フリーランスエンジニアの光と闇:売り上げ700万円、でも手取りは……(1/4 ページ)
世の中にはびこるフリーランス神話。果たして、フリーランスはITエンジニアの理想の働き方たり得るのだろうか――複雑怪奇なIT“業界”を解説する本連載。今回は、フリーランスという言葉の魔力に引き寄せられたエンジニアたちの理想と現実に迫る。
はじめまして。成末(なりすえ)と申します。ITフリーランス特化型のエージェントとして20年以上サービス展開をしている「ギークス」で、取締役を務めております。
ギークスは「働き方の新しい当たり前をつくる」を事業ビジョンに掲げ、フリーランスという働き方の啓蒙(けいもう)促進に努め、世の中のフリーランスの変遷をニュートラルに見てきました。
本記事は、20年強の実績で得た実例やデータを基に、フリーランスエンジニアの実態を紹介しつつ、フリーランスは魅力的な働き方といえるのか、検証していきます。
フリーランスエンジニアの歴史
フリーランスとは、案件ごとに契約を結び、仕事を進め、報酬を得る方々のことを指します。働き方の概念として捉えられることもあります。以前は、ライターやカメラマンといった職種のキャリアの一つとして考えられてきました。
近年、インターネットが発達してクラウドサービスが拡充し、PCとインターネットがあればいつでもどこでも働ける時代になり、エンジニアの世界にもフリーランスという働き方が浸透してきました。
さらに、エンジニアを多数抱える企業の一部で、年功序列、終身雇用という固定的な雇用形態ではなく、案件ごとに人員を配置する流動的な雇用形態が好まれるようになり、エンジニアも、正社員に限定せず、フリーランスや派遣といったさまざまな働き方を選択肢に加えるようになりました。
振り返れば、リーマンショックのあおりを受け、各社で正社員エンジニアが流出した2011年ごろが一つのターニングポイントでした。メンバー層の非正規雇用割合が増加した時代背景も相まって、フリーランスという働き方を選択するエンジニアが増え始めました。
同じ業務であっても、これまでの業務委託のような「古い」「固い」イメージから、もっと軽やかな自由度の高い働き方としてのフリーランスのイメージが、ITエンジニアたちに定着していきました。
2014年ごろからは、日本にもスタートアップの第4次ブームが訪れ、IoT、AI、VRなどに特化したベンチャーが数多く生まれています。開発者の数が不足し、ITエンジニアの取り合いが激化したのもこのころです。開発、実装のスピードを緩めないためにフリーランスエンジニアの活用という選択肢を採択する企業が増加したことも、フリーランスの需要を高める原因となりました。
このように、フリーランスという言葉の持つ軽やかさ、またスタートアップブームの影響により、日本のフリーランス市場は急速に盛り上がりを見せてきたのです。
派遣とフリーランスの違い
就労状況を管理され、指揮命令のもと指示を受けながら業務を行う「派遣」に対し、雇用されない働き方である「フリーランス」は、指揮命令を受けず、働く場所や業務の進め方、工数管理や機材調達なども自由に決められます。
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