テクノロジーは、障がい者の“遠慮”を取り除けますか?:教えて! キラキラ先輩(3/3 ページ)
聴覚障がい者は誰かにタイピングサポートしてもらわないと会議に参加できないし、発言もちゅうちょしてしまう――そんな同僚の忖度(そんたく)を解消するために、アクセンチュアのエンジニアたちが立ち上がった。
人の能力を補い、多様な人が集まったときのギャップを埋めるテクノロジー
TransCommunicatorはアクセンチュアの第一線の開発メンバーが、手法も技術も全て実際に顧客に提供しているのと同じものを活用して開発に取り組んだ。社内でのこの経験を生かし、周辺のシステムも含めて、AIを適用するためのサービスを社外にも展開していくという。
考えてみると、多様な人が集まったときに生じるギャップは、聴覚障がいの場合だけに限らない。介護や子育てなどさまざまな事情を抱える社員を支援し、力を発揮できる環境を整えることがテクノロジーに求められる役割だと、アクセンチュア デジタルコンサルディング本部 アプライド・インテリジェンス日本統括 マネジング・ディレクター 保科学世氏は考えているという。
「少子高齢化が進み、人口が減少していく中でどうやって日本の国力を維持するのか。それにはAI技術を活用し、個々人の持つ能力を最大限引き出すことが重要だ」(保科氏)
耳が遠くなったり、記憶力が衰えたりといった身体能力の低下を機械やテクノロジーの力で補い、高めていくことで、皆がそれぞれ力を発揮できるようにしたい――まず社内でそれを実践し、成功事例としたのがTransCommunicatorの取り組みという位置付けだ。
ただし、「よく言われるように、AIが人間に置き換わるわけではない。人間は何をやるべきで、機械は何をやるべきなのかを考え、機械がやる方がいいことは機械にやらせ、人間は人間にしかできないことに専念できるようにして、人間と機械のコラボレーションを実現していきたい」と保科氏は話す。
JALとアクセンチュアが共同開発した、AIをベースとした国際空港でのコンシェルジュサービスの例が示すように、単純な問い合わせ対応は機械に任せ、それを踏まえた心のこもった「おもてなし」を提供するといったところに人間が力を発揮できる世界を目指しているという。この例が示す通り、「より良い顧客体験はどうあるべきか」「より良い業務はどうあるべきか」を考え、そこを補うためにテクノロジーを使っていくことが重要だ。「AIが目的になってしまってはだめ。技術ありきで進めても失敗する」(保科氏)
テクノロジーだけ、AIだけがあっても意味はない。けれど、それをうまく活用することで、障がいに限らずさまざまなギャップを埋め、個々の能力が発揮される可能性は大いにある。アクセンチュアの取り組みからは、そんな明るい予感が感じられる。
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