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キャリアのGPSを使う? アプリをプリインストール? QRコードにキャッシュレス?――プライバシーフリーク・カフェ(PFC)リモート大作戦!02 #イベントレポート #完全版厚労省のアプリに代替案はあるのか(2/4 ページ)

日本国は巨大プラットフォーマーに負けたのか?――Apple、GoogleのAPIを採用して作った新型コロナウイルス感染症(COVID-19)接触確認アプリは最適なのか、鈴木正朝、高木浩光、板倉陽一郎、山本一郎の4人が適度な距離を保って議論した。※本稿は2020年6月10日に収録したオンラインセミナーの内容に加筆修正を加えたものです

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素通りされない国になる


プライバシーフリークの会 鈴木正朝

鈴木正朝(以降、鈴木) AppleやGoogleが、ビジネスで勝るだけでなくコンプライアンス能力でもはるかに凌駕(りょうが)するということになると、日本勢はどうしようもないですね。技術、経営、法務のスキルに加え、倫理でも負けたらほんと情けない。

山本 信じてプラットフォーム事業者を利用する以外に方法がないというパターンですよね。

高木 10年くらい前スマホが急に出てきたときには、AppleもGoogleもひどいことをやらかして散々たたかれているんですよね。米国連邦取引委員会(FTC)から制裁があったわけです。それを踏まえて今、AppleもGoogleもプライバシーの専門家とタッグを組んだ体制を取っています。

 それが日本でどれくらいできているか、そういう会社があるのかというくらい、たたかれてこそ成長した歴史があるわけです。もはや世界のプライバシー保護というのが、結果的にAppleやGoogleによって保たれているような状況が生じているわけです。

鈴木 日本は排ガス規制などの環境対策では頑張ってきましたよね。トヨタなどの自動車メーカーは世界最高レベルの排ガス規制を受けて、開発方向も電気や水素やハイブリッドに向かい、今でも世界市場での競争に耐える位置をキープしています。

 ところがITやデータの産業では、官民ともに規制緩和でプライバシー、個人データ保護の国際的潮流から外れてきたわけですよね。有事の際にもこの通り、踏み込みが浅いですよね。

板倉 EUは課徴金をふんだくるという力技でAppleやGoogleと交渉するわけです。日本はパッシング(Passing=素通り)されないようにする必要があります。当面は、令和2年個人情報保護法改正でも導入されなかった課徴金で脅すという方法は採用しないでしょうから、市場として魅力があって無視できないという形を作っていく方向でしょう。

 OSは取られてしまっていますがアプリレベルで頑張るというのはあるでしょうし、組み込み分野でAppleやGoogleと組むところがあって日本は無視できない、というやり方もあります。いずれにせよ、頑張らないと、「日本のいうことは聞かなくていいや」となってしまうと、本当にやられるがままというか、ただ受け入れるだけになります。知恵を出してAppleやGoogleと交渉できるようにするという発想は必要だと思います。

山本 交渉できるようにするためには何を用意しないといけないかは大事だと思います。日本政府が、こういう話だからと聞いてくれ、と野良で言ってもちゃんと聞いてくれない。日本が強い産業分野の中で、例えばトヨタや他の通信事業者が交渉すればある程度話を聞いてくれる。

 そういう交渉ルートの多様化を用意しないと、オールジャパンでAppleやGoogleに良い感じでやってくれと相談してもなかなか難しいのかなと最近強く感じます。向こうも公共的な役割を持ちつつも商売ですし、AppleやGoogleが自身の考えでやるに当たって、都合の悪い事例では日本の裁判所にそもそも来てくれない人たちになってしまったらつらいですよね。

板倉 最大の交渉力は市場が頑張ることだと思いますよね。カネが回っているから相手しなければ、ということはありますからね。

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