フリーランスエンジニアの光と闇:売り上げ700万円、でも手取りは……(2/4 ページ)
世の中にはびこるフリーランス神話。果たして、フリーランスはITエンジニアの理想の働き方たり得るのだろうか――複雑怪奇なIT“業界”を解説する本連載。今回は、フリーランスという言葉の魔力に引き寄せられたエンジニアたちの理想と現実に迫る。
フリーランスは誰でもチャレンジできるのか?
最近、社会的な認知が広がっているフリーランスという働き方に対して、若手のITエンジニアたちの憧れが強まっているように感じます。
われわれが運営するITフリーランス専門案件検索サービス「geechs job」に新規登録するITエンジニアの年齢層は、以前は30代後半〜40代後半がボリュームゾーンでしたが、ここ近年は明らかな若返りを見せています。特に目立つのが「20代/未経験」の方々です。
そのほとんどが、数カ月間のプログラミングスクール受講や独学を経てgeechs jobに登録するのですが、面談でお話を伺って「自分の市場価値を分かっていない/大きく捉えがち」という印象を受けることが多々あります。
面談後すぐに案件を紹介できる(フリーランスとしての活躍がすぐに期待できる)方は、30歳以上のエンジニア82.2%に対し、20代は54.1%と厳しい数字が出ています。
残りの46%は、プログラミングスクールなどで「これさえやっていればITエンジニアとして一人前だ。フリーランスとしての自由とお金も手に入る」といわれたのかもしれません。しかし、そもそも、決められた課題をこなしているだけでは、企業から求められるITエンジニアには決してなれません。自分で仕事をコントロールする必要があるフリーランスであればなおさらです。
独自サービスを作るとまではいかなくても、自分の今までの本業(営業やマーケティング、事務など)の周囲にある非効率な作業を、自身の力で自動化していくような「気概」や「センス」、それを楽しめるような「前向きさ」と「ひたむきさ」も必要です。
企業は、自社で採用できないスキルや経験を持つ高度人材を期待して、フリーランスと契約します。それがなぜ、社会人としても未熟である駆け出しの(もっというと、スタートラインにすら立っていない)フリーランスエンジニアに、高い報酬と責任ある仕事を任せることがあると思うのでしょうか。冷静かつ客観的に考えれば、ビジネス社会でそんなことが起こるわけがないのは分かるはずです。
「場所を選ばない」「自由に時間を使える」「好きなことを仕事にできる」などのフリーランスのメリットばかりをアピールし、自分に都合よく解釈してしまう若者ならではの思慮の浅さにつけこんで、「こっちの水は甘いぞ」とばかりに安易な転職をチラつかせるプログラミングスクールや情報商材屋には、世間の非難が集まるべきです。
geechs jobに意気揚々と登録したものの、コーディネーターから現実を告げられてどんどん表情と身体がしぼんでいく駆け出しエンジニアの様子を見ていると、この業界に身を置く人間として忸怩(じくじ)たる思いを感じます。
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