バージョンアップにより影響を受けるオブジェクトに関する情報を出力する:SQL Server動的管理ビューレファレンス(37)
「Microsoft SQL Server」が稼働するデータベースシステムを運用する管理者に向け、「動的管理ビュー」の活用を軸にしたトラブル対策のためのノウハウを紹介していきます。今回は、バージョンアップにより影響を受けるオブジェクトに関する情報の出力について解説します。
本連載では、「Microsoft SQL Server(以下、SQL Server)」で使用可能な動的管理ビューについて、動作概要や出力内容などを紹介していきます。今回は動的管理ビュー「sys.dm_db_objects_impacted_on_version_change」における、バージョンアップにより影響を受けるオブジェクトに関する情報の出力について解説します。対応バージョンは「Azure SQL Database」です。
概要
オンプレミスのSQL Serverと同じく、Azure SQL Databaseも新しいバージョンがリリースされ、バージョンアップが必要になります。「geometry」型や「geography」型である空間データ型は、Azure SQL Databaseのバージョンアップによる影響を受けるため、バージョンアップの際にインデックスの再構築や制約の再検証が必要となります。「sys.dm_db_objects_impacted_on_version_change」を実行すると、バージョンアップにより影響を受けるオブジェクトの情報を出力します。
出力内容
列名 | データ型 | 説明 |
---|---|---|
class | int | 影響を受けるオブジェクトのクラス。次のいずれかになる 1=制約 7=インデックスやヒープ |
class_desc | nvarchar(60) | クラスの説明。次のいずれかになる OBJECT_OR_COLUMN INDEX |
major_id | int | 制約の場合は制約のオブジェクトID、インデックスやヒープの場合は対象テーブルのオブジェクトID |
minor_id | int | 制約の場合はNULL、インデックスやヒープの場合はインデックスID |
dependency | nvarchar(60) | 制約またはインデックスが影響を受ける原因となっている依存関係の説明 |
動作例
「sys.dm_db_objects_impacted_on_version_change」はデータベースを対象に調査するため、コンテキストを「master」で実行した場合は「エラー262」と「エラー297」が出力されます(図1)。
コンテキストをユーザーデータベースに変更して「sys.dm_db_objects_impacted_on_version_change」を実行すると、「geometry」型や「geography」型が使用されているインデックスや制約がオブジェクトIDとともに出力されます(図2)。
今回の環境では、1行のクラスタ化インデックスと2行のヒープ、2行の制約が出力されました。ただし制約については1つしか作成しておらず、必ずしも出力件数と一致するわけではないため注意が必要です。
「sys.dm_db_objects_impacted_on_version_change」で出力されたオブジェクトは、「ALTER TABLE」や「ALTER INDEX」によるインデックスの再構築や、「ALTER TABLE WITH CHECK」による制約の再検証を実施することでバージョンアップによる影響を解消させます。
※本Tipsは、「Azure SQL Database(V12)」での動作を想定して解説しています。
筆者紹介
椎名 武史(しいな たけし)
日本ユニシス株式会社所属。Microsoft MVP for Data Platform(2017〜)。入社以来 SQL Serverの評価/設計/構築/教育などに携わりながらも、主にサポート業務に従事。SQL Serverのトラブル対応で社長賞の表彰を受けた経験も持つ。休日は学生時代の仲間と市民駅伝に参加し、銭湯で汗を流してから飲み会へと流れる。
伊東 敏章(いとう としあき)
日本ユニシス株式会社所属。入社以来SQL Server一筋で評価/設計/構築/教育などに携わりながらも、主にサポート業務に従事。社内のプログラミングコンテストで4回の優勝経験も持つ。趣味は輪行で週末は自転車を持っての旅行。目標は色々な日本百選を制覇すること。
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