ヤングKagglerは、いかにしてグランドマスターになったのか:Kaggle グランドマスター インタビュー(前)(2/3 ページ)
24歳&26歳。世界でわずか230人前後しかいない「Kaggle グランドマスター」の称号を持つ2人の青年は、子どものころからプログラミングに親しんできた……わけではなかった。
Kaggle参加はアルバイトがきっかけ
荒居さんは大学4年生のときにアルバイト先でKaggleに参加する機会を得たという。
「先輩からスタートアップ企業でのアルバイトを紹介され、そのバイト先でKaggleのコンペに参加して技術調査をすることになりました」(荒居さん)
Kaggleのコンペには1人でエントリーする参加者もいれば、データの整形、アルゴリズムの考案、手法の適用など、幾つかの作業を手分けして行うチームでエントリーする参加者もいる。荒居さんはアルバイト先の従業員で組織された5人のチームで臨んだという。
「テーマは、フリマサービス『メルカリ』で、商品出品時の価格のレコメンドを出品する商品の情報から導き出すというものでした。このコンペで銅メダル(上位10%以内)を獲得できました」(荒居さん)
これをきっかけに、荒居さんはKaggleにハマっていく。
「初めて学ぶことばかりでした。仮説を立てて分析手法をいろいろと試し、アルゴリズムを実装していくと、LeaderBord(ランキング表)が入れ替わっていく。そうしたPDCAサイクルを回していくことが、とても刺激的でした」(荒居さん)
荒居さんは、チームのメンバーを誘ってさらなるコンペにチャレンジしたいと考えた。ところが他のメンバーはそれほど面白いと感じなかったのか、荒居さんの誘いには乗ってこなかったという。
「その後、1度個人で参加したのですが、何をどうしていいのか分からず、箸にも棒にもかからないという状況で、しばらくの間Kaggleへの参加を見合わせました」(荒居さん)
しばらくインターバルのあった荒居さんがKaggleへ復帰するきっかけになったのは、やはり機械学習のコンペティションだった。
「大学で単位が付かない寄付講座があり、データ分析に関するものだったので受講しました。その講義内でのコンペに参加したら、3位以内に入れました」(荒居さん)
そこからまた荒居さんのコンペに対する情熱がふつふつとよみがえり、講義で出会った人たちとチームを組み、再びKaggleに参加して銀メダルを取得できた。
「そこから先は称号を目指すようになりました。当時はエキスパートを取得するだけでもいいかなと思っていました」(荒居さん)
2017年当時マスターの称号を持つ人はほんの一握りしかおらず、エキスパートの称号を持つ人も限られていたため、「エキスパートを取得できれば、実力の証明になると思った」という。実際にディー・エヌ・エーやヤフーといった企業が、採用においてKaggleや競技プログラミングなどで実績のある人を優遇していたこともあり、就職活動で有利になると考えたそうだ。ただし、この時点では、就職活動に有利にはなると考えたが「この会社でこれをやりたい」という絵は描けていなかったという。
最終的に学生時代にマスターまで取得して社会人に。入社後にグランドマスターを取得したという。
インターン先のチームでKaggleに初参加
中間さんがKaggleに参加したのは、ある企業のインターンでのことだった。
「3日間という短期間のインターンでしたが、KaggleのHouse Priceという不動産物件の情報から価格を予測するというコンペティションにインターン生同士でチームを組んで参加しました」(中間さん)
機械学習の実践に初めて取り組んだのがこのコンペで、「チームメイトや、Kaggleに参加した先人たちのノートブックなどから学べたことが大きかった」という。
Kaggleにはデータセット(Datasets)やノートブック(Notebooks:KernelやCodeとも呼ばれ、分析モデルを実装したプログラムのコードが含まれる)を公開して他の参加者と共有できる他、他の参加者と議論(Discussion)を交わすこともでき、これも公開&共有できる。コンペで競うだけでなく、こうした他の参加者のデータを参照することで、自身の知見を広げられるのもKaggleに参加するメリットだ。
なお、公開されているデータセットやノートブック、議論は、それぞれ参加者による投票でランキングされ、コンペティションとは別に、これらのカテゴリーでも、それぞれメダルや称号を取得できる。
Kaggleにハマった中間さんは、その後も個人で1年ほど参加し続けたという。その1年間は、どちらかというと他の参加者のコードを読み、学ぶ時期だった。そして学部4年生の2月以降からは、チームでの参加を試みるようになった。
「1人で参加していたころは、銀メダル圏内に入るのが限界でした。そこでTwitterでチームメンバーを探したところ、銀メダル圏内で順位の近い人とチームが組めるようになって――医用画像のコンペティションに3人のチームで臨み、そこで初めて金メダルを取れました」(中間さん)
そこからメダルの取得を重ね、社会人になったときには既にグランドマスターの称号を取得していたという。
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