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「正しい方法を見つけて、それをずっとキープするのは間違い」――中国生まれのCTOが持ち込んだ、西海岸の風とはGo AbekawaのGo Global!〜Li Rutong編(前)(2/2 ページ)

コンテンツ配信を担う「U-NEXT」でCTOを務めるLi Rutong(リー・ルートン)氏。電子部品を組み立てて一人で遊ぶような「オタクな子ども」だったルートン氏は、中学で出会ったコンピュータをきっかけにその才能を開花させる。起業での失敗から立ち直り「もっと成長したい」と彼を動かしたものとは何だったのか。

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「米国西海岸の文化」をU-NEXTに持ち込む

阿部川 その後、2010年に「パケットビデオ」で、デジタルコンテンツの配信に携われました。

ルートン氏 はい、今はもうないのですが、デジタルコンテンツ配信の「大本の技術」を作る会社です。ソニーで最後に作ったものがコンパクトデジタルカメラだったんですが、当時からその先にある「スマートフォンの世界」に行きたいと考えていました。そこから派生して、今度はデジタルコンテンツ配信に回ったという感じです。そのときに学んだ知識が、今でも役立っています。運が良かったと思います。

阿部川 カメラの製造からデジタルコンテンツ配信ですと全く違う印象がありますが、ご自身の感覚では仕事の内容は変わっていないのですね。2015年にU-NEXTに入社されます。U-NEXTはパケットビデオの顧客だったのですね。

ルートン氏 はい。パケットビデオは「米国西海岸の文化」の会社で、例えば仮想化開発やアジャイルといった手法を早くから取り入れており、新しい技術やその開発力には優れていました。ちょうどU-NEXTが自社開発を始めたタイミングでしたので、その文化を持ち込んだ形です。

阿部川 「文化を持ち込む」ということは「既存の文化を変える」と同じことだと思います。大変だったのではないでしょうか。

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ルートン氏 そうですね。開発だけではなく、社内の全部を透明化して、社内のインフラや情報の管理の仕方、コミュニケーションの仕方などを全部変えようというものでした。単にツールや手法を変えるということではなく、最終的には、社員のマインドセットや、従来の仕事のやり方そのものを変えるということです。社長(代表取締役社長:堤 天心氏)の全面的なサポートがなければできませんでした。

阿部川 当時取り込んだアジャイルなどの新しい文化は今も活用されていますか。

ルートン氏 少し違ったものになってきています。それは改善されているという意味です。というのもアジャイルなどの開発手法は生き物だと思うのです。常に成長や進化をする必要があると考えていますので「正しい方法を見つけて、それをずっとキープする」のは間違いだと思っています。常に、今のこの瞬間や今見える近い未来に適している形に変えていく必要があると思っています。

 現在は、大きな枠組みを作ったので、それをどう運用するかというフェーズです。全てうまくいっているとは言い切れませんが、皆が楽しくやれているようですから全体的には思ったよりもうまくできていると思います。この枠組みが今後自律的に動いてくれることを期待しています。

阿部川 競争が激しい市場だと思いますが、他社と比べてU-NEXTが優れているのはどこですか。

ルートン氏 コンテンツの種類です。顧客が見たいもの、特に日本の方々に対して見たいものがそろっているということです。他社はグローバル企業が多いので、やはりグローバルを意識したものが多い。そこは私たちにはかなわない部分ですが、それに比べて、日本の顧客に適したものが多いと自負しています。コンテンツの数と質、加えてUX/UI(ユーザーエクスペリエンス/ユーザーインタフェース)です。日本の文化を基礎にしていますので、日本の方にとって使いやすいものになっていると思います。


 「オタクでいじめられっ子だった」ルートン氏は、中学時代に出会ったコンピュータによってその人生を変えた。起業や大企業での経験を積み重ね「西海岸の文化」をU-NEXTに持ち込むことに成功した同氏が、これからのエンジニアに伝えたいこととは何か。後編に続く。

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