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すぐ分かる、よく分かる「Windowsの品質更新プログラム入門」〜2021年版〜企業ユーザーに贈るWindows 10への乗り換え案内(108)

2021年後半にリリース予定のWindows 11を含めて、Windowsの毎月の品質更新プログラムについてまとめます。

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「企業ユーザーに贈るWindows 10への乗り換え案内」のインデックス

企業ユーザーに贈るWindows 10への乗り換え案内

2020年7月以降の品質更新プログラムのリリースサイクルとは

 Microsoftはサポート期間中のWindows/Windows Serverに対し、毎月1回以上の「品質更新プログラム(Quality Update)」をリリースします。Windowsと.NET Frameworkの品質更新プログラムは「累積更新プログラム(Cumulative Update)」と呼ばれ、以前の累積更新プログラムの内容に新たなセキュリティ修正とバグ修正を含みます。品質更新プログラムでは、仕様変更や新機能の追加が行われることもあります。

 Microsoftは2020年3月以前まで、サポート対象のWindows/Windows Serverに対し、毎月2回以上(それぞれ「B」「C」「D」リリースと呼ばれていました)リリースしてきましたが、2020年4月からは(COVID-19の影響により)月に1回に縮小し、2020年7月からは現在につながる新しい形で再開しました。

 ただし、再開当時とはサポート対象のWindowsのバージョンが少し変わっています。また、2021年後半には「Windows 10」の次の製品として「Windows 11」の登場が控えていますが、品質更新プログラムについてはWindows 11にも現在の形が適用されることになります。そこで、あらためて品質更新プログラムの種類とリリース時期、提供対象をまとめました。今回は、以下のMicrosoft公式ブログの内容を補うものでもあります。

 なお、最大3年のセキュリティ更新を受けることができる「拡張セキュリティ更新プログラム(ESU)」の対象となっている「Windows 7」「Windows Server 2008」「Windows Server 2008 R2」については今回の説明に含めません。

定例のセキュリティ更新(Bリリース)

 サポート期間中の全てのWindows/Windows Serverバージョンには、毎月1回、米国時間の「第2火曜日」に累積更新プログラムがリリースされます。日本は時差の関係でその翌日(その月が水曜日始まりの場合は第3水曜日、そうでない場合は第2水曜日)に利用可能になります。古くから「Update Tuesday」や「Patch Tuesday」と呼ばれてきたこのタイミングでのリリースは、現在は「Bリリース」(第2という意味での“B”)と呼ばれることが一般的になりました。

 Bリリースは“新たなセキュリティ更新を含む累積更新プログラム”という意味で重要であり、できるだけ速やかにインストールすることが推奨されます。同じタイミングで.NET Frameworkの累積更新プログラム(同様に新たなセキュリティ更新を含む)がリリースされる場合もありますが、.NET Frameworkの方はリリースされない月もあります。

 自動更新が有効になっている場合、Bリリースの累積更新プログラムは自動更新の対象です。また、Bリリースは、「Windows Update」「Windows Server Update Services(WSUS)」「Microsoft Updateカタログ」の全てのチャネルを通じて提供されます。

 当面は現在と同様に、「Windows 8.1」以降と「Windows Server 2012」以降に対してBリリースの累積更新プログラムが提供されます。ただし、Windows 10の各バージョンについては「18カ月」または「30カ月」でサポート期限を迎えることに注意してください。なお、Windows 8.1は「2023年1月10日」に、Windows Server 2012/2012 R2は「2023年10月10日」に、Windows 10は「2025年10月14日」にサポート期限を迎え、その翌月から累積更新プログラムは提供されなくなります。

更新プログラムのプレビュー(Cリリース)

 Bリリースの翌週またはさらに翌週には、「累積更新プログラムのプレビュー」がリリースされます。これは「Cリリース」と呼ばれ、主な内容は、新たなセキュリティ更新を含まない、バグ修正や新機能の追加です。.NET FrameworkについてもCリリースとして累積更新プログラムのプレビューがリリースされることがあります。

 2020年7月以降、Cリリースの対象はWindows 10 バージョン1809以降と、「Windows Server 2019」(バージョン1809)以降になりました。2020年3月以前はサポート対象のWindows/Windows Server全てにCリリース、場合によってはDリリースがリリースされてきましたが、2020年7月以降は対象が絞り込まれました。

 Windows 10のライフサイクルの関係で、以下がCリリースの対象です。なお、Windows 10 バージョン1909向けのCリリースの提供は2021年9月を最後に終了し、10月以降はBリリースの提供のみとなります。

  • Windows 10 バージョン2004〜21H1(SAC)
  • Windows 10 バージョン1909、EnterpriseおよびEducationのみ(SAC)※Cリリースの提供は2021年9月で終了
  • Windows 10 Enterprise LTSC 2019(LTSC)
  • Windows Server 2019(LTSC)
  • Windows Server, version 2004〜20H2(SAC)

