AzureでWindows 10/Windows Serverの「バージョン20H2」イメージが利用可能に:Microsoft Azure最新機能フォローアップ(125)
2020年10月20日(米国時間)、MicrosoftはWindows 10の最新バージョン「Windows 10 バージョン20H2(October 2020 Update)」を正式にリリースしました。半期チャネル(SAC)のWindows Serverでも同日、「Windows Server, version 20H2」がリリースされています。Azureでもこれら最新OSへの対応が始まりました。
Azure Marketplaceでのバージョン20H2対応状況
Azure Marketplaceでは「Windows 10 バージョン20H2(October 2020 Update)」が正式にリリースされた翌日、「Microsoft Windows 10」イメージで「バージョン20H2」オプションが利用可能になりました。
このイメージは、ボリュームライセンス契約下でのデプロイが許諾されるもので、Azure仮想マシンにデプロイしたり、「Windows Virtual Desktop」用のカスタムイメージを構築したりするのに利用できます(画面1)。
「Visual Studioサブスクリプション」(旧称、MSDNサブスクリプション)向けの「Windows Client」オプションの一つである「Windows 10 Enterprise N(x64)」については、2020年10月時点では「バージョン2004」ベースのイメージでした。
半期チャネル(SAC)のWindows Serverは、Azure Marketplaceでは「Windows Server」のオプションの一つとしてコンテナホスト向けに定義済みイメージが提供されています。こちらもリリースの翌日には「[smalldisk]Windows Server, version 20H2 with Containers」が利用可能になっています(画面2)。
このWindows Server, version 20H2ベースのイメージには「Docker Enterprise 3.1(Engine 19.03.12)」が定義済みであり、最新のベースOSイメージのWindowsコンテナを「プロセス分離モード」で、以前のバージョンのベースOSイメージを「Hyper-V分離モード(Hyper-Vコンテナ)」で実行できます。また、最初からWindows Server CoreとNano Serverの最新のベースOSイメージ(OSビルド19402.572)が取得済みとなっています(画面3)。
- Docker Hub|Nano Server[英語](Docker)
- Docker Hub|Windows Server Core[英語](Docker)
画面3 「[smalldisk]Windows Server, version 20H2 with Containers」からデプロイしたWindowsコンテナ用のコンテナホスト環境。バージョン20H2を示すタグは「2009」であることに注意
Server CoreベースのWindows Server, version 20H2は、OSのバージョン情報として「20H2」を提供しません。「Get-ComputerInfo」コマンドレットで取得できるのは、WindowsVersionの値「2009」です。毎月の品質更新プログラムの名称は「20H2」と「2009」のいずれかで提供されます。
また、WindowsコンテナのベースOSイメージが説明されているDocker Hubのページには、SACの最新バージョンを示すタグが「20H2」であるように記述されていますが(例、docker pull mcr.microsoft.com/windows/nanoserver:20H2)、筆者が確認した時点ではこのタグは使用できず、タグ「2009」で指定する必要がありました。将来、タグ「20H2」が追加される可能性はありますが、これらのベースOSイメージから構築した他の公式イメージ(インターネットインフォメーシンサービス《IIS》や.NET Coreなど)を使用する際も、最新バージョンを示すタグ名に注意してください。
Azureのコンテナ関連サービスは未対応
Azureには、Windowsコンテナのデプロイをサポートするサービスとして(一部、プレビューサポートあり)、「Azure App Service(Web App for Containers)」「Azure Container Instances(ACI)」「Azure Kubernetes Service(AKS)」があります。各サービスがサポートするWindowsコンテナのベースOSイメージについては、以下の公式ドキュメントで説明されています。
- Configure a custom container for Azure App Service|Supported parent images[英語](Microsoft Docs)
- Frequently asked questions about Azure Container Instances|What Windows base OS images are supported?[英語](Microsoft Docs)
- Frequently asked questions for Windows Server node pools in AKS|Which Windows operating systems are supported?[英語](Microsoft Docs)
ACIとAKSは、「Windows Server 2019」ベースのコンテナホスト上に構築されており、ACIはLTSC(長期サービスチャネル)バージョンのWindows Server Core(ltsc2016、ltsc2019タグ)とSACバージョン1809のNano ServerのベースOSイメージをサポートしています。AKSはプロセス分離モードのみをサポートしているため、ltsc2019およびSACバージョン1809のみをサポートしています。
Azure App Serviceは、2020年9月末にWindowsコンテナの正式サポートが発表され、10月になって対応リージョン(東日本を含む)も増えました。このサービスはLTSCバージョンのWindows Server Core(ltsc2016、ltsc2019タグ)と、SACバージョン1809以降(1809〜2004タグ)を広範囲にサポートしていますが、10月末現時点ではバージョン20H2(2009タグ)のデプロイには対応しておらず、デプロイはエラーになります(画面4)。
画面4 Azure App Serviceにバージョン2004のNano Serverベースのアプリをデプロイすることはできるが(画面左)、現状、バージョン20H2(2009)ベースのアプリのデプロイはエラーになる(画面右)
SACのWindows Serverは、現状、インフラストラクチャ向けのサーバOSという用途ではなく、コンテナのベースOSイメージとしての利用が主体になっていると思います。最新のWindowsコンテナに対応するには、最新のSACバージョンのWindows Serverで構築したコンテナホストが必要になりますが、開発環境は最新の64bit版Windows 10と「Docker Desktop Community」で、運用環境へのデプロイはクラウドを利用できます(ただし、クラウドのサービスが最新のSACバージョンにすぐに対応するわけではないという課題はあります)。
最新情報(2020年11月5日追記)
2020年11月初めに、Visual Studioサブスクリプション向け「Windows Client」の「Windows 10 Enterprise N(x64)」の11月のイメージがWindows 10 バージョン20H2 ベースになりました。11月のイメージ(バージョン2020.11.02)のOSビルドは「19042.572」、Chromium版Microsoft Edgeはバージョン「86.0.622.51」です。
筆者紹介
山市 良(やまいち りょう)
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(2020-2021)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows版Docker&Windowsコンテナーテクノロジ入門』(日経BP社)、『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。
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