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「現状維持は衰退」――新規サービスの創出に挑戦するカゴメがDXで学んだこと最も大切なのは「自分たちがどう変われるか」

2021年5月11日、12日に開催された「AWS Summit Online」でクラウド移行や新規サービスの創出を目指すカゴメがDXの取り組みで学んだことを語った。

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 カゴメといえば「トマトケチャップ」「トマトジュース」のイメージを抱く方が多いだろう。だが同社は今、トマトだけではなく「野菜」の会社に生まれ変わり、健康寿命の延伸に貢献する使命に取り組んでいる。

 その過程で不可欠だと捉えているのが、ITを活用したデジタルトランスフォーメーション(DX)だ。100年以上の歴史を持ち、市場でも大きなシェアを持つ同社だが、日本の人口減少で市場自体が縮む中で「現状維持は衰退」と言い切る。

カゴメアクシス 業務改革推進部 DXグループの村田智啓氏は、AWS Summit 2021のセッション「カゴメが進めるデジタルトランスフォーメーション(DX)の軌跡」を通して、危機感を持ってどのようにDXに取り組んでいるのかを、カゴメの専務執行役員、渡辺美衡氏のコメントを随所で紹介しながら説明した。

カゴメDXの推進力はトップと現場の掛け合わせ

 カゴメは2016年からデジタル変革を進め、市場変化適応力を高めるために基幹システムの刷新を進めてきた。オンプレミスのレガシーシステムからクラウドサービスへ移行を図り、1000以上あったアドオンを9割削減するとともに、従業員の働き方改革も進めてきた。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策として出社削減をした際にも、スムーズにテレワークに移行できた素地となったという。

カゴメアクシス 業務改革推進部 DXグループ 村田智啓氏
カゴメアクシス 業務改革推進部 DXグループ 村田智啓氏

 ただ、あくまで業務効率化を中心とした守りのIT、いわゆる「モード1」の取り組みが中心だった。「DXとは、既存の概念にとらわれない新しいビジネスモデルを構築し、事業者自身はもちろん、人々の暮らしをより良いものに変革すること」という定義からすると、攻めのIT、いわゆる「モード2」に着手する必要があると感じていた。

 ちょうど2018年に発表された経済産業省の「DXレポート」も後押しとなり、「これまでのやり方や取り組みを継続するだけでは、会社の売り上げや利益が中長期的に下がることが予想されます。これまでのレガシーシステム刷新の取り組みに手応えを感じていたこともあり、今までの概念に縛られず、新しいものを作り上げていくモード2の必要性を感じました」(村田氏)

 「変わらなくてはいけない」と考える企業は多いだろうが、踏み出そうとするとなかなか勇気がいる。

カゴメ 専務執行役員 渡辺美衡氏
カゴメ 専務執行役員 渡辺美衡氏

 渡辺氏は「カゴメの味を愛し、買ってくれているコアなファンの人たちを大切にする一方で、世の中の動きに追従しなければいけません。つまり、守りのレベルを上げつつ、攻める力も増やすという矛盾を実現していかなければならない。その実現には僕ら自身の働き方を変えていくしかありません。陳腐といわれるかもしれないが、ITの力で生産性を上げていく必要があります。機械にできることは機械にやらせ、もっとクリエイティブなことに時間を利用する、それがカゴメにとってのDXの理想的な捉え方だと考えました」と述べた。

 会社勤めにはよくあることだが、新戦略といってもどうしても既存の路線の延長線上で考えがちだ。そもそも成功するかどうかも分からないDXプロジェクトとなれば、失敗したらどこが責任を取るのか……といったことも頭に浮かび、動きも鈍ってしまう。だがそれをトップダウンで進めることになれば、DXは「やった方がいいもの」から「やらなければいけないもの」になる。カゴメの場合もまさにそうで、企業方針にも明記された。

 ただ、いくらトップが旗を振っても、会社はそれだけでは動かない。動き始めるには、社員たちの「変わりたい」という強い思いも不可欠だったという。

 「どんなに背中を押しても、それを待っている人がいなければ意味がありません。普段から会社の中で『こういうことをやりたいよね』と話をし、変わらなければいけないという思いを持ち、背中を押されるのを待っている人がいてはじめて効力を発揮できます」と渡辺氏は述べた。

 カゴメの場合、トップダウンで「今だ」という空気ができたことに加え、社員たちにも「変わりたい」という強い思いが土壌としてあったからこそ、変革の種が一気に芽吹いたという。この経験を踏まえ「推進を進めるためにはトップダウンと社内の意識を掛け合わせることが重要だ」と村田氏は述べた。

システムの変革だけでは実現できないDX、組織文化や人々の変化も必要

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