最新のHDD、故障しやすいのか?:初期故障率と「寿命」が変化
クラウドストレージを提供するBackblazeは、自社データセンターで使用中のHDDについて使用年数別に故障率を調査した。2013年の調査結果と最新の結果を比較した結果、故障パターンがかなり変化していることが分かった。
Backblazeは2021年10月26日(米国時間)、自社データセンターで使用中のHDDについて、故障率がどのように変化してきたのかを発表した。同社はクラウドストレージの他、企業や個人向けのクラウドバックアップサービスを提供している。
2013年時点の調査結果と2021年の調査結果を比較すると、社内のHDDの使用台数が7倍近くに増え、8年分のデータが新たに蓄積され、HDDの使用期間と故障率に関する新しい知見を得たという。
HDDの寿命はバスタブ曲線に従う
機械や装置の故障率を稼働開始から測定していくと、いわゆる「バスタブ曲線」(風呂おけの形をした故障率曲線)に当てはまることが多い。Backblazeはバスタブ曲線の一般的な概念を説明するため、Wikipediaに掲載されている次の図を引用している。
![](https://image.itmedia.co.jp/ait/articles/2111/04/yhata20211104Backblaze_bathtub_590px.png)
ハードウェアの故障率を表したバスタブ曲線(青い実線) 縦軸は故障率、横軸は期間を表す。3つに分けられた期間は、左から「初期故障期」「偶発故障期」「摩耗故障期」と呼ぶ。3つの期間に分かれる理由は、故障の原因が3つ(初期故障:赤い点線、摩耗故障:黄色い点線、ランダムな原因による故障:緑色の実線)あり、その和が実際の故障率になるためだ(出典:Wikipedia、パブリックドメイン画像)
バスタブ曲線は、時間の経過による故障率の変化を示し、故障率が低下する「初期故障期」、故障率がほぼ一定で推移する「偶発故障期」、故障率が上昇する「摩耗故障期」の3つの期間に区分される。
Backblazeが2013年時点でHDDの統計データを用い、この3つの期間区分別に故障率を調べたところ、次のようになった。
HDDの故障率はまさにバスタブ曲線に当てはまっていた。
期間区分 | 故障率 | 使用期間 |
---|---|---|
初期故障期 | 5.1% | 0〜18カ月 |
偶発故障期 | 1.4% | 18カ月〜3年 |
摩耗故障期 | 11.8% | 3〜4年 |
Backblazeにおける2013年のHDD故障率(出典:Backblaze) |
2013年時点には自社データセンターに導入したHDDの寿命も計算している。それによると、寿命が4年以上と予想されるHDDが全体の約80%、6年以上と予想されるHDDが全体の50%だった。
2021時点でHDD障害率はどうなったのか
2013年と2021年のHDDの使用年数別故障率を比較したところ、次の図のようになった。
2013年は4年分、2021年は6年分のデータを調べているため、2021年の方が「長い」バスタブになった。6年分以上のデータもあるが、データポイント(HDDの故障)が少ないため、使っていない。Backblazeは、比較結果を次のようにまとめている。
・バスタブの形が変わった
バスタブの左側(初期故障期)の故障率は、2013年よりも2021年の方が大幅に低い。実のところ、2021年はバスタブの左側がほとんどなく、そもそもバスタブの形になっていない。初期故障率がとても低いという意味だ。これはHDDメーカー各社が品質管理に取り組んだ成果と考えられる。
・摩耗故障期が遅くなった
2021年のデータは2013年よりも、バスタブの右側(摩耗故障期)がより右に移動している。使用年数が3〜4年のHDDの故障率は、2013年の方がはるかに高い。なお2021年時点では、5年以上使用したHDDの故障率が最も高くなっている。
・故障率が最低になる年数は2年
興味深いことに、2013年も2021年も、使用年数が2年を超えたころの故障率が非常に低い。だが、故障率が低い期間は、2021年の方が長くなっている。
2021年のHDDの寿命はどうなるのか
2021年は寿命が6年以上と予想されるHDDが全体の88%に上る。この割合は、2013年(50%)から大幅に上昇した。
Backblazeはその要因として、HDDとストレージサーバの品質向上の他、データセンターチームの運用ノウハウの向上を挙げている。
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