「COBOL、PL/Iの技術者がいない」 トヨタ系が基幹システムのレガシー継承に乗り出す:次世代人材が生成AIツールを活用
トヨタシステムズは、日本IBMの支援を受け、生成AIツール「TG4X」を活用して次世代人材が基幹システム開発に取り組む「レガシーコードラボ」を設立した。
トヨタグループのシステムインテグレーターであるトヨタシステムズは2025年11月27日、日本アイ・ビー・エム(日本IBM)の支援の下、次世代人材が生成AI(人工知能)ツールを活用して基幹システム開発に取り組む「レガシーコードラボ」を2025年10月に設立したと発表した。
既存の基幹システムを中長期的に活用し続けるため、「COBOL」や「PL/I」といった言語の開発力維持とスキル継承を狙う。ラボは2025年10月からバーチャル組織として活動を開始しており、2026年中をめどに物理的な開発センターとしての拠点を設立することも検討している。
実証実験を経て本格始動、COBOLでの開発を継続
企業の既存基幹システムでは、レガシー言語に精通した有識者が高齢化する一方で、次世代人材の育成や確保が課題となっている。トヨタシステムズはこうした状況を背景に、2024年から日本IBMの「IT変革のためのAIソリューション」を活用し、課題解決に取り組んできた。
2024年7月には、アプリケーション開発から運用、モダナイゼーション(近代化)までを対象に、生成AIでコードや仕様書を自動生成する実証実験を実施し、開発効率の向上を確認した上で業務適用を開始している。
この取り組みの中で、トヨタシステムズは生成AIを活用した開発支援ツール「TG4X」(Toyota Systems GenAI for DX)を日本IBMと共に開発した。TG4Xは、レガシー言語の開発経験がない次世代人材でも基幹システム開発を進められるようにすることを狙ったツールで、同社は新たな開発プロセスと合わせて運用している。
「次世代が作成、有識者がレビュー」でスキルを継承
設立されたレガシーコードラボでは、次世代人材がTG4Xを活用して既存基幹システムの開発を主導する体制を構築する。レガシー言語での開発経験がない人材でも、TG4Xを通じてコードや仕様の理解、生成を行い、有識者がレビューやアドバイスを担うことで、開発生産性と品質を従来水準以上に維持しながら、開発力を将来にわたって確保することを目指す。
レガシーコードラボの設立目的と取り組みの特徴として、トヨタシステムズは次の点を挙げている。
- 既存基幹システムの開発力の維持
- レガシー言語の経験がない次世代人材がTG4Xを活用して基幹システム開発を推進し、既存システムを中長期的に継続利用できる体制を整える
- TG4X機能の拡張・精度向上
- 生成AI技術や新たなテクノロジーを積極的に取り入れてTG4Xの機能を進化させ、次世代人材がレガシー言語開発だけでなく先進技術の活用スキルも習得できるようにする
- 有識者の知見やノウハウの伝承
- 基幹システム開発の有識者がアドバイザーとして参画し、社内固有の基幹システム開発の知見・ノウハウや長年の開発経験を次世代人材に継承する
トヨタグループ外にも展開
トヨタシステムズと日本IBMは、レガシーコードラボの成果をトヨタグループ内にとどめず、同様の課題を抱える国内外の企業にも展開していく方針だ。TG4Xについても、今後より多様な言語や開発プロセスに対応させる予定で、幅広い既存システム環境に適用できるよう機能拡張を進める。
レガシーコードラボの繁忙期には、日本IBMの地域DXセンターと連携し、開発需要の変動に応じて柔軟に人員やリソースを確保できる体制を構築する計画だ。これにより、トヨタグループ内外の案件に対して、需要に応じた拡張可能(スケーラブル)な開発サポートを提供できるようにする。
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