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夢は、ベトナムの農業の価値を高めることGo AbekawaのGo Global!〜Le Van Da編(後)(2/2 ページ)

グローバルに活躍するエンジニアを紹介する本連載。今回も、日本で活躍中のダーさんにお話を伺う。アニメを好きな理由、仲間とのアプリ開発、日本人のエンジニアの特徴、そして将来の夢……ベトナムの真珠、輝く。

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サッカーに勉強会に春巻きパーティー

阿部川 2015年からプライベートで活動している「黄昏(たそがれ)チーム」ついてお聞きします。まず、なぜ黄昏なんですか。

ダーさん 『Naruto -ナルト-』に、「暁」というチームがあります。最初のプライベートグループの名前を「暁」にしたので、このチームは真逆の黄昏にしました。

阿部川 日本のアニメが好きなんですね。

ダーさん はい。Naruto、ドラゴンボールなど、アニメはよく見ます。日本語のヒアリングができるようになってからは、映画やDVDなどを字幕を見なくとも分かるようになったので。

 アニメは発音がきれいですし、表現やストーリーが分かりやすいので、勉強になります。アニメを見るようになってから、より話せるようになりました。

阿部川 黄昏では、どんなことをしているのですか。

ダーさん 辞書アプリ「Tu dien Nhat Viet - Suge Dict」の開発とか。最初は、大学で勉強したJavaとAndroidを使って開発しました。iOS版は日本に来てから、土日に作りました。

 黄昏メンバーは全員IT関連の日本の企業に就職しています。本業とは別にプライベートで辞書を開発しているので、当初はなかなか進みませんでした。そこで最初は僕一人で3カ月かけて基本的なところを開発して、そこからみんなにジョインしてもらって、デザインや機能値化などを一緒にやりました。

阿部川 iOS版は2019年ですね。現在販売しているのですか。

ダーさん 無料でダウンロード配布しています。今後はWeb版も提供しようと思っています。販売はコンテンツを豊富にしてから、辞書そのものの機能ではなく、その拡張機能などを有料にしていこうと思います。お金がないと何もできませんから(笑)。

阿部川 開発以外では、どんなことを?

ダーさん 鍋パーティーを結構やります。スーパーで材料を買って、アパートで調理して、チームのみんなで食べます。(写真を見せて)これは、ベトナム風春巻きです。スシローにもよく行きます。キャンプも好きです。ベトナム人もキャンプには行きますが、日本ほど普及はしていません。

 スポーツはサッカーが好きなのですが、毎日はできないので、少人数でもできるボーリングをよくやっています。サッカーは土日ですね。近所に前職の先輩や後輩が多く住んでいるので、一緒に公園でやります。ボードゲームやスノボも好きです。


黄昏チームの鍋パーティー(肉多め)

ダーさん 最近は、IT関連のイベントやセミナーにもよく行っています。優れたエンジニアの方々の話からキーワードを記憶して勉強します。製品やサービスの差別化の仕方や、いろいろな市場環境の違いなども勉強したいです。

阿部川 それは技術の勉強でしょうか、あるいは会社の経営やスタートアップの経験などでしょうか。

ダーさん 直近の2、3年はエンジニアリングの勉強をして、そうしながら将来のための勉強もしたいです。

阿部川 日本のプログラマーと、ダーさんのような外国籍のプログラマーに違いはあるのでしょうか。日本の若いエンジニアにメッセージはありますか。

ダーさん 日本の方々は、相手に対して尊敬の念を持ちながらコミュニケーションをとることに長けていると思います。基本的にエンジニアは個性の強い人が多い、とはいえ仕事は協調しなければならない、そのバランスはとても難しいと思います。

 僕もまだまだ若いので、若い方へメッセージというも変なのですが、将来長くエンジニアを続けたいならば、基盤となるITの基礎知識を若いうちに身に付けると、たとえ技術が進化してもすぐに把握できると思います。基盤は大きくは変わらないので勉強しやすいですし、その上で新しい知識を得れば身にも付きやすいと思います。

 その上でコミュニケーション力を付ければ、まあ、何があっても協力して頑張ることができると思います。

インタビューを終えて - Go's thinking aloud -

 澄み切った瞳で真っすぐこちらを見ながら話す。それが何より人物を物語る。懸命に働く父母を助け、明るい笑い声で田畑を駈け回っていたころの笑顔そのままだろう。ダーくんのこの笑顔こそ、両親の支えだ。

 「しばらくは日本で働きながら勉強したい」と話すダーくん。「今やっているサービスを持って帰れば、シェアリングエコノミーの分野などで十分ベトナム社会に貢献できるのではないか」と考えてしまうが、その考えは浅はかだとすぐ分かる。ベトナムと日本は、実質GDPや賃金の開きが10倍以上ある。日本で稼いでベトナムに仕送りをした方が割りがいいのだ。

 それでも、と思う。

 例えばシェアリングエコノミーが普及すれば、モノのサービス化が進んで就業の機会は増えるが、消費コストが抑えられて経済全体は収縮する。雇用や投資も抑制しかねない。そこでは経済発展の指標としてのGDPはもう意味をなさないかもしれない。

 だからダーくんのような若者こそが、ホンモノの価値をITで紡ぎ出し、経済と情報の格差をITでなくし、それを測定できる指標をきっと新しく作り出す。それは思っているほど先のことでは決してない。彼のよどみない日本語を聞きながら、そう夢想した。

阿部川久広(Hisahiro Go Abekawa)

アイティメディア グローバルビジネス担当シニアヴァイスプレジデント兼エグゼクティブプロデューサー、ライター、リポーター

コンサルタントを経て、アップル、ディズニーなどでマーケティングの要職を歴任。大学在学時より通訳、翻訳なども行い、CNNニュースキャスターを2年間務めた。現在は英語やコミュニケーション、プレゼンテーションのトレーナーとして講座、講演を行うほか、作家として執筆、翻訳も行っている。

編集部から

「Go Global!」では、GO阿部川と対談してくださるエンジニアを募集しています。国境を越えて活躍するエンジニア(日本在住、35歳まで)、グローバル企業のCEOやCTOの来日などがあれば、ぜひご一報ください。取材の確約はいたしかねますが、インタビュー候補として検討させていただきます。

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