営業はなぜ「お任せください」と約束してしまうのか:不具合大量発生中なのに(2/4 ページ)
エンジニアはプロマネに、プロマネは顧客に、なぜ「助けてください」と言わないのだろう?――IT“業界”解説シリーズ、第6弾はベンダーの営業やプロマネの安請け合いを考えます。
本当の意味での「責任ある態度」
いきなり回答を書いてしまうと、「プロジェクトのリスクや課題を躊躇(ちゅうちょ)せずハッキリと言う勇気」ではないか、と私は思います。プロマネや営業は顧客に、エンジニアはプロマネに、ダメさ加減を包み隠さず言えるか否かが勝負といってもいいでしょう。
QCD(品質:Quality、コスト:Cost、納期:Delivery))の順守が困難になったベンダーやそのエンジニアが、自分たちだけで何とかしようと意地になり、無理な計画の下で作業を続けた揚げ句、結局ダメだった――ということは、IT業界では日常茶飯事です。
しかし、こうしたときに誰にも言わずに必死に努力をすることこそ「無責任」です。
解決困難なリスクや課題を抱え込んだとき、これを顧客あるいは上司と共有し、皆の力で動くモノを何とか納期通りに作っていくことこそが本当に求められる態度であり、またそれでしかピンチには対応できないでしょう。
どうしてもスケジュールが遅れるのなら、納期やスケジュール、作業順の見直しを「一刻も早く」申し出る。想定外の技術的な困難があれば、実現方式の見直しを、あるいは要件の見直しを申し出る。品質不良に対応するために要員の増加を承認してもらう、テストの一部を顧客に手伝ってもらう――これらのピンチの開示と解決手段の協力要請は、よほどハッキリ言わないと、顧客も営業も、あるいはプロマネも、おかしな意味で「いちるの望み」に託してしまいがちです。
問題はあるらしいが、任せておけば大丈夫だろう――人間というのは、そのように思いたい生き物です。まして、技術のことをよく知らない顧客や営業ならなおさらでしょう。こうした甘い幻想をハッキリと打ち破る「態度」が、プロマネやエンジニアにはどうしても必要です。
顧客の担当者はプロマネに、プロマネはエンジニアにひどく腹を立てるかもしれません。顧客内部の要員を割いてベンダーを支援せざるを得ない事態になれば、その分の費用減額を求められるかもしれません。しかしそうであっても、プロジェクトの破綻よりは双方の傷は浅いはずです。その方が、プロジェクトから得られる利益(あるいは損失)や顧客信頼度の面で、ずっとマシではないでしょうか?
また、もしもリスクや課題の解決に顧客が何の協力もしてくれなかったとしても、開発が順調に進んでいないことを知ることは、顧客にとってメリットです。
プロジェクトがうまくいかない場合、顧客は内部でさまざまな調整(サービス開始遅延や機能の縮退、あるいは開発費用の増額などを社内で承知してもらうことなど)を行う必要があります。これらは少しでも早い方が、顧客の傷を浅く済ませられます。ベンダーによる早期のリスク、課題開示は、それ自体が顧客を助けることにもなるのです。
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