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ウクライナのエンジニアが優秀な理由は、○○が早いからGo AbekawaのGo Global!〜Cyril Samovskiy編(後)(3/3 ページ)

IT大国ウクライナでオフショア開発企業を経営し、世界中と取引しているキリルさん。各国を見てきた彼が考える、同国エンジニアの特徴とは。そして、日本のエンジニアへのアドバイスとは――。

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それでも、世界と協働する

キリルさん 2020年はとてもクレージーな年でした。4月5月ごろはどうなることやらと思いました。クライアントも私たちも、多くの取引を失い、期待していたものと全く反対の方向にプロジェクトが進んでしまうことも多くありました。しかしそれでも、クライアントと一緒に、何か全く新しいプロジェクトを、技術の面でも、プロジェクトを推進する面でも、苦労して成し遂げれば、ビジネスはまた新しいレベルになると信じています。

 ラッキーなのではなく、非常に幸運にも、オフショアの仕事は進化していくと思います。そう思えることをうれしく思います。

阿部川 私たちはもうコロナ前の昨日に戻ることはできません。このような状況になるなど、誰も予想していませんでした。歴史が進行している最中に私たちはいて、今まさに新しい時代が作られています。私たちの子供が成長して過ごすことになる未来を、今、私たちがしっかり作らないと。これは私自身毎日自分に言い聞かせています。キリルさんはそれを既に実践しているように思います。

キリルさん これから一緒にやりましょう(笑)。日本の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への対処は大変プロフェッショナルで素晴らしいと思います。特に精神的な面で、日本の方々は、物事を秩序正しく進めていると私の目には映ります。日本を訪れたときのことを思い出すととてもうれしい気持ちになります。皆さん、とても思慮深い方々ばかりで、また慎んだ行動をなさっていました。

阿部川 ありがとうございます。このコロナ禍で、仕事をする上で何か変わったことはありますか。

キリルさん 大きく2つあります。第1は、会社全体をリモートワークに移行したことです。しかし、人と人が一緒にライブで仕事をするところは、差し障りのない範囲で残してあります。第2は、このような状況になったからといって、仕事や考え方を、この会社やこの国の中に限定することなく、可能な限り世界中と共同で仕事を進めるということです。

 自宅で働く人もいれば、オフィスに来て働く人もいます。そのやり方でできるように、仕事そのものを調整し、仕事の成果が下がらないように気を付けています。ビジネスはどんどん複雑になっていきますが、多くの方は当社のビジネスモデルを理解していただいているので、比較的順調に、このコロナシフトに対応してくれていると思います。

 より頻繁にオフィスに顔を出したり、それでも密を避けて会議をしたりなど工夫しています。まだまだ試行錯誤も多いのですが、何をどのようにやっているか、透明性を重視してお知らせするようにしています。パンデミック(感染症の世界的大流行)の状況はいつ収束するかまだ分かりませんが、実験的な試みをたくさん行い、マネジメントの手順をより的確なものに変えていきたいと思います。

阿部川 どの企業も、オンラインとオフラインをどのように混在させて業務を継続するかに頭を悩ませていると思います。ただ今まで通りではダメで、おっしゃる通り必ず変わっていかないといけないですね。

日本のエンジニアたちへ

阿部川 最後に若いエンジニア読者にメッセージをいただけますか。

キリルさん まず、IT業界にいることを誇りに思ってください

 そして、日本のエンジニアの方々、あるいは日本のビジネス全体は、まだまだ国際化、グローバル化が少ないと思います。もちろん既にとてもグローバル化されている企業やエンジニアがいることは十分知っていますが、まだまだ少数だと思います。日本はITにおけるリーダーですし、世界をけん引するパワーがあると思います。ですから、英語のスキルを必ず磨いてください

 エンジニアとしてのスキルがあり、その上英語でコミュニケーションができるとなれば、世界は確実に広がります。日本国内だけではなく、世界の多くのイベントや技術に触れることができます。世界には多くの素晴らしいエンジニアがいます。米国やイスラエル、ヨーロッパ諸国などのエンジニアと一緒に仕事ができるのです。言葉を学ぶことは簡単ではありませんが、ぜひ英語を学んでください。

 それと、新しいものに対して、常に大きく目を開いて見るようにしてください。若い方は特に、世界で起こっているさまざまなことに興味を持ってほしいと思います。テクノロジーの動向に関しては必ず何かが毎日起こっています。私たちも、世界中のエンジニアの、中心的コミュニティーになりたいと思っています。

阿部川 ありがとうございます。


think!

インタビューを終えて 〜Go’s thinking aloud〜

 とにかくたくさん話す。考えていることを、早く、そして余すところなく伝えたい、という思いがその語りに現れる。優秀なオフショア企業がひしめくウクライナにあって、この熱意ある、そして疲れを知らないコミュニケーション能力こそが、Mobilunityの差別化の際たるものだろう。

 優秀なエンジニアの秘密は、早い時期でのコンピュータ教育と、実践での切磋琢磨(せっさたくま)というのもうなずけた。そのようなエンジニアたちが、首都のキエフをはじめ、東部のハリコフやドニプロ、西部のリビウ、南部のオデッサなどにおよび、みながグローバル市場へとなだれていく。競争にさらされて、そしてますます優秀になる。彼らにごしていく最短の方法は、技術そのものよりも、やはりまずは英語を学ぶことだろうと痛感した。

阿部川久広(Hisahiro Go Abekawa)

アイティメディア 事業開発局 グローバルビジネス戦略室、情報経営イノベーション専門職大学(iU)教授、インタビュアー、作家、翻訳家

コンサルタントを経て、アップル、ディズニーなどでマーケティングの要職を歴任。大学在学時より通訳、翻訳も行い、CNNニュースキャスターを2年間務めた。現在情報経営イノベーション専門職大学教授も兼務。神戸大学経営学部非常勤講師、立教大学大学院MBAコース非常勤講師、フェローアカデミー翻訳学校講師。英語やコミュニケーション、プレゼンテーションのトレーナーとして講座、講演を行うほか、作家、翻訳家としても活躍中。

編集部から

「Go Global!」では、GO阿部川と対談してくださるエンジニアを募集しています。国境を越えて活躍するエンジニア(35歳ぐらいまで)、グローバル企業のCEOやCTOなどがいらっしゃいましたら、ぜひご一報ください。取材の確約はいたしかねますが、インタビュー候補として検討させていただきます。※取材は基本オンライン、英語/日本語対応可

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