 Cリリースは通常、提供対象のバージョンが古い方に対してBリリースの翌週にリリースされ、最新バージョンに対してはその翌週以降(場合によっては翌月の初め)にリリースされます。現在はバージョン1809(またはバージョン1809および1909)に先にリリースし、バージョン2004以降(または1909以降)に遅れてリリースされています。バージョン2004以降が同時なのは、バージョン2004以降はOSのコア部分が共通であり、累積更新プログラムも共通だからです。

 各バージョンのサポート期限については、以下の「Windows 10リリース情報」ページで確認できます。Windows 10のリリース情報としては、B、C、定例外(次に説明)に関係なく、最新の累積更新プログラムが推奨という扱いになっていますが、重要なセキュリティ更新のための定例外でない限り、Bリリースが推奨されます。また、「Windows 10リリース情報」ページからリンクされている各更新プログラムの名称とは異なり、Windows向けのCリリースの日本語名称には「プレビュー」という表現が含まれないことにも注意してください。

 Cリリースは自動配布対象外のオプションの更新プログラムであり、Windows UpdateとMicrosoft Updateカタログで提供されます。WSUSには提供されませんが、WSUSの管理者はMicrosoft UpdateカタログからWSUSにCリリースのパッケージをインポートして提供することが可能です。

 Windows Updateの場合、「Windows Update」(設定アプリ)の「更新プログラムをチェック」をクリックした場合に検出され、ダウンロードとインストールが行われます。なお、「Windows Update for Business」で機能更新プログラム/品質更新プログラムの受信の延期設定がある場合は、「更新プログラムをチェック」をクリックしても検出されることはありません。

 また、Windows 10 バージョン1903以降については、「更新プログラムをチェック」をクリックすることで、Windows向けのCリリースをオプションの更新プログラムが利用可能であることを案内するようになりました。以前のように「更新プログラムをチェック」のクリックでインストールまで進むことはなくなり、「ダウンロードしてインストール」を明示的にクリックしない限り、ダウンロードから先には進みません(画面1)。ただし、「ダウンロードしてインストール」の機能は、.NET FrameworkのCリリース向けには機能しません(「更新プログラムをチェック」でダウンロードとインストールまで進みます)。

画面1
画面1 「更新プログラムのチェック」をクリックしても、Windows 10バージョン1903以降、Windows向けのCリリースについてはダウンロードとインストールが始まることはなくなった

 Cリリースの累積更新プログラムのプレビューは、その更新プログラムで修正される問題に早急に対応したい場合や、翌月のBリリースの内容を事前に評価したい管理者や開発者など、明確な理由がない限りスキップしても問題ありません。

 なお、Windows向けのCリリースは、「Windows Update Agent(WUA)API」を使用するWindows ServerのServer Core向け「Sconfig」ユーティリティーの「6)更新プログラムのダウンロードとインストール」メニュー(画面2)や「Windows Admin Center」の「更新プログラム」(画面3)では検出されないことに注意してください。

画面2
画面2 Sconfigユーティリティーでは、Windows Server向けのCリリースは検出されない
画面3
画面3 Sconfigと同様のWUA APIを使用するWindows Admin Centerもまた、Windows Server向けのCリリースを検出しない

 「Windows Server 2022」については、リリース直後であり、異なる挙動を示す可能性があります。2021年8月のCリリースとみられる更新プログラム「KB5005104(OSビルド20348.202)」がWindows UpdateおよびSconfigユーティリティーで配布されましたが、リリース情報は公開されていません(プレビュー段階の「Azure Stack HCI」バージョン21H2向けのパブリックプレビュー更新プログラムと共通であり、そのリリース情報は公開されています)。

定例外のリリース(Out-of-band)

 BリリースやCリリースで重大な問題があった場合、あるいは緊急のセキュリティ問題を修正するために、「定例外(Out-of-band、帯域外)」で累積更新プログラムがリリースされる場合があります。対象は影響のあるサポート期間中の全てのWindows/Windows Serverバージョンです。

 影響が大きい場合は自動配布の対象になることもありますが、通常は、Microsoft Updateカタログからのダウンロード提供であり、問題の影響を受けている場合にインストールすることが推奨されます(画面4)。Cリリースと同様に、WSUSの管理者はMicrosoft UpdateカタログからWSUSにCリリースのパッケージをインポートして提供することができます。

画面4
画面4 「定例外(Out-of-band)」のリリースについては、問題の影響を受けている場合にのみ、それを早急に解消するためMicrosoft Updateカタログから更新プログラムを入手してインストールする

 定例外のリリースは特定の問題を修正するものですが、ファイルサイズの小さなパッチというわけでは決してありません。定例外のリリースもまた、累積更新プログラムです。Bリリース後に提供された定例外のリリースには、Bリリースの修正内容が全て含まれますし、Cリリース後に提供された定例外のリリースにはCリリースまでの修正内容が全て含まれます。定例外のリリースは、翌月のBリリースに含まれることになることも指摘しておきます。

筆者紹介

山市 良(やまいち りょう)

岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(2020-2021)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows版Docker&Windowsコンテナーテクノロジ入門』(日経BP社)、『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。


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