ワンストップで利用可能なAzure上のVMware環境「Azure VMware Solution」が正式リリース:Microsoft Azure最新機能フォローアップ(123)
Microsoftは2020年9月22日(米国時間)、既存のVMware環境とのシームレスな統合を可能にするMicrosoft Azure上のVMware環境、「Azure VMware Solution」の一般提供を発表しました。
Azure VMware Solution(AVS)とは?
Microsoftは2020年9月22〜24日(米国時間)に開催したバーチャルイベント「Ignite 2020」で、2020年年5月からプレビュー提供していた「Azure VMware Solution(AVS)」の一般提供を発表しました。9月末時点ではプレビュー提供されていた米国、オーストラリア、欧州の一部のリージョンでのみ利用可能なサービスですが、今後、日本を含むその他のリージョンに拡大されていくでしょう。利用可能なリージョンは、Azureの価格ページで確認できます。
- Bring innovation anywhere with Azure’s multi-cloud, multi-edge hybrid capabilities[英語](Microsoft Azure)
- New Azure VMware Solution is now in preview[英語](Microsoft Azure)
- Azure VMware Solution(Microsoft Azure)
- Azure VMware Solutionの価格(Microsoft Azure)(画面1)
AVSは本連載第108回で紹介したように、以前からプレビュー提供されてきた「Azure VMware Solution by CloudSimple」を置き換えるもので、MicrosoftとVMwareのパートナーシップに基づいてワンストップで提供されるサービスです。
- 新生「Azure VMware Solution」のプレビューが開始(本連載 第108回)
AVSは、Azureのインフラストラクチャと「VMware Cloud Foundation(VCF)」テクノロジーで構築されたクラウド上のVMware環境です。VMwareによって認定され、Microsoftがサポート窓口となり、MicrosoftとVMwareの両社のエンジニアが共同で問題解決に向けて対応します。
VCFは「VMware vSphere(ESXiおよびvCenter)」「VMware vSAN」「VMware NSX-T」「VMware HCX」といったコンポーネントで構成され、AVSはこれらのコンポーネントが定義済みのプライベートクラウド環境を数時間で利用可能にします。VMware HCXにより、オンプレミスの既存のVMware環境を、IPアドレスを維持したままシームレスに統合し、ダウンタイムなしで仮想マシンを双方向に移動(vMotion)可能です。管理コンソールは、使い慣れた「vSphere Web Client」を利用できます。
Azureの利点、AVSの利点
AVS上で実行するWindows仮想マシンは、Azure IaaS上のWindows仮想マシンと同じライセンス特典が適用されます。オンプレミスで所有するOSライセンスをクラウド上のインスタンスに適用できる「Azureハイブリッド利用特典」や、「Windows Server 2008/2008 R2」「SQL Server 2008/2008 R2」向けの「拡張セキュリティ更新プログラム(ESU)」の無料提供です。
AVSは、Azureの各種サービスと容易に連携できるという利点もあります。例えば、「Azure Backup」との組み合わせによる仮想マシンのバックアップと復元、「Azure Security Center」や「Azure Sentinel」を利用した仮想マシンのセキュリティ強化、「Azure Monitor」に統合されたクラウドおよびハイブリッド環境の監視、「Azure ExpressRoute」によるセキュアな閉域接続(オンプレミスの既存のVMware環境への拡張)などです。オンプレミスからクラウドのIaaSやPaaSへの移行を支援する「Azure Migrate」は移行先としてAVSに対応しており、オンプレミスの物理サーバをAVS上の仮想マシンに移行することもできます。
また、Azure IaaSでサポートされるOSには制約がありますが(Windowsの場合は64bit版の「Windows Server 2003」以降)、AVSではVMwareで互換性が確認されているレガシーOSや32bit版OSを実行できます(レガシーOSのサポートが提供されるわけではありません)。
AVSを利用するにはEAが必要
AVSはAzureポータルのMarketplaceからデプロイ(最小3ノードから)できます。デプロイするにはエンタープライズ契約(Enterprise Agreement、EA)を持つAzureサブスクリプションが必要です(画面2)。
最新情報(2020年12月15日追記)
2020年12月1日から、Azure VMware Solutionが東日本リージョンで利用可能になりました。
- Azure VMware Solution now available in UK South and Japan East Azure regions[英語](Microsoft Azure)
筆者紹介
山市 良(やまいち りょう)
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(2020-2021)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows版Docker&Windowsコンテナーテクノロジ入門』(日経BP社)、『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。
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