データ共有はデジタルビジネスの加速に不可欠:Gartner Insights Pickup(214)
外部とのデータ共有を進めるデータ&アナリティクスのリーダーがもたらす測定可能な経済的利益は、そうでないリーダーの3倍に達する。
ガートナーの米国本社発のオフィシャルサイト「Smarter with Gartner」と、ガートナー アナリストらのブログサイト「Gartner Blog Network」から、@IT編集部が独自の視点で“読むべき記事”をピックアップして翻訳。グローバルのITトレンドを先取りし「今、何が起きているのか、起きようとしているのか」を展望する。
デジタルビジネストランスフォーメーションを加速させるには、データを管理し、洞察を生み出すだけでは不十分だ。これらの取り組みを、測定可能なビジネス成果につなげる必要がある。Gartnerの第6回CDO(最高データ責任者)サーベイ(2020年9〜11月実施)によると、データ共有の拡大を成功させた回答者が率いるデータ&アナリティクス(D&A)のチームは、定量的な価値をD&Aのステークホルダーに1.7倍効果的に提供している。
「データ共有はより関連性の高いデータを最適化し、強力なデータ&アナリティクスによるビジネス課題の解決と企業目標の達成につながる」と、Gartnerのアナリストでシニアディレクターのリディア・ジョーンズ(Lydia Clougherty Jones)氏は説明する。
「データ共有を推進するD&Aリーダーは、そうでないリーダーよりもステークホルダーへのエンゲージメントと影響力が高い」(ジョーンズ氏)
CDOサーベイの回答者は、「データ共有は効果的なステークホルダーエンゲージメントの実現や、企業価値の提供に関するビジネスKPI(重要業績評価指標)だ」と報告している。
また、この調査によると、データ共有の推進やデータサイロの解消は、組織に価値を提供するパフォーマンスの高いD&Aチームが行っている傾向が高いことを示している。
データ共有でビジネス成果が向上
Gartnerは2023年までに、データ共有を推進する企業はほとんどのビジネス価値指標において、そうでない企業を上回ると予想している。だが、その一方で、2022年末までに、信頼できるデータソースを正確に見いだし、信頼できるデータを正確に特定できるデータ共有プログラムは全体の5%に満たないとも予想している。
「データ共有しないやむを得ない理由がない限り、コラボレーティブなデータ共有を積極的に行わなければならない。データを頻繁に共有しなければビジネスに支障が出てしまい、業績にマイナスになるからだ」(ジョーンズ氏)
だが、データアクセスを制限し、データサイロを維持し、データ共有に後ろ向きな企業もいまだに多い。こうしたやり方は、D&Aによって生み出すビジネス価値と社会的価値を最大化しようとする取り組みを阻害する。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大の長期化に伴い、こうしたD&Aの活用がこれまで以上に求められているにもかかわらずだ。
これまでの「○○という条件を満たさなければ、データを共有しない」という考え方は、「○○という条件を満たさなければ、データを共有しなければならない」という考え方に転換する必要がある。データ共有の方法をビジネスに必須なものとして再構築することで、D&Aリーダーは、適切なときに適切なデータにアクセスできるようになり、D&A戦略の強化によってビジネス効果の創出とデジタルトランスフォーメーションの実現を図れる。
現状を変えるのは容易なことではないが、D&Aリーダーは、信頼に基づくメカニズムの確立とデータ共有環境の準備に注力する必要がある。
信頼に基づくメカニズムの確立
データ共有プロセス全体が信頼に支えられていなければ、収集したデータからビジネス価値を生み出すことはできない。Gartnerは2023年末までに、デジタルトラスト(信頼)を築ける企業はそうでない企業より50%多くのエコシステムに参加できると予想している。これは売上機会の拡大につながるという。
信頼に基づくメカニズムを構築することで、データソースへの高い信頼と、データの信頼性への高い信頼を確立すべきだ。これにより、社内外でビジネス目標に沿った適切なデータ活用が可能になる。
ビジネスコンテキストとビジネス要件に合わせて収集、利用、共有するデータの品質を信頼できることが重要だ。また企業は、データの利用と再利用、共有、再共有に関する法的強制力のある適切な権利を信頼できる(とともに、他者に譲渡できる)ように、データソースを信頼できなければならない。
データを安全に収集し、金銭的または非金銭的価値がある資産を効率的に移転、共有する為に、ブロックチェーンスマートコントラクト(契約)のようなデジタルトラスト技術を導入する。
データ品質指標と拡張データカタログを用いてデータをまとめ、ソースの信頼性を判断するために評価を行う。2021年までに、社内外で準備されたデータを整理したカタログにユーザーがアクセスできるようにしている企業は、そうでない企業に比べて、アナリティクス投資から得られるビジネス価値がさらに100%向上すると予想される。
データ共有のための環境整備
データ共有を促進するITと人の両方の文化を確立するには、各ビジネス部門のビジネスリーダーと協力し、データ共有のマインドセットを打ち出す。データ共有の目的が違っていても、あるいは相反していても、コラボレーションを促進し、データ“オーナーシップ”文化については、データ共有を妨げる感情的な影響や固有のバイアスを特定し、距離を置く。
IT部門内ではデータ管理戦略をデータウェアハウス、データレイク、データハブに分けて考える。さらに、不確実で変化する環境に適応する新しい柔軟なデータ管理プラクティスを構築する。
データ共有の拡大が最もビジネス成果につながるユースケースに、優先的に取り組むことも重要だ。このビジネス成果としては、より大幅なコスト削減、新しい収益源の創造、非金銭的価値の創造、意思決定の改善によるリスクの軽減などが挙げられる。
出典:Data Sharing Is a Business Necessity to Accelerate Digital Business(Smarter with Gartner)
筆者 Laurence Goasduff
Director, Public Relations
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