新生「Azure VMware Solution」のプレビューが開始:Microsoft Azure最新機能フォローアップ(108)
MicrosoftはAzureのインフラストラクチャ上に顧客専用のネイティブなVMwareクラウド環境を構築できるようにする「Azure VMware Solution」のプレビュー提供を開始しました。この新しいサービスは、以前からプレビュー提供されていた「Azure VMware Solution by CloudSimple」を置き換えるもので、新たに登録制でのプレビューが開始されました。一般提供は2020年下半期の予定です。
CloudSimpleに依存しないネイティブな「VMwareクラウド on Azure」
Microsoftは2020年5月4日(米国時間)、新しい「Azure VMware Solution」サービスのプレビュー提供の開始を発表しました。
- New Azure VMware Solution is now in preview[英語](Microsoft Azure)
Azure VMware Solutionは、Microsoft Azure内で管理された顧客専用のベアメタルインフラストラクチャに、VMwareの仮想化サーバ「VMware vSphere」、管理サーバ「VMware vCenter Server」、仮想ストレージ「VMware vSAN」、仮想ネットワーク「VMware NSX-T」などを必要なスケールで展開および実行することができます。使い慣れた既存のツールを利用しながら、オンプレミスのVMwareクラウドをAzureにシームレスに拡張したり、Azureに拡張してビジネスの変化に応じて規模を拡張または縮小したりできるというものです。
- Azure VMware Solution(画面1)
- Azure VMware Solutionの価格(プレビュー価格)
Microsoftは2019年の中ごろから「Azure VMware Solution by CloudSimple」という名前で同等のサービスをプレビュー提供してきました。これは、VMwareソリューションベンダーであるCloudSimple(2019年11月にGoogleが買収)のテクノロジーをベースとしたもので、2020年第1四半期のサービス開始を予定していたものです。
Azure VMware Solutionはこれを置き換えるもので、サードパーティーのテクノロジー(つまり、CloudSimple)に依存することなく、Azure上でネイティブなVMwareクラウドを構築できるようになります。Azure VMware Solutionは、VMwareによる支援とクラウド認証を得て、Microsoftが直接的に開発、運用、サポートを提供します。Azure VMware Solutionの一般提供は、2020年下半期を予定しています。
Azure上でVMwareクラウドを実行するメリット
Azure上でVMwareクラウドを実行するメリットとしては、Azureの災害対策(Azure Site Recovery)やバックアップ(Azure Backup)機能を、遅延の少ない(低レイテンシ)な環境で高速に利用できることや、「Azure ExpressRoute」をはじめとするセキュアな接続オプション、Azureのその他の高度なセキュリティ機能、ログ監視や測定機能などを利用できることにあります。
また、Azure仮想マシンと同様に、Windows ServerやSQL Serverの「Azureハイブリッド特典」を利用して低価格でインスタンスを実行できること、最大3年間のセキュリティ更新を受けることができる「Windows Server 2008/2008 R2」および「SQL Server 2008/2008 R2」の「拡張セキュリティ更新プログラム(Extended Security Updates、ESU)」が無料で提供されることがあります。
Azure VMware Solutionのプレビューは登録制
Azure VMware SolutionはAzureとさらに密接に統合され、VMwareツールはもちろん、AzureポータルやAzure CLIでVMware仮想マシンの表示や作成が可能になるようです。オンプレミスでVMwareベースの仮想サーバやプライベートクラウドを運用しており、この新しいサービスに興味を持たれた場合はプレビューに参加し、評価することができます。
ただし、Azure内に顧客専用のベアメタルインフラストラクチャが用意されるため、プレビュー利用であっても相応のコストがかかります(1インスタンス52万6862円(月額)×最小3ノード〜)。
新しいサービスは、初めに「米国西部」および「西ヨーロッパ」でプレビュー提供が開始され、その後、利用可能なリージョンが拡張される予定です。2020年下半期の一般提供時にはさらに多くのリージョンで利用可能になるでしょう。
この新たなプレビューに参加するには、Microsoftアカウント担当者に連絡するか、Azure営業担当者に問い合わせる必要があります。2020年5月上旬の時点でAzureポータルやAzureドキュメントには「Azure VMware Solution by CloudSimple」のサービスやチュートリアルが残っていますが、この以前のプレビューサービスとは異なることに注意してください(画面2)。
画面2 Azureポータルやドキュメントには「Azure VMware Solution by CloudSimple」対応のものが残っているが、これは新しい「Azure VMware Solution」のプレビューに対応したものではないことに注意
筆者紹介
山市 良(やまいち りょう)
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(2019-2020)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows版Docker&Windowsコンテナーテクノロジ入門』(日経BP社)、『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。
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