の苦労:特集:百花繚乱。令和のクラウド移行(12)(1/2 ページ)
多数の事例取材から企業ごとのクラウド移行プロジェクトの特色、移行の普遍的なポイントを抽出する本特集「百花繚乱。令和のクラウド移行」。本稿ではガンホーのクラウド移行事例を紹介する。
クラウド移行の特色、ポイントを企業のクラウド移行事例から抽出する本特集「百花繚乱。令和のクラウド移行」。本稿では2002年に「ラグナロクオンライン」(以下、RO)をリリースした後、「パズル&ドラゴンズ」(パズドラ)などのサービスを世に送り出してきたガンホーのクラウド移行事例をお伝えする。
ガンホーではROのクラウド移行を進め、3年間かけて移行させるプロジェクトに取り組んでいる。「Amazon Web Services」(AWS)を選んだ理由、AWSに移行したメリットなどをガンホーでCTO(最高技術責任者)を務める菊池貴則氏が2019年6月に開催された「AWS Summit Tokyo 2019」で語った。
ピーク時は1000台規模のサーバを運用
スマートフォンやPC、家庭用ゲーム機などで配信するゲームの企画、運営、販売を行うガンホー。2002年にROをリリースして以来、ROプレイ人口の増加や新規タイトルの公開に合わせて社内のデータセンター(DC)に物理サーバを増設。2011年ごろには1000台規模のサーバを4〜5人で運用していた。
2011年以降は仮想化技術の活用、配信タイトル数の縮小、ハードウェア性能の向上を背景に物理サーバを減らし、2016年には複数契約していたDCを1つに集約した。しかし、数カ月後、その集約したDCが2019年末に閉鎖される通知が届いたという。
「DC閉鎖の話が突然だったので驚いた。新規DCを契約するかどうか考える中で、クラウド環境に完全移行しないかという話になり、クラウドへの移行検討を開始し、比較選定を行った。AWSに決めたのは、パズドラなど別のスマートフォンアプリで利用していた実績があったこと、AWS サポートのエンタープライズプランを活用しており、サポート体制の充実さも決め手になった」
移行に当たっては、AWS移行にかかる期間を3年としてコスト試算も行った。DC、サーバの費用だけではなく、OS、各ソフトウェア、保守費用まで見積もった結果、何もしないまま運用を続けるより、運用とAWS移行を並行して進め、最終的にDCからAWSに完全移行させた方がコストを安く済ませられると分かった。
また、サーバデータやデータベース(DB)移行、移行にリスクが伴う課金システムなど、段階的に移行させたいシステムがあることから、「AWS Direct Connect」を用いてDCとAWS環境を接続させ、移行プロジェクトの間、並行稼働できる環境を構築した。
「DCとAWSの接続もROのクラウド移行では必須要件だったため、AWS Direct Connectの安定性や実績があることもAWSを選んだポイントだった」
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 1000万ダウンロード規模の「ロマサガRS」が障害を回避できた理由
アカツキでエンジニアを務める駒井祐人氏が、スマートフォンゲームアプリ「ロマサガRS」でどのように障害を回避したのか紹介した。 - 期待のサービスはなぜ「総売り上げ3万5400円」でクローズに至ったのか――失敗から学び成長するための6項目
「失敗の振り返り」は、同じ間違いを繰り返さないために必要なことだが、できれば避けて通りたいツラい作業。2019年4月24日に開催された「明日の開発カンファレンス」では、貴重な「公開振り返り」が行われた。 - 青山Pが振り返る「ドラゴンクエストX」3つの失敗――消すつもりのコードが本番環境に
スクウェア・エニックスでドラゴンクエストXのプロデューサーを務める青山公士氏は「ドラゴンクエストX」の3つの不具合を振り返り、サービス開発、運用時の教訓を紹介した。